1998年12月21日(月曜日)

98年重大ニュース─上半期─



 さてさて年末だな。何と言っても正しい年末の在り方と言えば「今年を振り返る」という、まっしぐらに後ろ向きな態度であろう。そこで安直なテレビ企画のような真似の一つもしてみることにする。

 不況不況と言われた一年であった。世相に疎い私にも平成大不況の猛威は十分に伝わってきたこの一年。伝わってきたからと言って何か辛い思いをしたわけではないし、私自身は健康状態、精神状態も総じて良好、北へ西へ海外へと忙しい面もあったが概ね平穏な一年であったかと思う。
 歳を取るごとに一年という単位は非常に短く思えてくるが、その間に起こった出来事を思い出すとなると意外と長くも思える。この一年の動きをにわかに思い起こすというのも骨が折れるので、ここは一つニュースサイトの「重大ニュース」でも参考にしてみる。

 まず一月はと言えば。

 「フリントン不倫もみ消し疑惑」
 いまだに弾劾問題などで話題になっているが、手前の失態から目を逸らすのにイラクを爆撃しているようにしか見えないのだがな。どうなんでしょうか。
 ルインスキーとかいう女子であったか、「葉巻」の相手は。女の趣味はあまり関心しないな。
 あまねく世界に民主主義を広めるごとくに、どんな相手にも愛を押しつけると言うことか。ありがたい国アメリカ。「世界の警察」を自称しているが、“ジャイアン”にしか見えなかったりして。

 「石ノ森章太郎死去」
 そうか。なくなったのは今年のことであったか。本人は「萬画家」と自称していたと思うが、世間はやはり「漫画家・石ノ森章太郎死去」と報じたような気がする。
 個人的には「ノ」の字なんかを入れた時点で……あ、いや、ご冥福を祈ります。

 私個人としては「パーフェクトブルー」公開を控えて、イベントやらそれ用のビデオ編集やら、雑誌新聞の取材等々忙しくしていた頃だ。あんまり多くの人に会ったんで熱が出そうだったな。何を喋ったかもとんと覚えていない。
 宣伝ポスター用の青い未麻のイラストを描いたのもこの月か。もう随分前のことに思われるな。
 確かこの頃「実写を撮らないか」という話も来たのだが、結局私の方からフェードアウトした形になった。そりゃあ実写にも興味はあるんだが、アニメを作りたいよ、アニメを。

 二月は、なんだ、これか。

 「長野冬季五輪」
 ほとんど見てないから覚えてない。ベルリン映画祭参加の折りにホテルで見たジャンプの人の金メダルは多少記憶にある程度。
 回を重ねるごとに胡散臭さだけが増大していくオリンピック。五輪は世界の通貨の象徴だな。
 近頃では「誘致請負人」の存在まで取り沙汰されているようだし。成功報酬6億とか。あり得る話だな。
 ちなみに2008年だかに大阪がオリンピックを誘致しようとしているらしいが、あまりに無理矢理な気がするし、日本でばかりやらなくて結構だ。少しはよその国に譲れ。
 大阪はただでさえ金がないと言ってるのだから、やめた方がいいのではないかと思うぞ。金がないからオリンピックで一儲け、のつもりかもしれないがな。

 さて個人的には二月は、ま、これか。
 「パーフェクトブルー後悔!」いや「公開」
 二月も末のことであったか。まぁこのことについては今までにも散々書いたことなので、今更何か言うこともない。見に行ってくれた皆様本当にありがとうございました。
 公開前の「ベルリン映画祭参加」もトピックであったが、これについても「見聞記」で書いたことだし、「ベルリンのビールは美味かった」というところか。

 三月は、そうか、

 「大手銀行に公的資金投入」
 銀行にそうそう潰れてもらっちゃあ困るし、税金を使うのも仕方がないとしても、企業努力が足りなすぎる気がするな。まず手前たちの給料減らせよ、まったく。

 個人的にはこの三月は関西率が高い月であったな。
 パーフェクトブルースタッフの慰安とイベントをかねた大阪・京都ツアーと、大阪公開初日舞台挨拶で二回ほど関西に出向いている。大阪はかなりお気に入り。

 この月に読んだダニエル・キイス「眠り姫」は今年読んだ中でも上位にはいるかな。と言っても今年はあまり本を読んでないけれど。
 今年何を読んだかよく覚えてないが、トリイ・ヘイデンの「幽霊のような子」とか世間的にも話題になった「絶対音感」なんかが印象に残っている感じか。最近読んだ「村木与四郎の映画美術・黒澤映画のデザイン」も大変面白かったな。「世界観」をたやすく口にするのは益々憚られると思う今日この頃。いや実に奥深い。
 そういえば今年は一冊も漫画の本を買わなかったな。借りて読んだのも一冊あったかどうか。しりあがり寿先生の動物漫画は絶品であったが。それにしても掃いて捨てるほど漫画を買っていたことも今は昔。

 四月はやはりこれか。

 「郷ひろみ破局」
 手前の離婚で一儲けというのだから、侮れないぜ「ダディ」。

 この頃は季節のせいか、いつにも増して私の頭はボケボケだったなぁ。
 「ロフトプラスワン」のイベントに出たりとかしたっけか。 

 五月

 「ヒデ自殺」
 若い女子たちがたいそう悲しんでおったな。しかしまぁ、どなたかが書いておられたが「ギタリスト」が死んで、それを悼む言葉が「いい人だったのに」ばかりというのは、ちょっとどうかと思うがな。
 私には「ねこぢる自殺」の方が多少の衝撃であった。「TV.Bros」の連載はちょっとした楽しみだったのに。ご冥福を祈ります。

 「インド、パキスタン核実験」
 ヤダね、まったく。
 先日某テレビ番組で多くの在日外国人をスタジオに招いて討論しているのを見たが、このことがやはり話題に出ていた。拙い日本語ながら懸命に自分の考えを述べる姿は尊敬に値する良い光景であった。
 インドの人が言うことにゃあ、隣国との緊張関係にある以上仕方がないのだ、ということになる。核は反対だがその意見はもっともかと思われる部分も多い。世界のことを考えるより自国の防衛を考えるのは何処も同じ。自分が殺されるかもしれないときに、殺人者の家族の心配をする奴は確かにいないだろうし。
 国内の企業の利益のために環境に有害な物質の規制を怠たり、かつては危険のある血液製剤を野放しにしていた国もあることだし。他人の命より手前の贅沢に血道を上げるのが相場ではないのか。
 生まれてこの方戦争の危機感もなく生活してきた私には、生まれて以来戦争の緊張や、あるいは戦争そのものが身近にある国のことなど想像もつかない。アメリカの核に守ってもらっておきながら、インドとパキスタンの核のことのみをあげつらうのもどうなのかと考えさせられる。まぁとにかく核に反対することはもちろん大事だとは思うが。
 蛇足だがこの番組に出ていたロンパリのオッサンは自由に日本語を使えるというのに、議論の程度はサイテーだったな。知識以前に礼節を学んでもらいたいものだな。

 「タイタニックがもののけ姫の興行記録更新」
 どっちでもいいや、そんなの。
 ただ最近の傾向は「二極分化」が激しいそうな。超売れるものと売れないもの、になってしまい、中ヒットが減っているのだとか。確かにそういう気もする。携帯電話や電子メール等のコミュニケーションツールの大幅な普及により、口コミというもののが大きな役割を果たし、結果みんなが見たり聞いたりしている物が加速度的に売れるのだとか。なるほどいかにも、な分析でもある。
 結局は「みんなと同じ」が好きなのだな。

 「兄弟横綱誕生」
 相撲は観客も減っているらしいし、話題作りに躍起になっている感じだな。謎の整体師だの兄弟に亀裂だの笑わせてくれることは多いが。「洗脳」の二文字が再び忙しくテレビ出演していたのもこの頃か。貴之花と元エッキシじゃぱぁぁんの何とかって人。好きにさせてやりゃあいいのに。洗脳されたからってサリンを作る類じゃないだろうに。洗脳される自由も保証されている国ではないのか。ケケ。
 結局その後どうなったのだろう? 謎の整体師は。貴之花や若之花は活躍しているであろうか。相撲は見ないから分からないな。

 パーフェクトブルーの舞台挨拶ということで札幌に帰省した月だな。長いこと抱えていたトレーディングカードの仕事をした覚えがある。

 六月は何と言っても!

 「W杯サッカー」
 実に盛り上がったんだろうなぁ、世間は。浮かれ過ぎ。
 私は旅先の山梨の旅館でアルゼンチン戦を見た覚えがあるし、日本の試合は全て見たような気がするが、結局全敗か。日本の思い上がりが露わになったのは大笑いであった。
 その後中田のペルージャ移籍とその活躍は見ていて素直に喜ばしい気がするが、もっともこれをしてまたぞろ「世界に通用する日本のサッカー」みたいなことを言い出す機運がでてくるのであろうな。中田が通用しているだけだろうに。すぐに他人の尻馬に乗る連中にはほとほと頭が下がる。
 チケット不足問題というのも笑わせてくれたな。いくら好きだからってサッカー見られないくらいで泣くなよ、まったく。わざわざフランスまで行く人間があんなに大勢いるんだから、不況と言っても恵まれた良い国だな。
 ふと思ったのだが、例えばワールドカップ開催中だったら、アメリカとイギリスはイラクを爆撃することはなかったのだろうか。よしんばそういう事態になったとしても、やはりチケットが不足して、泣き出す人も多いのだろうな。平和じゃねぇか。

 ということで、下半期はまた。

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