2008年3月13日(木曜日)

「十年の土産」十二日目、フィナーレ!



この日も多くのお客様にご来場いただきました。
最終日ということで、いつにも増して盛況となり、道楽の主は喜んで「人間プリンタ」としてせっせせっせとサインすることが出来ました。
会期中、全部で何回くらいサインをしたのかよく分かりませんが、総来場者数が多分1300人くらいのようですから、1000回近くはしているかもしれません。
そりゃ疲れますわな(笑)
しかしそんな疲労を忘れさせてくれるのが、実際に足を運んでくれるお客様の姿と、お客様からいただく感想や好評です。とりわけリピーターの顔を見ると嬉しいものです。
監督本人を前にすると緊張される方が多いようでした。
何せ、私の「なり」は威圧的ですし(笑)
まぁ、誰にとってもフレンドリーな人間だったら、あんなひねくれた映画は作らないでしょうが。
緊張でなかなかうまく言葉の出てこない方もおられましたが、しかしそうした緊張や興奮は決してネガティブではなく、とてもポジティブな波動としてこちらに伝わってきましたので、立ちっぱなしの疲労も忘れて楽しくサインさせてもらいました。
会場に置かれた「一言ノート」に記されたメッセージも励みになりました。一つ一つちゃんと読ませてもらいました。
ありがとうございます。

多くのお客様からたくさんの差し入れもいただきました。
知り合いからいただくだけでなく、一般のお客様からの差し入れも多く、申し訳なく思いつつも感激いたしました。
やはり「今 敏」というと「酒」、ということになるらしく(というか実際そうなんですが)、たくさんのアルコールを頂戴してしまい、画廊の冷蔵庫は「酒屋」を開けるほどの様相を呈しておりました。
「ええ、こんなに一人で飲めないよ」
一人で飲まないっちゅうに。いただいたお酒は「打ち上げ」の宴会に持ち込んで、展覧会を支えてくれたスタッフたちと分け合いました。どれも美味しいお酒でした。
差し入れをしていただいた皆さま、本当にありがとうございました。

そして何よりビッグなプレゼントは、新宿眼科画廊で知り合ったMちゃんというアーティストから贈られた「作品」です。
彼女は布やTシャツをカンバスとして、耐水性の絵の具で絵を描いている。題材は和風で、仏像や鶴、花などが絶妙のバランスであしらわれています。色調も金色や黒といった厳かなトーンで、かといって決して暗いイメージではなく、題材から想像されるような過度な重さはありません。
だからといって、ファッションだけを狙ったような「エセ」は一切感じられません。
仏様の顔も皆すばらしく、高い描写力に裏打ちされた作品は堂々たるものです。
最初に彼女の作品ファイルを見た途端に私はファンになりました。
というより、こんな風に思いました。
「これは広く世間に紹介するべきものだ」
そこで、おこがましいとは思いつつも、あれこれ助言を提供しました。
作品ファイルが少々配慮の足りないものだったので、見知らぬ人に作品を提示する上での心がけ、イメージの展開についてアイディアを出し、展覧会にいらした名編集者・内田 勝さんにも絵を見てもらい、その作品をどういう「文脈」で捉えれば「商品」としての展開が可能なのか、そのヒントをご教示いただきました。
私がしたのはその程度のことでしたが、彼女にはきっと創作への励みになったのかもしれません。
だからなのでしょうか、会期中に急いで制作に励み、何と仕上がったその「作品」をプレゼントしてくれたのです。それも3点も!
その画像は近いうちにご紹介したいと思いますが、大きな襟巻きが2点、ネクタイが1点。
特にネクタイは、かっこよすぎ!
今後メディア出演の際などに利用することで、わずかでも彼女の作品紹介の一助としたいと思います。
でも、いただくにはあまりにすごい「作品」です。
全部で数十万円、いやそれ以上の価値を感じるものなので、若干の困惑と、その百倍もの喜びと感激を味わっております。
ありがとうね、Mちゃん。
お返しに、お好みのイラストがあればどれでもお贈りしたいと思います。

これまでの仕事で関わりのあった方にもたくさんお越しいただきました。
『妄想代理人』月子役の能登麻美子さん、『千年女優』詠子役の津田匠子さん、『東京ゴッドファーザーズ』幸子役の寺瀬今日子さん、展覧会の案内をしなかったにもかかわらず、わざわざおいでいただきありがとうございました。
一昨日のことですが、トークイベント中に音響監督の三間雅文氏もいらしていたとのこと。
案内状を出すのは却ってご迷惑になるかもしれないと思い、仕事関係の方々にはあまり積極的にお知らせはしなかったのですが、久しぶりにお顔を拝見したり差し入れやお花などを賜り、とても感激いたしました。
アニメーション評論家の氷川竜介さんにもお越しいただき、『プラスマッドハウス今 敏』をお買い上げのお客様にサインまでしてもらいました。ラッキーなお客さんでしたね。
トークイベントが始まる直前には、『千年女優』作画監督・本田‘師匠’雄氏(この日が誕生日!)が現れ、さらには先日NHK「デジスタ」でご一緒した途端に仲良くなってしまった役者・本書きの藤谷文子さんが顔を見せてくれました。
http://www.ayablue.com/

最終日ということもあってか、たくさんのイラストをお買い上げいただきました。高額なものなので、購入を迷われていた方も多かったのでしょう。
イラスト販売担当スタッフは、閉店間際まで次々と購入申し込みが続き、まさに嬉しい悲鳴を上げておりました。
お買い上げいただいた皆さま、誠にありがとうございます。
後日、一枚一枚にサインを入れて発送したいと思います。

「前世の土産」オークション落札者も会場にお越しになりました。
『海帰線』と『ワールドアパートメントホラー』2冊セットで、何と¥25,000!
ちょっとした「ゲーム」のつもりだったのですが、私が気持ちよく許容できる額を越えてしまい、申し訳ない気がしていました。もちろん、それだけの価値を感じてくれる人がおられることは、たいへん嬉しいのですが。
そこで、実際の「お代」は半額にさせてもらいました。
著者自らがこういうことで小商いをしてはいけません。だからといって「定価」とか「無料」では、取引ということをバカにしているようにも思える。
そこでこの「ゲーム」は「面白半分」だったことを思い出して、お代も「半分」としました。
それでも十分、高価な気がしますが、利益はすべて物販の売り上げにカウントして、「打ち上げの費用」とさせていただきました。
ありがとうございました、Iさん。

最後となったトークイベントは、何だかただの酔っぱらいの与太話みたいに脱線だけを積み重ねてしまいましたが、喋っている私はとても楽しかったです。
トークイベント皆勤の数名の常連さん始め、本当に良いお客さんばかりで、会場のムードは5日間ともとても和やかだったと思います。
イベントに参加してくれた皆さま、ありがとうございます。
そして何より、参加が叶わなかった希望者の皆さま、本当に申し訳ありませんでした。
「一言ノート」にもたくさんの方が「トークイベントに入れず残念」といったことを書いておられ、昨日のトークイベントが終わった後、決意だけはしました。
「遠くないうちにトークイベントを是非やろう」
浮かれてないでさっさと『夢みる機械』を進めろ、という話もあるのですが(笑)

かくして怒濤の12日間となった「十年の土産」も無事終了。
会期中、ご来場いただいたお客様にはこの場を借りて再び御礼申し上げます。
本当にどうもありがとうございました。
また、日々溜まる疲労の中、最後まで展覧会を支えてくれたスタッフの皆さま、お疲れさまでした。
そして、私にも。
「お疲れさま」
「十年の土産」といいつつ、この催しで皆さまが残してくれた励ましや応援のお言葉こそが、私にとって大切な「お土産」になりました。

「お疲れさまでした!」
乾杯は、すでに常連となってしまった「上海小吃」で行われ、飲んで喋ってたいへん楽しい時間を過ごさせてもらいました。
疲労と心地よい酩酊で、始発が動き出す頃にはガックリと寝入ってしまいましたが、この打ち上げを目指して展覧会の準備から励んできたようなものです。
というのも、この展覧会の発端は、何かのイベントに向かう車の中で、マッドハウスのプロデューサーH氏とのこんな言葉から始まったのですから。
「打ち上げでもやりたいですね(笑)」
そして無事に「打ち上げ」に達したのですから、言うことなし。

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