2009年6月15日(月曜日)

健康ですか?(2/2)



いよいよ最後は「健康診断」、まずは「受診状況」。

毎年受けている−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−26.3%
数年に一度くらいは受けている−−−−−−−−−−−−−−−15.3%
過去に受けたことはあるがいまは受けていない−−−−20.2%
今までに受けたことがない−−−−−−−−−−−−−−−−−−38.2%

ではその「費用負担」。

所属・契約している事業所の指示・すすめで受け、
費用も事業所が負担−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−49.2%
所属・契約している事業所の指示・すすめで受け、
費用は一部自己負担−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−10.4%
所属・契約している事業所の指示・すすめで受け、
費用はすべて自己負担−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−9.1%
自身で受け費用もすべて自己負担−−−−−−−−−−−20.8%
その他−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−10.4%

「厚生年金」「雇用保険」などの加入率から考えると、「費用も事業所が負担」が意外と割合が高いのが少々不思議。
回答者の勘違いも多く含まれているのではなかろうか。

病気や怪我によって仕事が出来なくなれば、フリーランスは即「おまんまの食い上げ」となる。
言い古された至言が改めて身にしみて思い起こされる。
「身体が資本」
身一つで世の中を渡るのは身軽で気楽な面もあるが、身体を切り売りして口を糊しているとも言える。
もっとも身軽ではない環境を選ぶと、身体の切り売りはなくとも脳を切り売りすることになるのかもしれない。世に溢れるリトル・ブラザーたちが生き証人である。
ニュースを賑わす不祥事の発覚などにおいて、関係するリトル・ブラザーたちの言動は脳を切り売りしてきたとしか思えないものばかりだ。
たとえば「スタッフランキングリスト」を流出した制作会社の非常識な言い分(迷惑料を払うから会社まで取りに来い、といった)や「ニセ講師」問題で被害者面する某美大とかね。
そのようなリトル・ブラザーを見るにつけ、「人として」身体の健康ももちろん大事だが、私はより脳の健康を重く見たいと思う。
「腹も身のうち」というが「脳も身のうち」である。

若いうちはエネルギーに溢れているので、少々の不健康などものともしないだろうが、若さのバリアが薄くなってくると共に不健康な生活は身体のあちらこちらを蝕んでくる。
加齢に従いあっちこっちに不調が顕在化してくるものだ。
これまで紹介してきた数字、労働時間や収入の具体性を考えると、アニメーション業界での暮らしは一般的にいわれる「健康的な生活」とは縁遠いものといっていいだろう。
無論それは各人の在り方次第だが、少なくとも私なんぞは常識からすると「不健康な生活」と烙印を押されるような生活だ。烙印、けっこう。
私は健康診断はたまにしか受けない。毎年ちゃんと受けた方がいいのかもしれないが、受診する方が身体に悪いのではないかと危惧してもいる。
それに健康診断ってものすごく利権の臭いがするし。
メタボの基準などは特に顕著だが、「標準」とされる範囲はたいへん恣意的に設定されている。「標準」を外れると、そこからの距離によって「要注意」だの「要治療」といった判定がなされるわけだが、その「標準値」をちょいと変更すれば一気に病人を「創出」できる仕組みになっている。
自覚症状がないのにわざわざ病院に行って、なにがしかの病気や病気の傾向を発見されたいと思うものか。
私は常日頃からこう思っている。
「病院に行くから病気にされるのだ」
日々メディアなど色々な形で病気の不安を煽って、人々を健康へと走らせることで肥え太る人たちがたくさんいることだろうさ。

不健康な生活の三本柱とされる「不規則な生活」「飲酒」「喫煙」。
私はいずれも「過度」である。
ヘビースモーカーだし酒は毎日飲んでるし起床も就寝も時間は変動する毎日だ。
しかし、幸運なことにひどく忙しく仕事をこなしてきたこの10年の間でさえ大病はしていない。風邪やインフルエンザで寝込んだことが3、4回だろうか。少々調子が悪いことはたくさんあったが。丈夫な身体を分け与えてくれた両親や先祖に感謝したい。
もちろん「これまで大丈夫だから、これからも大丈夫」などと思っているわけではない。身体は日々死に近づいているんだから。
思うに「健康な生活」とは単に「身体に異常が認められない生活」ではないだろうし、身体の不調に大きく影響するのはストレスではないか。

自分の例でしか考えられないが、監督業になってからの起伏の激しい生活において、それほど不調を来さなかったのは、基本的に「仕事が楽しくて仕方がない」からではなかったかと思う。
勿論、スケジュール、金銭関係、対人関係、そして自分の無能などを原因とした様々なストレスは時に顕著に身体に悪影響を与えるが、仕事自体は楽しいし、自分でも止められないほど脳も身体も仕事を欲している。
「したいときにしたいことをする」
快楽の原則である。快楽は対ストレスの特効薬。
したくてたまらない仕事のために「不規則な生活」をしようが、仕事でものを考えるのに多くの「喫煙」が必要であろうと、それらは望んでしていることだ。仕事仲間との「飲酒」がどれほど楽しいものか。
邪魔されるのは御免である。
おかげで一番の大敵である「ストレス」を遠ざけられているのだから。
医師が薦めるような「規則正しい生活」「控えめな飲酒」「禁煙」なんぞしようものなら、私は多分一年と経たないうちに脳か内臓がクラッシュするに違いない。
「あなたの健康のために……」なんて言葉で始まるお為ごかしを一々聞いていたら健康な身だって病気になるに決まっている。

アニメーションの仕事は、医師の基準からすれば「不健康な生活」を強いられる局面が多い。
医師御推薦の健康に生きるための助言は、「健康な生活を送ることが可能」という枠組みの中で有効なものではないかと思われる。
だから「不健康な生活が基本」という枠組みの中ではまた違った健康維持が考えられるはずだ。
不健康な暮らしの中で、無理に標準的健康生活を実践しようとすれば生活も身体もどこかでその捻れに軋みを増していくだろう。そしてクラッシュ。
強弁するようだが、不健康には不健康で対応することだって「有り」だと私は思っている。平時において殺人は重罪でも、戦争で敵を殺すのは正しいのと同じようなことだ。不自然な環境においては不自然な行いの方が自然であることも多い。

しかし、いずれにせよ不健康な生活を続けるには何といっても健康が必要なのである。
不健康な生活のためには健康を!
アニメーションのために身体を張って日夜働く皆さん、くれぐれもご自愛を。

と、このテキストを書き終えて煙草を一服。
ああ、美味い。
さ、今日も楽しい仕事だ。

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