■PiFan'97・映画祭のキムチ その2

●3日目-8/31●

 この日の私は特にスケジュールは無し。ただ原作者・竹内氏が日本から来て合流することになっていた。が、来ないのである、待てど暮らせど。事務局の人間が空港に迎えに行ったらしいのだが、ピックアップ出来なかったという。
 後で判った話だが、意外にも竹内氏海外は初めてで、しかも飛行機が大の苦手とか。怖い飛行機に2時間も乗った上に、見も知らぬ外国で言葉も通じず放った らかしにされること1時間、胸中察するに余りある物がある。まあ、氏のことであるからして良いネタになったことかと思う。ホントは結構テンぱってたらしい が。

 それにしても映画祭事務局の仕切りは穴が多い。これは日を追って顕著になっていく。一生懸命なのは分かるがよその国からゲストを呼ぶからには、も う少し慎重な対応をお願いしたいものだ。それも竹内氏の行方に気を揉む我々に、事務局の人間曰く「竹内氏のことは何とかこちらで見つけるのでとりあえずあ なた達は昼食を取ってきて下さい。」これには、さすがに同行したプロデューサー「昼飯とゲストとどっちが大事なんだ!?」
 そりゃああ、そうだ。昼飯だよな、やっぱり。ああ、旨い、石焼きビビンバ。

puchon

 映画祭が行われたプチョン市。道幅が広い上に、電線がないので空が大変広く感じられるのが気持ちよい。画一的なデザインの団地が建ち並ぶ町並みは昔見た未来都市を思わせる。

 仕切りの悪いことがもう一つ。記者会見である。なぁーんにも聞いてなかったのだが、今日あるというのだ。「エー!?」
 仕方がないので会見場へ。ところが会見のことを記者たちも知らなかったらしいのだ。がらぁんとした会場に2〜3人の記者たち。会見のスケジュールが伝 わってなかったのか、人気がないだけなのか、寒い気持ちで質疑応答。またもや気分はめっちゃパーフェクトブルー。(言い訳めくが再度行われた記者会見-私 はいなかったが-は盛況だったそうな。チェッ、いいな。)

 さて何とか無事に竹内氏と合流。ソウルへと向かい、丸山氏ご推薦の山菜料理の店“山村”(サンチョン)で夕食となる。氏曰く、「飯はともかく伝統 舞踊の出し物があったりして、韓国風情を楽しめる店」であるという。が、なかなかどうして山菜料理も美味しく、踊りも目に楽しい。踊り手さんのご指名で私 も舞台に出て踊らされ、なんとも満喫させていただきました。
 ソンドビーチホテルに戻って爆睡。いいのか毎日こんなんで。          いい。

●4日目-9/01●
seoulmyondon

東京の一角かと錯覚するようなソウル市内

 丸山氏の計らいで、ソンドビーチホテルを引き払い、ソウル市内のWESTIN CHOSUNに移る。やっぱりソウルだよな。ホテルじゃちゃんと日本語も通じるし。この日は同行したレックス・石原氏と市内を歩き回る。まずはホテル内の韓国料理の店で、プルコギ(韓国風のすき焼き)を食べながら計画を練る。
 景福宮へと向かい、仁寺洞の骨董街で土産物をゲット。ソウル市内の大きな通りには横断歩道がなく、渡るには地下道を使う。それですら車の渋滞がひどいら しく、タイに次ぐ交通事情の悪さだという。ここにもシムシティか。それはともかく、この階段の上がり下りが結構な運動で、運動不足でチェーンスモーカーで 大酒飲みのアニメ監督にはかなり堪える。体が資本だぞ。

shougun
 民俗資料館の前庭にあった木の彫り物。日本で言うところの道祖神みたいな物か。

 ガイドブックを頼りに明洞のサンゲタンがうまいという店へ。席に付くや否やサンゲタン2つを注文させられる。だっておばちゃんが“サンゲタン!サンゲタン!”としきりに連呼するから頷かざるを得ないってもんだ。ま、いい。他には料理もないし。
 薄く白く濁ったスープがぐつぐつと煮え立つ中に、小さめな鳥が1羽入っている。さてまずはスープだが、薄味過ぎるので好みで塩を入れる。あ、うまい。鳥 の中には餅米だの高麗人参が詰めてあるのだが、高麗人参は何ともまずい。一応全部食べたがスープを楽しむもんだなこれは。
 ビールの本数も増えてきた頃に一人の若者が隣の席に着き、流暢な日本語でサンゲタンを頼む。おお、同胞よ。間違うことなき日本人、しかもナイスガイな関 西人。一人で海外旅行が趣味という。名を西川君という。しかも何と奇遇なことに、サイキッカー(竹内氏がパーソナリティでもある「北野誠のサイキック青年 団」のリスナーを指して言う)。竹内氏が同行してなくて残念この上なし。三人で竹内氏の噂話を肴に酒となり、ビールも進む。そうだ、竹内氏に一発かまして やれ。酔った頭にナイスなアイディアが浮かぶ。韓国での竹内氏の行動を箇条書きにして彼、西川君に渡し、「君は竹内氏の後を付けるストーカーだ。よってこ のメモを元に竹内氏に手紙を出すのだ。」
 ◎飛行場で迎えも来ずに一人きりになったときは不安でしたか?
 ◎映画祭のパーティにはさすがに入れませんでしたが、同行していた女性とはどう  いうご関係ですか?
 ◎持っていたデジタルカメラのデータをいただけませんか?
 ◎山菜料理屋ではあんな髭の人(私のこと)じゃなく、竹内さんの踊りを見たかったです……等々。深慮遠謀。けけけ。彼の名誉のために言っておくが、最初 彼はそんな真似は出来ない、と断ったのだ。なあに人を説得するのが監督の仕事。西川君「いいのかなぁ…」「竹内さんも面白がるって! ここは一つ竹内さん のネタを増やす意味でもやってみるべきだよ。」「けど…」「手紙を出したら竹内さんに会わせてあげるよ。」「ホントっすか!?」「ホントだって!」「でも 葉書出したことないしなぁ…」「なあに痛いのは最初だけ…いや大丈夫だって!」云々。
 三人で盛り上がり、ホテルの地下のアイリッシュパブでワインをあける。生バンドが、アイリッシュトラッドを演奏しており、悪くない。ちなみに私はアイリッシュトラディショナルミュージックは好きな方だ。
 それ乾杯。いいなぁ韓国。と、何やら隣のテーブルに一人で書き物をしていた女性が、トイレにでも行くのか我々の前を通りしな、テーブルの上に小さなメモを置いていった。「おめでとうございます。」ゲ、俺たちにもストーカーが!?
 なあに、何のことはない、我々と話すきっかけが欲しかったのだろう。ワインで乾杯していたから、勝手にお祝い事かと思ったという。彼女、ジニーを含め四 人で酒となる。ソウル市内の銀行に勤めるOLで、オペラ歌手になるのが夢だという。ホントか? まあいい。寂しいのかもな。ん? 寂しい女……寂しい女は 西川君がお気に入りの様子……ここはホテルの地下……ツインの部屋が二つ……寂しい女は独身の西川君がお気に入り……………………行け!西川君!発進!

西川君、発進せず。残念。

●5日目-9/02●

 韓国滞在最後の日。ロッテデパートの免税店を冷やかし、他の場所で俺土産をゲット。俺土産は韓国のお面。結構好き。そして飛行場へ。ビジネスクラ ス用のラウンジでただ酒を喰らい、いい気持ち極まれり。出発ロビーで前日の西川君に再会。竹内氏への「不幸の手紙」の件を確約してもらう。たまには酒飲み 話も実行に移さないとな。けけけ。

 そして日本へ。ああ、さよなら韓国また来て韓国。カムサムニダ。