1999年1月1日(金曜日)

新春特大号!!その二・大バカ晦日



 ところで。皆さんは如何して年を越されましたでしょうか。
 私はといえば、拙宅に業界仲間をお呼びしまして賑やかに大晦日を過ごし、酒とアニメと書き初めで盛り上がらせてもらいました。
 参加メンバーは、本田“師匠”雄、松原“ピエール”秀典、久保正彦、中山“温泉番長”勝一、松尾 衡夫妻、武井“ジェニー”みかる、そして女房と私の計9人。我が家のキャパとしてはギリギリの収容人員でしょうか。
 年末の飲み会の折りに出されたバカ企画「書き初め」の道具を近所のイトーヨーカ堂でゲットし、飲んでる最中に思いついたら何でも書き初めてみる、といういたっておバカな飲み会となりました。
 夜7時前後に集合、まずはビールで乾杯して宴会はスタート。遅れてきたジェニー嬢が揃ったところで、松尾氏が用意してくれた、

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書・松尾 衡氏

 で乾杯。美味しいですねぇ、やはり、モエ・エ・シャンドン。木箱入りの逸品。口の中にシュワーッと膨らんで泡と消える心地よさがグレート。
 やはり新年を迎えるに当たっては、美味いお酒は欠かせません。“温泉番長”勝一氏が持ってきてくれた「石田屋」は4合瓶で何と1万円もする日本酒。うまい。超うまい。日本酒の王様。馥郁たる香りと滑らかさは絶品。
 温泉番長はもう一本「初亀・純米大吟醸」の一升瓶を持ってきてくれたのですが、これも大変美味しいお酒とは言え「石田屋」の前にはちょっとかすんでしまい、この日は半分ほど残すことにして、後日私と温泉番長で酒盛りをして空けました。十分美味いでやんの。
 ワインも数本用意し、銘柄はもう覚えていませんがチリワインのちょっと高めな赤と、さっぱりめなイタリアの白ワインはなかなか美味しかったですねぇ。
 料理の方も負けてはいません。

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書・筆者

 女房が用意してくれた「豚の角煮」「洋風カツオのたたき」「すいとん」、ピエールのリクエストでジェニーが作ってきてくれたカレー、それと松尾夫人、友里恵さんが作ってきたくれた2種類のケーキ。どれも大変美味しゅうございました。特にケーキは玄人はだしな出来で参加者一同感嘆しきり。どの料理もあっという間に無くなってしまいました。みんな食べ盛りです。あ、ちなみにこの日の参加者は、一人を除いてすべて30代のいい大人です。

 そしてそして何と言ってもこの日のメインディッシュは!!

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書・中山“温泉番長”勝一氏

 そうです。温泉番長が仕込んでくれた焼きプリンです。
 お酒と甘い物も大好きな温泉番長は甘い物好きが高じて、自分でプリンを作ってくれたのです。上の書き初めも温泉番長の手によるものです。なかなか歯ごたえのあるプリンでしたが、味は大変美味しかったです。
 また楽しい宴会にはBGVも必須アイテムです。本田師匠が持参してくれた「アメリカン・ポップ」を見ながらお酒も進みます。いいですねぇ、ロトスコープの動きは。頭で考えても真似の出来る代物ではありませんが、見ているとやはり変に気持ちよいですね。
 ちなみにロトスコープとは、実際の人間に芝居をさせた物をフィルムに撮り、そこからアニメーションを起こす手法です。

 さてここまでにもいくつかおバカな書き初めを紹介してきましたが、酒も回ってくる頃になると、初めは遠慮がちにしていた参加者も次々と思いついたことを書いてくれました。まずは参加者の「1998年にやり残したこと・思い出深かったこと」を紹介させてもらいましょう。

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 いきなり何でしょうか。「裏切り」とはまた穏やかではありませんね。他人を裏切ったのか、はたまた裏切られたのでしょうか。しかしよく見ると「裏切り」に遭ったことがすぐに判明します。よく御覧下さい。文字の後半にかけてのかすれ具合や紙に収まりきらない、何とも詰まった感じがやるせない思いを表しているに違いありません。辛いですね。誰の手による書なのかは伏せておきましょう。
 いいですねぇ「仕事せず」。仕事をさぼってしまったのでしょうか、それとも他の事情によるのでしょうか。業界には様々な事情が入り組んでおりますからなぁ。
 「日焼け」私の妻の手による書ですが、これは憧れを表しているのでしょうか。肌が弱い彼女は日光に当たるとヘタレてしまいます。永遠の夢なのでしょうか。
 出ました、「激やせ」。多くの女性と中年男性の憧れの的、それは「激やせ」。切実ですねぇ。署名は「おれ」となっていますが、筆者のことではありません。温泉番長です。宴会の席上、隣に座った本田“師匠”と、「腹なんか全然出てないッスよ」「一年後には激やせしてる予定」などと言いながら、お互いに文字通りの腹のさぐり合いをする姿は大笑いです。さながら産婦人科の待合室のようです。
 その“温泉番長”勝一氏は現在、本人曰く「100年ダイエット」をしているそうですが、まだその効果の程は現れていないようです。「100年ダイエット」の第一段階は、「まず思い切り飲んで食う」だそうですから、痩せるのはまだまだ先のことのようです。志半ばにして倒れないことを祈ります。
 筆者も最近は下っ腹の威勢がいいようで結構張りがあります。病気でしょうか。
 そう言えば、この“温泉番長”と“師匠”の「腹比べ」も大笑いでしたが、後日吉祥寺の某飲み屋で行われた、ジェニーと本田師匠の「腹筋比べ」も、まさに腹がよじれるほどの見物でした。
 長年の座り仕事により体力の衰えを日々感じる年の我々ですが、そんな話題から「腹筋って何回くらい出来る?」という話題になりました。華奢な体でおよそ体力には縁のなさそうなジェニーと、使ってはいないがアブトレーナーを持ってはいる、という本田師匠が子供のような意地の張り合いになり、挙げ句に飲み屋の長椅子に寝ころんで、実際に「腹筋勝負」を始めてしまいました。他にお客がいなかったとは言え、まったく仕方がない酔っぱらいです。
 一回ごとにカウントして同時に腹筋で起きあがるという勝負でしたが、結果は3回目あたりに既に見えてしまいました。負けです、師匠の。完敗。
 軽い体のメリットを生かし、易々と起きあがるジェニーに対して、5回目を過ぎたあたりから師匠は足は浮き上がる体は震える、9回目を迎えた頃には反動をつけなければ起きあがることもできない上に、体の震えはさらに大きくなり、更には上体を左右に振って起きあがる始末。まるで海辺の変わった生き物を見ているようでした。
 生命への危険に配慮し、10回ほどでこの勝負は中止されましたが、師匠は言い放ちます。「楽勝ッスよ、はぁ、はぁっ…」

 さて次は。ははぁ、これも実感がこもっておりますねぇ。「返せ半年」。噂のジェニーです。いい年をして自ら「ジェニー」を名乗る彼女は、生まれてこの方自転車にも乗れない、という特技に加えて、一昨年の末から「結核菌」に体を蝕まれてしばらくの間入院し、退院後もしばらく仕事を休むことになってしまったそうです。気の毒ですが、本人を見ると妙に笑ってしまいます。いや冗談冗談、本当に回復して良かったです。飲み友達が一人減るかと思い心配してました。
 「気をつけろクラッチ」ワーハハハ、松尾氏です。彼は去年の鈴鹿にF1最終戦を見に行った帰りに、高速道路でクラッチトラブルで車を置いて、高速バスで帰ってくる羽目になったのです。奇遇にもこの時のF1決勝では、ハッキネンとタイトル争いを演じていたシューマッハがスタートのクラッチトラブルで最後尾スタートとなってしまい、レースの見所を台無しにしてしまいました。
 「バッカだな、シューマッハ」と生で見ていた松尾氏は口にしたそうなので、その祟りだったのでしょう。人を呪わ、いや、人を笑わば穴二つ、です。
 これはまた生臭い話ですねぇ、「イラストはいいなぁぎゃらが」。誰あろう筆者の手によるものです。去年はパーフェクトブルー関係のイラストを含めて、随分とイラストの仕事をしました、と言うより一年間イラストで食っていたという感じかもしれません。一枚当たりの単価が良いとは言え、あまり仕事をしなかったので一昨年に比べて収入が……そんな私の台所事情を話しても仕方がありませんね。
 いいですねぇ「金持ち原画せず」。金持ちというのは喧嘩も原画もしないわけですね、やっぱり。名言です。この見事な書自体は、ピエールの手によるものですが、誰のことを言っているのでしょうか。謎にしておきます。

 夜中の12時を回り、とりあえずはみんなで「明けましておめでとう。今年も宜しく」の言葉を交わしますが、かと言って当然何も変わることなく引き続き飲みます。いいあんばいに酔ったところで、さて元旦の初行事です。
 夜中の3時に初詣へとこぞって出かけます。うたた寝をしていた松尾夫人も無理矢理起こして出かけます。切れるほどに寒い中を、歩いて15分ほどのところにある杵築大社という神社に行き、正月くらいは神妙な面持ちで、心ばかりの賽銭を投げ入れ、額に不釣り合いなほどに巨大な願を掛け、そしてそしてお約束のお神籤タァイム!!
 果たして結果やいかに。「吉」。私は素っ気なくもただの「吉」。
 ただし書かれていたことはそう悪いものではなく、今年も一年概ねよろしく過ごすことが出来そうな内容。一方、確か「中吉」を引いておきながら、後日新年早々財布を無くす迂闊な人もいました。迂闊といえばそれはもう「ジェニー」の代名詞に他なりません。
 またキングオブお神籤とも言うべき「大吉」を引いておきながら「願い事、叶わず」などとろくなことが書いてないジョーカーのような大吉を引き当てた人もおりました。

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書・中山“温泉番長”勝一氏

 彼の正直な気持ちはこうして見事に書き初められました。“温泉番長”その人です。
 ところで、この宴会の席上で書かれたすべての書き初めをここに掲載するには、あちらこちらの方面に支障を来す内容のものもあるので、「ネチケット」という検閲の名の下に、精選してお送りしていますが、何故か“温泉番長”勝一氏の作品が多く残ってしまいますね。

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書・中山“温泉番長”勝一氏

 自己主張が強いのでしょうか。「俺」……って。
 実は当ホームページ上でもよく使う言い回しに「さすが俺」「ナイス俺」「やるな俺」などがありますが、これらは元々“温泉番長”勝一氏のオリジナルです。「基本、俺」などとも使います。
 それにしても墨跡も鮮やかに、かつ画面から溢れんばかりに書かれた「俺」の一文字ですが、見るものをそこはかとなく愉快にさせる辺りはまさに氏のお人柄が忍ばれるところでしょうか。
 「マッハ」や、一見「プリン」に見せかけた「プリソ」の書にもお人柄が現れており、特に「マッハ」の言葉に不似合いなほどのひょうきんさは心の内からにじみでるような逸品。しかしそれ以前に「マッハ」という書き初めもどうかと思いますが。
 そういえば“温泉番長”勝一氏の誕生花は「ちょうせん朝顔」だそうで、花言葉は「愛敬」だそうです。見事に当てられてますね。
 ちなみにこの日の参加者の誕生花と花言葉を調べて発表したところ、本人と花言葉にかなりの精度で符合が見られ、一同感心しきり。侮りがたし花言葉!恐るべし花言葉!!
 その花言葉で「愛らしさ」という多くの女子にとっては願ってもない称号をもらって無邪気に喜んでいたのが、他でもないジェニーです。
 近頃聞いた話では自転車には乗れなくても実は特技が「縄抜け」と言い張る彼女は、かなりの変わり者かもしれません。これを読んでいる方がどれほどの数かはともかく、およそ学生時代に友達同士で体を縛り、縄抜けをして遊んだという人はおりますまい。その様子を見かけた教師がギョッとして「すわイジメか!?」という顔をしたというくらいなので、相当な縛り方だったことでしょう。別に本格的なそっちの趣味はないみたいですが。
 では、その彼女の今年の抱負を見てみましょう。

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書・武井“ジェニー”みかる嬢

 ……一体なんでしょう、この字は。
恐らくは「野獣」と書きたかったに相違ないでしょうが、字ィまちごうとるやんけ!!
 いつも迂闊なジェニーはみんなの楽しい人気者です。
 そんな迂闊なジェニーも、実は某アニメ会社の「プロデューサー」の肩書きを持っております。大丈夫なのでしょうか?
 しかし嘆かわしい……嫁入り前の娘が「野獣」とは。「野獣」「縄抜け」「自転車」が彼女のキーワードでしょうか。
 彼女は今年インターネット界に華々しくホームページデビューするという予定らしく、あれやこれやとHPのタイトルに思いを巡らせているようです。

>ジェニーへ どうせこのテキストを苦々しい思いで読んでいるのだろう? HPのこんなタイトルはどうだ。「縄抜けジェニーは野獣がお好き」ケケケ。

 皆さんも是非是非楽しみにしていて下さいね。

 一方誕生花に「おうごんはぎ」、「謙遜」という奥ゆかしい花言葉をもらった“ピエール”松原君は、「ああ女神様」「さくら大戦」などのキャラクターデザインで人気のアニメーターで、その原画の腕も実に素晴らしいというのに、花言葉の通り、態度は控えめなシャイな好男子。その彼の魂の叫びを見てみましょう。

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書・松原“ピエール”秀典氏

 すまん。
 実はピエールも、彼が作監を担当する作品が既に制作に入っており、いわば私とはスタッフを取り合うという間柄になっております。我が家に皆様をお呼びして楽しい時間を過ごしてはいるものの、勢い私の次の作品への協力をお願いする話題が多くなってしまい、非常に申し訳ない状態だったわけです。
 売れっ子としてきっと今年も忙しい彼のことですが、去年は2台もマックを買ったようですし、今年こそこの世界に出てきてくれることでしょう。

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書・松原“ピエール”秀典氏

 誕生花に「ロベリア」、そして「悪意」という花言葉で唯一本人との符合が見られなかった久保君ですが、一体何があったのでしょうか。

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書・久保正彦氏

 どのような事情があったのか分かりませんが、得てしてみんなそんなものかもしれません。みんな自分が可愛いのです。仕事よりもエッチが大事なのです。右脳を手なづけられるほどの強靱な左脳を持った人は少ないのです。

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書・筆者

 そうです。みんな、頭の中は煩悩でいっぱいです。除夜の鐘を聞いたところで一つとして減るものではありません。いや、煩悩は一度溺れてみないと払拭することは出来ないのかもしれません。一度進んでまみれてみましょう。そうして一度使ってみれば、自分に必要な煩悩かそうでないかが明らかになるはずです。いいんです。LD・DVDコンパチ機もダブルデッキも買うんです。AVアンプも買わなければいけませんし、新しいマックも買ってやる!ちくしょうめ。趣味でお金を稼いでいるわけではないのだ、使わねばなら……すいません、急速に煩悩が肥大してしまいました。

 さてさて、ここ何年か年越しの恒例にもなっている深夜のアニメタァイム!
 3年前、パーブル制作当時の年越しでは、無謀にも9時間近くに及ぶ「劇場版ガンダム」3連発でした。正に黒い三連星のジェットストリームアタックもかくやというような破壊力は、朝方には参加者をふらふらにしてしまうほどでした。
 その翌年は「ガンダム」の次ですから当然「イデオン」と言うことになりました。確かこの時は「接触編」は飛ばして、「発動編」しか見なかったと思いますが、それで十分。ちなみに私はイデオンという作品は結構好きな方でした。
 そして去年は「地球へ…」を鑑賞しました。アニメーション業界に携わるプロフェッショナルといっても、所詮はかつてのただのアニメファンに他なりません。ただちょっと違うのは「ここは誰それの原画で……」などとすぐに裏地嬢に話が展開する辺りが、ただのアニメファンとは違う……違わないか。
 この時は恩地日出夫監督のうんざりするような実写ばりの長回しのカットに大受けでした。割れよ、カット。アニメなんだから。
 そしていよいよ今回。もうこれしかないと言っても過言ではない傑作、「銀河鉄道999」。ただし鉄郎がかっこいい方。劇場版ね。
 このビデオも本田師匠が持参してくれました。
 やはり盛り上がりましたねぇ、999。「男には負けると分かっていても戦わねばならないときがある」なんてセリフを平気で言えちゃう大仰な世界観!!
 もう巨大なメーターだらけのメカも強引な演出も、あまりに不似合いなゴダイゴの挿入歌だって何もかも許されてしまうですよ。万感です。万感の思いを込めて汽笛が鳴れば、あなた、それはもう私だって高校生に戻れるですよ。
 「メーテルゥゥゥゥゥ!!」
 ♪さぁ行くんだぁ その顔をぉあぁげてぇ 新しい風にぃ 心をぉ……
 しまった。思いだして書きながら、一人で盛り上がってしまった。

 かくしてその後も下らない冗談とアルコールを消費しながら、朝の8時まで宴会は続き、ようやくお開きとなりました。毎年のこととは言え、全くもって体力を消耗する年越しでありました。
 それでは最後に、やはり絵描きの書き初めらしいところもお見せしてこちらの駄文もお開きにしたいと思います。
 じゃ、また来年。

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書・本田“師匠”雄氏

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