2007年9月23日(日曜日)

細かい仕事あれこれ



今日は涼しく過ごしやすかったですね。往生際の悪い夏にはとっととお引き取り願いたいものです。
最近は、映画のプロモーション期間でもないのに細かい仕事というか、本業のアニメーション制作以外の用事が多いです。もちろん、アニメーションの仕事にまつわる仕事なので、これもまた本業の一つにカウントするべき事柄なんでしょうけど。
先日もお伝えした、某テレビ番組の一コーナーへの出演、「特典映像」の収録もそうした仕事の一つです。
先月には某大手広告代理店の聞き取り取材、多摩美大の芸術祭スタッフからの取材というのもありました。こちらは芸術祭のパンフレットに使用するということでした。ある映画のコメントを頼まれたりもしました。
今週も某雑誌、某業界紙の取材が入っていたり、およそアニメーションとは無縁に思える雑誌や、私には懐かしき新聞の地方版から取材依頼もあります。来月頭には講演の予定もあります。
こうした本業とは言えない仕事も、たいていは興味本位からついつい引き受けてしまいます。
映画のプロモーション期間であれば、一つ一つの取材やイベント出演などには報酬がありませんが、製作委員会からプロモーション協力費としてまとまった額をいただいているので問題はありません。
右も左も分からなかった『パーフェクトブルー』の頃は、手弁当で取材に協力していたのですが、あまりの数や負担の大きさに「いくらなんでもおかしい」と思い、スポンサーに直訴したらある程度まとまった報酬を出してくれました。
それはそれでありがたかったとは言え、『パーフェクトブルー』を劇場公開したくせにビデオ・LD・DVDなどの二次使用の印税をよこさなかったのですから、基本的にはひどい目に遭ったわけですが。
おかげで学習させてもらったので、いただくものはきちんといただくように注意するようにしてきました。当たり前の話ですけどね。

基本的には報酬の発生しない取材はお断りするのですが、報酬が安かったり無償であっても私が協力したいものは喜んで引き受けます。出るとうちの親が喜ぶようなものも喜んで引き受けます(笑)
これは本業でも同じことで、楽しめそうなもの、私が協力したいものなら引き受けています。
あるいはその媒体に出ること自体、「今 敏」個人の宣伝になるという場合などは無償であっても、それはこちらがわが広告宣伝費を使ったという考え方をするようにしています。
基準はあくまで恣意的ですね。
報酬が良いから仕事を引き受ける、というパターンは今までありませんでしたね、残念ながら。
「おいしい仕事」というものには当たったことがない……いや、随分昔に二度だけあったかな(笑)
まぁ、それも基本は引き受けることにした後でおいしいことが判明した次第です。
仕事を引き受けたら思いの外待遇が良かった、ということなら他にもわずかにありますが、引き受けるかどうかは仕事内容そのもので判断しています。
明らかに予算がなさそうなものは気の毒になって協力することもありますし、担当者が一所懸命だったりする場合なども喜んで引き受けるということもありますが、逆に想定されうる全体の規模から考えて明らかに不当と思われる報酬ならばお断りします。
しかし基本的に、こちらの宣伝目的ではない取材の場合などは、話を聞きに来る方は給料なり報酬を貰っているにもかかわらず、誌面を実際に埋める文章の元を話している方が無償という非対称はどうにも理不尽に感じるというか、納得し難いものはあるのですが。

先日依頼のあったある仕事は、その報酬があまりに不当と思われて即お断りしました。
某大手メディアが主催する映画の競演会、そのある部門の選考委員を依頼したいとのことでした。
元々、公の場で人様の作品にランク付けするような真似に対しては消極的ではありますが(デジスタでキュレータという立場にはあるけど)、そんなことはともかくあまりの報酬の安さに驚きを通り越して呆れてしまいました。
大の大人、それも「その筋である程度の権威があると先方が想定したであろう」人間を、二日間に渡って拘束しておいて○万円(もちろん一桁、半ば)とは一体どういう料簡なんでしょう(笑)
冗談にも程があります。ギャラの安いので有名な国営放送だってもう少し出るでしょうに。
これがもっと規模の小さなものなら全然問題にしないのですが、大手のメディアが長年続けてきたそれなりの知名度と歴史のある、「文化」を表彰するような場において、その選考委員への対価が○万円ということは、つまりは文化に対する見識の程度が透けて見えるような気さえしてきます。
まさか予算がない、なんてことは考えにくいでしょうからね。
仮に私と同じ年代で、依頼してきたメディアの社員だったら結構な額の年収があるでしょう。その日当二日分より安いギャラしか出さないって話はありませんわな。

こういう場面に遭遇する度に感じるのが次のような態度です。
「君たちは好きなことをしているのだから報酬は安くても良いだろう」
金銭だけが目的で仕事をしているわけではありませんが、「クリエイター」とか言われるような人間が霞を食って生きられるわけではありません。
よもや「名誉な仕事」だから安くても引き受けるなんてことを思っているのでしょうか。だとしたら随分と傲慢な態度ですから、当然断ります。
儲かっている人たちだから安くても良いだろうなんて思っているのでしょうか。まさかね。少なくともアニメーション業界の賃金の低さを報じているようなメディアなんですから、事情を知らないわけはありますまい。
あるいは、それだけ安い賃金で働いているんだから二日間で○万円なら十分以上の高給だろうくらいに思われているんでしょうか。
こういう無神経な人たちがご自身のメディアで「格差問題」を声高に煽り立て、アニメーション業界の賃金の安さや空洞化を報じているのですから、呆れるばかりです。
ま、今更言うことでもないでしょうけどね。

ちなみに。
http://ranking1.nobody.jp/salary/tv.html
メディアの人たちはたいそう貰ってますなぁ。

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