2007年12月6日(木曜日)

ウルトラ満点。いや、ウルトラマン展。



昨日は夕方から六本木ヒルズへ。
何とも私には相応しくない場所だ。たわけた街にたわけた電飾がのさばっている。青色発光ダイオードはどこでも引っ張りだこの季節である。
今ではすっかり存在が小さくなってきた東京タワーの赤い光がアナログテイストで好ましい。
なぜこのような恐ろしい場所に赴いたかというと、森美術館で翌日から開催される展覧会、その内覧会への招待を賜ったからである。
「ウルトラマン大博覧会 ROPPONGI天空大作戦」
チラシによると、
「(ウルトラ)シリーズ誕生40周年を迎えた2006年夏より展開してきた、この永遠のヒーローにちなんだ一連のプロジェクトの集大成」
なんだそうだ。
私が先日出演させていただいたNHK教育、ETV特集「21世紀を夢見た日々〜日本のSF50年〜」のスタッフの方から招待してもらったのである。
うふ、役得。

レセプションを兼ねた内覧会には多くの招待客が詰めかけており、入り口で随分待たされて後、エレベーターで一気に52階へ上る。
会場を入るとすぐに懐かしい怪獣や宇宙人たちがズラッと並んで迎えてくれる。
「おお、ペギラ! あ、ケムール人! わ、ゼットン!」
カネゴン、ジャミラ、レッドキング、ガラモン、ウィンダム、ミクラス、メトロン星人、チブル星人などなど子供の頃から馴染みの異形の者たちが居並んでいる。
怪獣の名前を覚えている自分が微笑ましくなる。
このコーナーは「撮影可」ということで、「こういうこともあろうか」と思って持参した一眼レフのシャッターを切る。

UDH001.jpg

UDH002.jpg

入り口ですでに童心に返されてしまった。
その後に続く展示物の数々は驚きと懐かしさ、時代を感じさせる滑稽さと時代を越える芸術性、そして何より当時の作り手たちの熱気に満ち溢れていた。
ウルトラシリーズの撮影に使用された衣装や小道具、怪獣のデザイン画、当時の台本などが数多く展示されている。
「うわ、科特隊の制服だ!意外と小さいぞ!」
子供の頃に大きく見えたハヤタ隊員、その衣装も今見ると随分と小さい。アキコ隊員の制服なんてびっくりするほど小さい。
うう、アキコ隊員に会いたいものだ。
「あ、アラシ隊員得意のスパイダーショットだ!おお!ビートル!」
『ウルトラマン』のコーナーには科特隊基地の大がかりなミニチュアセットが、『ウルトラセブン』コーナーにはウルトラ警備隊の基地が、所々表面がカットされてその内部がよく分かるように作られている。
「おお、ウルトラ警備隊の制服だ!」
うう、アンヌ隊員に会いたいものだ。
「あ、あ、ポインターにウルトラホークシリーズだ!」
頭の中では「ウルトラホーク1号発進!」というキリヤマ隊長独特の声が聞こえてくる。うう、口に出したい(笑)
「あ、キングジョーだ!」
思わずキングジョーの歩く音を口に出してしまうぞ!
44歳のアニメーション監督も、ただのアホの子に戻って無邪気に展示物に見入っていたら、声をかけられた。
「監督!」
「あ」
Mさんだった。NOTEBOOKの「脳ストップアメリカ」にも登場した、ソニーピクチャーズのプロデューサー。
見るとお偉いさんまでおられる、ソニーピクチャーズさん一行だ。
まさかここで遭遇するとは思わなかったが、どなたがおられようと、一旦ガキに戻った私は無邪気なものである。
「おおおお!実相寺監督の直筆原稿!何て絵が上手いんだ!」
実相寺昭雄監督は去年亡くなられたのであったか。合掌。
『ウルトラセブン』の「狙われた街」「第四惑星の悪夢」はいまだに忘れられない名作だ。
「大伴昌司の肉筆だ!何てパワフルな仕事ぶりだろう!」
やはり「21世紀を夢見た日々〜日本のSF50年〜」の縁で、大伴昌司の仕事場を生で拝見する恩恵に浴したが、ズラリと並べられた肉筆のスケッチが圧倒的な想像力を感じさせる。まさに妄想力というに相応しい仕事ぶりだ。
これほど対象に執着できる力を持った人はそうはいるまい。
「うおお、この絵がほしい!」
小松崎茂を始めとした数々の怪獣絵師たちの仕事も素晴らしくも懐かしい。大きな画面の中で所狭しと暴れまわる怪獣たちを相手にスーパーヒーローが戦っている。
泣けてくるというと大げさだが、自分の仕事のルーツはここなんだろうな、という感慨が湧いてくる。
私が何かを作る上で初心としていた言葉を改めて思い出す。
「子供の発想を大人の知恵で表す」
当時のウルトラシリーズに関わった作り手たちもきっとそうだったのではなかろうか。

内覧会に招待いただけただけでも光栄なのに、さらなる恩恵が待っていた。Mさんに、かの「少年マガジン」名編集長、内田勝さんを紹介していただいたのである。
内田さんは現在、ソニーピクチャーズの顧問をなさっておられ、Mさんから噂はかねがね窺っていた。
内田さんは「少年マガジン」の第3代編集長で、『巨人の星』『あしたのジョー』の連載を生み出し黄金期を作られた方である。私もその昔漫画家だった頃、講談社の編集者からその名前を何度か聞いたことがある。
ウィキペディアによると「怪獣ものの企画で同誌の売上を伸ばし、30万部だった発行部数を1年で50万部に増大させた」という、スゲエ人である。この方が大伴昌司と組んで、「怪獣大図解」のようなマガジン名物となる特集を生み出したのだそうだ。
何とその御大自らの解説で、昭和40年に初めて表紙に怪獣たちを起用したという「少年マガジン」の実物を見ながら、当時の話を聞かせてもらった。
当時「ウルトラQ」は制作されたものの、TBS側が試写を見てお蔵入りにしたのだそうだ。要するにこんな反応。
「こんな怪獣どもを茶の間に送り込んだら、どんな批判を浴びるかもしれない」(パンフレットより)
それを大伴昌司が内田さんのところへ相談を持ちかけ、番組を気に入った内田さんが「少年マガジン」の表紙に「怪獣ども」を大抜擢したのだという。
当時の少年誌、その表紙の定番といえば「白い歯を見せて、にこにこ笑っている男の子が模型の飛行機などを手に持っているものとか、せいぜいが野球選手や力士のプロマイド写真風」(パンフレットより)だったというのだから、よほどの英断だったのであろう。
実際、怪獣の表紙に対する講談社販売部の反応はこんなだったそうだ。
「気持ち悪い」
だが、実際は大きな反響を呼び、部数の大躍進につながったのは前記の通り。
そういう反骨精神の勝利をご本人の口から聞けるなんて、感動である。

UDH003.jpg

UDH004.jpg

一通り展示物を見てから、夜景の素晴らしいラウンジで一服する。
隣接するレセプション会場では、円谷プロ社長の挨拶や当時のウルトラシリーズ出演者が登壇していたが、立錐の余地もないほどの混雑とニコチン補給の必要には抗えず。
夜景のパノラマを眺めつつ、白ワインとタバコを喫する。ああ、気分がいい。
「どうも今ちゃん」
私を「ちゃん」付けで呼ぶ人は一人しか知らない。K川書店のWさんである。
「どうもどうも」
「今ちゃん、こういう特撮もの好きだったの?」
私だって昔からこんなオッサンだったわけじゃないのだ(笑)
聞くとW氏は現在、特撮を専門に扱う雑誌「NEWTYPE THE LIVE」の仕事をしておられるとか。それでこの内覧会にもいらしていたのだろう。
「Wさん、特撮系詳しかったでしたっけ?」
「いや、全然」
いいのか、それで(笑)

帰りしな、番組「21世紀を夢見た日々」でお世話になり、この内覧会に招待して下さったNHKの方とご挨拶。
「お招きいただきありがとうございました。本当に素晴らしい展覧会でした」
いや、お世辞抜きでホントホント。
「お帰りですか、ちょっと待って下さい」
と、走って行ったその先に小柄な女性。
何と!アキコ隊員!
幸運なことに『ウルトラマン』のアキコ隊員役の桜井浩子さんを紹介してもらってしまった。
名刺をいただき、同行した家内も一緒に記念撮影してまでしていただく。ただのガキ状態。
桜井さんは現在は円谷プロ所属の女優・プロデューサーだとのこと。お年を召されても当時の面影は全然薄れておらず、何よりお声がそのままである。
素直に感激してしまった。

この感動は、子供の頃に慣れ親しんだ方にはお分かりいただけるかと思う。
幼少期に「ウルトラシリーズ」に熱中した世代の方には特にお勧めの展覧会である。また、若い世代の方にも、当時の熱気が伝わるたいへん濃い内容だと思う。

「ウルトラマン大博覧会 ROPPONGI天空大作戦」
 2007年12月06日(木) 〜2008年01月20日(日)  
森アーツセンターギャラリー
http://www.roppongihills.com/j……RAMAN.html

是非、ご覧あれ。
アキコ隊員の実物は見られないかもしれないけど。

トラックバック・ピンバックはありません

トラックバック / ピンバックは現在受け付けていません。

現在コメントは受け付けていません。