線画の達人

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2009/6/17 1:05 | 最終変更
絵里 
こんにちは。はじめまして。
私は線画が苦手な絵描きです。それでよく絵描きだといえるなとおこられるかもしれませんが、どうも先に面や色の配置で考える傾向があるらしく、仕事でラフを提出するときも、パステルや水彩で色をつけたラフを作ってしまいます。先方からは鉛筆線画のラフだけでいいですよと言われますが、それが私には大変で、カラーラフの3倍ぐらい時間がかかってしまいますし、本画にはいって色をつけ始めると、また迷ってしまって、最後の最後まで最終のかたちが決まりません。
今さんのコンテを見ていると、その線での表現の巧みさにため息がでて来ます。私が今さんの絵や文章にすごく魅かれるのは、私には欠けている構成力があるからなんですね。
そこで質問なのですが、今さんがカラーのイラストを描かれるときにも、色をつけた時点で、あ〜こんなはずじゃなかったと迷うときはありますか?

余談ですが、私は仕事で修羅場になると、なぜか今さんのパーフェクトブルー戦記を読むんです。一人で仕事をしている私には、どんどん困難の中を突き進む今さんの戦記がとっても良い刺激になって、エネルギーが沸いてくるんですよ!

PS.
今さんは北海道ご出身ですが、何だかノリが関西ですね。
文章の中での"間”や、ひとりでボケツッコミをされているところなど、結構笑わせていただいてます。ちなみに私は大阪出身です。
投票数:1 平均点:0.00
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2009/6/17 14:06
s-kon  管理人 居住地: 東京  投稿数: 100
こんにちは、絵里さん。
畑は違えど同業者の方にはそれだけで親近感があります。

>私は線画が苦手な絵描きです。
>それでよく絵描きだといえるなとおこられるかもしれませんが、
>どうも先に面や色の配置で考える傾向があるらしく

いえいえ、とんでもない。そういうタイプの絵描きもいますよ。
私の大学時代の同級生で、「いしかわこうじ」という現在ではすっかり売れっ子の絵本作家がいます。
http://www.kojiishikawa.com/
彼は、まさしく絵里さんと同じ「面や色の配置で考える」タイプでしたよ。
私が入学した年、武蔵野美術大学・視覚伝達デザイン学科80人のうち、現役で入った男子学生は2人だけで、それが彼と私でした。
不思議なことに、誕生日も同じ10月と近く、血液型も同じA型、家族構成も兄が一人と同じ、聴く音楽もテクノとかニューウェイブ……と、奇妙なほど共通点が多かった。
なのに、描く絵のタイプは正反対。
彼は色の人、私は形の人。
おかげで、いしかわくんには随分と自分にはない絵の視点を学ばせてもらいました。

>そこで質問なのですが、今さんがカラーのイラストを描かれるときにも、
>色をつけた時点で、あ〜こんなはずじゃなかったと迷うときはありますか?

そういう事態は……昔はともかくこの十何年かでは覚えがないですね。
色のセンスやイメージ力があるからというわけではなく、むしろ私は自分の色彩センスなんて信用していません。はっきり言って色の構成は全然上手くない。
だから迷う余地もないんです(笑)
それと絵を考えるプロセスの違いによるものじゃないでしょうか。
私は対象物の構成と形の描写で絵の大半は決まってしまいます。
色は、その構成や描写の秩序を妨げないように考えるので、色面の対比は二次的なものです。
大事なのは構成と描写ですから、線画を描き上げてみたら「思ったほど良くならなかったな(ま、いいや)」とか「ありゃ、こんな風になってしまったか(ま、いいや)」なんてことはたまにあります。

私の絵は基本的に白黒で考えられているんじゃないかと思います。漫画家の魂百まで?
その白黒のトーンをカラーに置き換えている程度の考え方なのかもしれません。
イラスト、特にカラーはコントロールする要素が多くて大変ですが、漫画はせいぜい濃い方からベタ、30%グレー、10%グレーのスクリーントーンくらいしか使わなかったので、いまでも基本的な明度の構成はその程度の考え方です。ただ、そのくらい「簡単にする」ことを身につけておいたのは貴重な財産になっています。
私の場合、複雑なものを簡単にして再現するというより、複雑なものを一旦簡単にしてから再現しやすい複雑さを加えていく感じです。
その方が構成しやすいし、バランスも取りやすい。
「扱えないほど複雑なものにだって当たって砕けろ!」という竹槍特攻精神は嫌です。
トーンもカラーも要はバランスですよね。
パソコンがないとトーンもカラーもバランスをコントロールしにくいので、フォトショップ無しではカラーイラストは描けないでしょうね。

>仕事でラフを提出するときも、パステルや水彩で色をつけたラフを作ってしまいます

とのことですが、私もポスターやジャケットのイラスト仕事などでは本番まがいのラフを作りますよ。
ラフを描かないとイメージを摑みにくいとか、クライアントに親切だからというわけではありません。
単に本番解像度では重すぎてトライアンドエラーが自在に出来ないからです。
だから、ラフの段階で全体のイメージや色は勿論ですが、使用する技法やテクスチャ、レイヤーの重ね方の基本的な構成などを決めておく必要がある。
これって、マシンが速くなれば解決する問題でもないと思うんですよね。速くなった分、もっと手間がかかることを考えるだろうし、結局イタチごっこになるので。
でも、そろそろマシンを新調しようかな。あ、物欲の台頭が。

>一人で仕事をしている私には、どんどん困難の中を突き進む今さんの戦記が
>とっても良い刺激になって、エネルギーが沸いてくるんですよ!

ありがとうございます。
オレも読み返してみようかな(笑)

>今さんは北海道ご出身ですが、何だかノリが関西ですね。

そうですか? そうですかね? そりゃ意外やな。
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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2009/6/18 1:56
絵里 
丁寧なお返事有難うございました。

”複雑なものを簡単にして再現するというより、複雑なものを一旦簡単にしてから再現しやすい複雑さを加えていく感じです。” というお言葉に、私に今必要なのはまさにそれなのだ!と目から鱗が落ちた気分です。今さんは、抽象的な観念の言語化が大変上手でいらっしゃるので、今まで私の胸の中にあってもはっきりとは頭で理解できていなかったもやもやが、すっきりしました!

私は主に動物(虎、龍、猛禽類など)をリアルに描いていますが、対象物の複雑さに翻弄されて、迷路に入り込んでしまっていたのかもしれません。

ありがとうございました!!

PS
今さんのお返事の最後の部分の落とし方が、やっぱり関西です!
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