金曜日は蒲田にある日本工学院で「アニ*クリ15」のイベント、土曜日は「デジスタ・アウォード2007」生放送出演と、二日続けてのイベント。
いずれもNHKの仕事である。
これまで出演させてもらったTVは99%がNHKではないか(笑)
監督としての出自が「15R」であったことを考えると、NHKはあまり似つかわしくない気もするが、出演や仕事のお誘いをいただけるのはありがたいことである。
TV出演が好きなわけではないが、普段の仕事では出会わない方々と交流を持てたり、見慣れないものに接することが出来るのが面白い。
それに、特にNHK出演などは北海道にいる親が喜んでくれる(笑)
「アニ*クリ15」のイベントで初めて揃った15本の短編アニメーションを見る。
第1、2シーズンの各5本はDVDですでに見ていたが、第3シーズンの自分以外の作品を見るのは初めて。第3シーズンは時間的に余裕があったせいもあるのだろうが、テンションの高い力作や手間がかかった物が揃っている。
「変形」がお得意の川森正治さんの異様に高いテンションや、1分間に47カットも詰め込んだ前田真宏さんの力業も可笑しい。新海誠さんも1分を上手に使った丁寧な作りである。
私の「オハヨウ」が最も地味で、ある意味面目躍如であろう。
15本すべてを見ると、ちょっとしたネタの偏りが感じられて興味深い。
宇宙人が登場するものが2本、自分の仕事場周りを描いたものが2本、巨大化するものが3本、メカやロボットが登場するのが4本。1分という短い尺で、内容に特に制限がないと業界人には扱いやすいイメージなのかもしれない。
ネタかぶりはあるものの、15本に見る表現は多彩で、この企画に対する作り手の態度や温度差が感じられて面白い。いい企画だったと思う。
だがもっとも気になったのはこんなこと。
「みんな、予算内で作れているのか?」(笑)
この日のイベントに一緒に出演されていた前田真宏さんは私と同じような状況だったらしい。
「自分のギャラはない(笑)」
「だよね(笑)」
真面目に作るとそういうことになってしまうのは明白で、ある意味「罠」のような企画である。とはいえ、前田さんもとても楽しく制作されたようで、私も十分以上に楽しませてもらった。この企画にお誘いいただけて本当に良かった。
イベントは、日本工学院の学生さんが会場を埋めてくれたおかげでたいへん盛況であった。15本すべてを見てもらい、NHK柏木プロデューサーの進行で前田さんと私が、1分という尺に対する解釈やそこに込めた意図、制作裏話などを披露する。
前田さんとは以前2,3度面識があった程度で、あまり存じ上げないのだが、楽しくお話しさせてもらう。根が陽気、というかどこか開放的で風通しのいい方である。私のように「どうも発言の真意に裏があるのではないか」と思われやすい人間にとっては羨ましくもある。
楽しくおしゃべりしているうちに、あっという間に時間が過ぎる。
トークイベント後、数社のメディアによる囲み取材。こんな質問があった。
「もし次にまた1分で作るとしたらどんなものを考えますか?」
はは、そりゃ簡単だ。
「オヤスミ」に決まっている。
昨日は「デジスタ・アウォード2007」の生放送出演のため、正午に有明パナソニック・センターへ。
快晴の日差しが有明へ向かう車を照らし、眠気を誘う。
普段、何とか午前中に起きる程度の時間帯で生活している人間にとっては、なかなかつらい召還である。
キュレーターの控え室に案内されると、すでに何人かのキュレーターの方がおられる。すでに「その状況」に気づいたMAYA MAXXさんが不平を漏らしている。
「ええ!?全館禁煙なのぉ?」
やれやれですな、まったく。
用意された弁当を食べ、メイクをしてもらい、進行についての説明を聞く。さらに今年は生放送ということで番組中、十分に体験するほどの時間がないので、インタラクティブ・インスタレーション部門のファイナルステージ進出の3作品を事前に見たり、リハーサルなどをこなす。
その合間合間を見計らって屋外の喫煙所で一服、二服するわけだが、いつも同じ面子が顔を揃えることになる。
スモーカーのキュレーターは、田中秀幸さん、MAYA MAXXさん、森本晃司さん、森本千絵さん、そして私の5人。
キュレーターは全部で16人だから、約3分の1。出演者ではピエール瀧さんも喫煙所の常連。スタッフの方やアウォード進出の作者の方々も多い。
MAYAさんが通りかかったプロデューサーに不平を投げかける。
「ゲストに呼んでおいてタバコも吸えないってどういうことよ!?」
うん、私もそう思う。
だが、それがご時世である。昔から言うじゃありませんか。
「泣く子と地頭には勝てぬ」
さて16時からいよいよ本番。左隣の席の季里さんとは、しかしこんな会話になる。
季里さん「金子(奈緒)さん、足ほそ〜い」
私「あ、ホントだ。あれは自慢してますね」
季里さん「自慢してもいいですよ、あれなら」
本番前なのに空気がものすごく緩い。
季里さん「生放送なのに、なんか緊張感ありませんよね」
私「まったくまったく(笑)」
私は「アウォード」の出演は今年で4回目。ほとんどのキュレーターの方とはこれまでもご一緒させてもらっており、例年の収録と比べる話題が多くなる。皆さんお忙しい方々ばかりなのだろうが、けっこう毎年恒例のこのアウォードを楽しみにしておられる様子。
去年までは収録にものすごく長い時間がかかり、出演者から溢れる不満はそのことばかりであった。それもあって生放送という企画が生まれたらしい。
例年だと、集合から収録終わりまで10時間以上かかっていた。それが生放送ということは終わりは決まっている。19時には終わるなんて、まったくもって気が楽だ。
そんな気分も手伝ってか、全然緊張感がない。
「後4分で本当に始まるんですよ」
とは右隣の中島信也さんの弁。
本番が始まり、ビデオが流され、ステージの中谷さんやジョージ、金子さんが喋り始めても、この会場の映像が全国に流れているなんて実感はまるでなし。
最初はインタラクティブ・インスタレーション部門の審査。ファイナルステージ進出が決まった3作品を実際に体験しながら作者の解説を聞く。
こちらの部門は専門外ということもあって、出番もなく実に気が楽。
これが例年だと、少しは発言を求められたり、下手をすれば代表して「体験」させられたりするのだが、インタラクティブ・インスタレーション系のキュレーターにお任せして眺めているだけで良い。しかも進行が若干押し気味。審査会も時間が短く発言する余地もない。
サクサク進行する生放送は実に良い。
インタラクティブ・インスタレーション部門のグランプリは「translate」に決定。
続いて映像部門。こちらは専門領域なので、台本上発言の機会がいくつか指定されている。とはいえ、やっぱり気が楽なことに変わりはない。
今年は私の回でベストセレクションとなった2作は惜しくもファイナルステージ進出には至らなかった。どちらも1次審査で高得点を得ていたがわずかに届かなかったようだ。残念。選んだ者としてはやっぱり応援してしまうものである。
だが逆に自分で選んだ作品がファイナルに進まないということは、こちらの出番も少ないということで余計に気が楽になる。
と、暢気にかまえていたら一般の投票で「RUNNINGMAN」が敗者復活。これは私のレギュラーの回で惜しくもベストとはならなかったが、非常に上手なアニメーションで評価していた作品である。
レギュラーのベストセレクションから漏れたものの、中谷日出さんのセレクションとして復活してアウォード進出、そしてファイナルステージ進出には漏れたもののまたしても一般投票で復活、という作品内容に相応しい実にしぶとい粘りを見せてくれた。
「RUNNINGMAN」に対して、キュレーターとしてコメントを求められるが、押し気味の進行ということだからコメントも短く切り上げる。
ファイナルステージ進出の3作品、そして敗者復活の「RUNNINGMAN」のプレゼンテーションが終わって、いよいよ審査会。
例年だと、収録の終盤で皆疲れているにもかかわらず盛り上がりを見せる審査会だが、生放送の制限でやはり時間が短いのが残念。それでも森本千絵さんの「おはなしの花」を評価する意見に触発されて、あれこれ意見が交わされる。
いずれの作品もファイナルに残るだけあって、どれがグランプリとなってもおかしくないし、正直そう考えているキュレーターが多いはず。だから、どなたかの強い意見が出るとかなり引っ張られる傾向がある。そうなると、それに反発した意見も活発化するのが審査会の面白いところ。
生放送になって唯一、残念だったのは審査会の時間が少々短かったところであろう。これは他のキュレーターもそう仰る人は多かった。
投票の結果、映像部門のグランプリは「おはなしの花」に決定。大差が付いたのは意外だったが、アイディア、造形のセンス、アニメーションの技術的にも長じており、何よりプレゼンテーションでの作者のキャラが立っていた。アウォードでは重要な要素である。
両部門のグランプリ受賞者に拍手を送りたい。
生放送の緊張を感じたのは唯一エンディング。
中島信也さんのコメントの最中に、モニタではエンディングテロップが流れ始める。季里さんと二人でモニタに見入ってしまう。
中島さんのコメントはギリギリ入ったのではないかと思われたが、実際はわずかにラストが収まらなかったようで、編集版の再放送のためにエンディングだけ再度収録。途端に進行が遅くなるが、それでも19時過ぎにはすべて終了。
さて、急ぐは喫煙所。
ピエール瀧さんがにこやかに仰る。
「やっぱり、まずはここだよねぇ!」
喫煙所に向かいつつ、みなタバコを抜き始めてるし(笑)
スモーカーたちが勢揃いして紫煙を上げる。
ああ、美味い。
来年は是非、喫煙所との二元中継を希望。
この後、審査会で使った場所でキュレーターと作者、スタッフが顔を揃えて打ち上げ。
改めてグランプリ受賞者の二組、そしてアウォードに進出された作者の方々、本当におめでとうございます。ファイナルステージ進出はならなかったとはいえ、各回でベストに選ばれることは、それだけでも大変なこと。
皆さま、本当にお疲れさまでした。
私も疲れた。
イベントやTV出演は苦にしないものの、慣れない仕事ということでやはり無意識には緊張しているのかもしれない。
今日、日曜日はその疲れからか、夕べたっぷり睡眠を取ったというのに、3時間も昼寝をしてしまった。
いい日曜日である。
さて、今日は風呂に入って酒飲んで(もう飲んでるけど)、御飯食べて映画見て本でも読んで寝よう。