■魂の玉座■
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著者近影
(撮影/村山元一氏)

恥ずかしいと言う無かれ。写真を載せる気はなかったが、恥のかきついでに出してみた。
実はこの写真
「NOTEBOOK」にも書いた「mc Sister」に取材を受けた折りに撮っていただいたものである。「パーフェクトブルー」のおかげで色々写真も撮ってもらったが、この写真が一番偉そうで結構気に入っている。


前の由来 今 敏。こんさとしと読む。病院など で「こんびん」「こんとし」「いまとし」等と呼ばれることは多かったが、なるべく正しく読んで欲しいものである。表記するときは必ず半角か全角空けてもら いたいと常日頃思っている。「今敏」と書くと格好が悪い上に、名字だけのようにも見えるし、どこの国の人だか分からない。
 「機を見て敏(びん)」であるようにと名付けられたと聞く。女の子に生まれていたら「かなえ」だったという。

 読みにくいがテストで名前を書くのが早くて良いではないか、という慰めを聞かされたことがあるが、別にこの名前をそう嫌った覚えはない。ペンネームを使うのは潔しとしないので、どこでもこの本名で通している。親にもらった大事な名前だ。

 以前とある美術監督に「令 敏」と書かれたことがあるがビジュアルだけで覚えるのはやめて頂きたい。遠目に見りゃ似てるけどさ。
 他にも「METHODS」(パトレイバー2のレイアウト集。角川書店)という本のインタビューで、私の名前が巨大なフォントで「今 畝」となっているが、失礼にも程がある。ウネ? なに人だよ、それ。この間違いをしたやつは謝りもして来なかったので私は許さない。失敬な。
 後日談がある。「MEMORIES OF MEMORIES」というムック本でインタビューを受ける予定がありOKもしていたのだが、のうのうと電話をかけてきたのはその同じ編集者であった。
 「おめぇだな、堂々と人の名前を間違いやがったのは!? ふざけんなよこのボケ!! 基本的な礼儀も知らねぇで何が編集だ、バカ!!」 と、ここぞとばかりに怒りをぶつけて
 「お前が相手じゃまた名前を間違えられるからな、他の人間にしろ!」
 と言ってやったら2度と連絡が来なかった。あの本に私のインタビューがないのはそういうわけだ。

生 の奇跡 1963年、昭和38年の10月12日の天秤座。札幌は天使病院で生まれた、とされている。いや実際そうなのだ、橋の下で生まれたなどということ はない。また兄と似た顔に育ったことや、年を食って鏡の中に父と似た顔を見ることもあるので、よその子と取り違えられたなどという100年前のドラマみた いなこともないようだ。
 同じ病室の方から「マンガみたいな顔」と言われたというから、その頃から将来漫画家になる素質を備えていたということか。失敬な。

 世界統一天秤座同盟発行の教典に従い、生きていく上で「バランス感覚」を身上としている。優柔不断な性格だと本人は思っているのだが、同意してくれる知り合いはまず、いない。失敬な。
 本来優柔不断な性格を意志の力で克服しているのだ。意外と努力家なのさ。いまだに缶ジュースの自動販売機の前に立つとその地金が出ることが多い。
 詳しい事情は知らぬが、母の体の都合で、本来私を生むべきではなかったそうである。医者には止められたそうだが、とりあえず生んでみることにしてくれた ようで、おかげで今の私もあるのだから感謝している。医者に?、いや母に。とは言え、古い写真をひもとくと、妊娠中にスケートをして笑っている母の写真が あるのだが、母は言った。
 「なんも、ダメで元々っていうのもあったから、スケートやってボンボン転んだりしてたんだッハッハッハッハ」

 笑い事か。

の運命 日本人に一番多いとされるA型。細かい絵を描くのはその血のなせる技だと後ろ指を指されるが、大味な絵を描くA型の人も多いので必ずしもそうではあるまい。
 輸血は教えで禁じられていないので、事故の時は迷わず打って下さい。
 宗教はやってませんよ。

族の肖像 妻が、一人だけいます。ネオンテトラ他魚数種も家族の一員。
 元は父、母、兄と私の4人家族。典型的な次男で、どうしたら親に叱られるのかを兄の姿に学んだので、大人の顔色ばかりを窺う子供に育ったという話もあ る。兄は5歳上で学年にして6年離れているので、私が小学校入学の時には兄は中学生となり、一緒に学校に通ったこともなければ、歳の差もあり仲良く遊んだ 記憶も少ない。更に兄は高校一年の一学期で中退して上京したので、一緒に暮らした期間も大変少ないのである。親に言わせれば兄弟共に「中途半端な一人っ 子」だそうだ。それは言えるかもしれない。
 現在兄はスタジオミュージシャンなる仕事をしている。名を「今 剛」。こん つよしと読む。一部では「こんごう」などと勝手に呼ぶ方もいたようですが、正しく読むのが礼儀というもの。ギター弾きです。ご無沙汰ばかりの弟で申し訳ない。

葉 の偏り 北海道弁だべさ。未だにうっかり「手袋をはく」とか言いそうになるったって、それくらいはめんこいもんだ。したって、疲れたからって「こわい、こ わい」とかさすがに言わないしね。東京出てきて方言もすっかり投げてしまったと思ったけど、なんもさ、これでもまだ北海道に帰ればネイティブに話せるんで ないかい。それにしたって方言で文章を書くっていうのはどうもあずましくないね。

体の苦悩 外見的特徴はやはり何と言っても無駄に背が高い。性格的に腰は低い。嘘をつくな。
 大変痩せている。子供の頃はそれが大変なコンプレックスにもなっていたようで、「もやしッ子」「骨川筋右衛門」「竹籤」だのとまで言われる。この食っても飲んでも肥れない体質は致し方のないもの、と諦め、今では若干出てきた腹を愛おしんでいる。
 近眼と軽い乱視で高校生の頃よりメガネを愛用している。今のもので何代目か定かではないが3年に一度くらいはモデルチェンジしているような気もする。酒 に酔って壊した、飲んでどこかに忘れてきた等理由は様々だ、ってどれも酒が原因か。メガネが無くても生活には何ら支障は来さない視力だが、物事のディテー ルまで見えないとかえって落ち着かないのは職業病と言うよりは性格に由来しているようだ。
 顔に髭がついているのは、4年ほど前からだろうか。マンガの連載中人に会うことが極端に少なくなり、月日は窓の外を通り過ぎるだけとなり、曜日に疎くな り更には精神的な揺らぎも手伝い、日々伸びる髭に生物として生きている実感を覚え、放っておいたら髭顔の自分が偉そうに見えて気に入ったので、以後髭有 り。
 おでこが広い。いや、広くなった。最近は後退も止まっているようだが、一時は焦りを覚える。自然の摂理に逆らう気はないので受け入れることにしている。

格 温厚なことこの上ない、筈。