2008年3月12日(水曜日)

「十年の土産」十一日目



この日も天気と陽気に恵まれ、平日なのに多くのお客様の来場を賜りました。
期末試験が終わったという高校生の顔には明るさが溢れ、会場に楽しい気分を運んでくれました。
前日、来場者はすでにのべ1000人を優に超えました。嬉しい誤算としかいいようがありません。
リピーターのお客さんが多いことが道楽の主としては何より嬉しい。
監督として描き手として、映画も絵も、「繰り返し楽しめるもの」を目指しているので、リピーターのお客さんが私には何よりの手応えを感じさせてくれます。
中にはこんな嬉しい感想を伝えてくれた人も。
「『パプリカ』は映像を見ているだけで楽しいので、話を追わないまでも、よく映像だけを流しています」
私が『パプリカ』で目指したある種の「アニメらしさ」が伝わった人がいるんですね。
『東京ゴッドファーザーズ』までは、ある意味「全体を見ないと面白さが分からない」ような映画になっていたと思うのですが(実際そういうものを目指していた)、『パプリカ』はこんな風に考えて演出していました。
「部分だけでも楽しめる映画」
願わくは「部分しか楽しめない映画」になっていませんように。

来場者の意外なほどの増加に反比例して痩せ細ってゆくのが物販コーナーです。
これも嬉しい誤算としかいいようがないのですが、目的の商品を手に入れられないお客様にはたいへんなご迷惑をおかけしております。
「目的の商品」どころか、商品そのものがほとんどないという事態で、さながら「羽をむしられた鳥」みたいな格好になっております。。
そんな中、群を抜いて販売数を伸ばしているのが、『プラスマッドハウス今 敏』(キネマ旬報)。
再入荷が難しい商品群の中にあって、この本は何とキネマ旬報の方がわざわざ追加分を何度か運んでくださったので、昨日も80部ほど入荷することが出来ました。
おそらく初日から昨日までで、300部くらいお買い求めいただいたのではないでしょうか。驚き。
お求めいただきやすい値段ということもあるでしょうし、「十年の土産」のパンフレット替わりという性格もあるのかもしれません。すでに売り切れてしまいましたが、『千年女優画報』も並べるとすぐに売れてしまい、この両者には随分サインを入れさせてもらいました。
ものすごく局所的な売れ方です。
初日からわずか数日も経たずに売り切れてしまった『パーフェクトブルー』リニューアル版DVD。
『パーフェクトブルー』は10年前に出されたDVDやレーザーディスク、ビデオ、そして再発された廉価版DVDなどがありますので、ある意味商売としては終わっているタイトルです。
だからリニューアル版DVDの初回プレス分は少ない数ですが、それでもその出荷数全体のおそらく1/25くらいが「十年の土産」物販コーナーで売れてしまったことになるのです。
再入荷が可能だったら、もしかして1/10くらい売れたかもしれません(笑)
スーパー販売員です、私(笑)

そして嬉しい大きな誤算は、「十年の土産」本来の主役である絵が、予想外にお求めいただいていることです。
現在いただいている予約数ならば、この「道楽」による我が家の家計への圧迫は最小限になる可能性も(笑)
つまり、画廊のレンタル料やプリントアウトの費用、額装費などの一番大きな経費はなんとか埋まってくれるのではないか、と。
それに何より、自分の絵を必要としてくれる人がいるというのが何より嬉しい。
初日から最終日まで、ベッタリと会場に詰めている描き手としては、ダイレクトに感じられる喜びです。
絵をお買い求めいただくお客様、本当にありがとうございます。

そして嬉しい誤算の筆頭は、トークイベントです。
18時から配布予定の整理券は、早くからなら張られるお客様が多く、16時半くらいには入場予定数に達してしまい、結局整理券を配布しなくてはならない状態です。
会社勤めの方でも参加可能なように、というつもりで18時からの配布にしたのですが、まことに申し訳ありません。
何より私が意外なのは、今 敏の話を聞きたいという方がおられることそのものなのです。
今 敏は前世が漫画家のアニメーション監督であり、一応イラストレーターとしても機能もする。漫画やアニメーション制作や絵を描いて報酬をいただいておりますので、それら私の仕事の結果はいわば「売り物」です。そこに価値を見出してくれるお客様を想定することは可能なのですが、「喋る」ことに関しては、あくまでオマケみたいなものです。だから、どうしても「喋る」ことを楽しみにされる方が少なからずおられるという事態がうまく呑み込めない(笑)
もちろん、「デジスタ」やアートカレッジ神戸での講義、たまに依頼される講演など、人前で喋ることも仕事の一つなのですが、私としては決して売り物になるようなものだとは思っていません。
私が目指しているのは何度か言ったとおり「描いて喋れる演出家」なのですが、しかしトークイベントを楽しみにされるお客様がそんなにおられるとは、本当に思ってもいなかったのです。
トークイベントを楽しみされておられたのに入場できなかったお客様、本当に申し訳ありません。予想外の反応とはいえ、今回のトークイベントが好評のようなので、今後トークをメインにしたイベントも前向きに考えてみたいと思います。
タイトルだけは考えました。
「「十年の土産」の置き土産」
何ともくどいな(笑)

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