2008年3月22日(土曜日)

多忙な道のり・その7



昨日は絵をお買い上げいただいたお客様用に新たに大判出力するデータを持って新宿へ。
B1出力を2枚オーダーする。
その足で「世界堂」へ行き、新たにA4サイズ11枚のプリントを納品して額装をお願いする。
てくてく歩いて「新宿眼科画廊」へ顔を出す。
今日が搬入日とのことで、展示スペースはガランとして白い壁だけを見せている。
何だかとても懐かしい。
画廊のチエちゃんとしばし歓談。
「近いうちにまた御飯でも食べましょう」と再会を約しておいとまする。

さて「多忙な道のり」の続き。

神戸から帰京して、イラストの修正作業に復帰。せっせと直しを続ける。
だが、翌日は夕方から渋谷NHKで「デジスタ」収録。
今回のゲストは物書き・女優の藤谷文子さん。
http://www.ayablue.com/
打ち合わせと収録、そして主に打ち上げの席ですっかり親しくなってしまった。
「十年の土産」最終日、藤谷さんが会場に姿を見せてくれたのは、この時のつながりによる。
とっても気分のよい人なので、是非仕事でも仕事以外(主に酒席だろうが)でもまたご一緒させてもらいたいものだ。

この時の「今 敏セレクション」で惜しくもベストセレクションにはならなかったものの、投票数では互角となった(投票が同数の場合はキュレーターの投票が優先される)「それはそれはそれは」。
これは少々難儀した作品であった。
というのも、キュレーターはその立場上、視聴者に対して「この作品はこのように見ると面白い」とか「こういう点がよく工夫されている」といった、「面白く見るための見方」や「さらに作品を良いものにするアイディアや考え方」を紹介せねばならない。
「ねばならない」という言い方は大袈裟かもしれないが、少なくとも私はキュレーターとはそういうものだと解釈している。
しかし「それはそれはそれは」は、その点を上手く紹介する自信がなかったのである(笑)
作品初見の直感としては「これはいい」と思ったものの、「どういう点が?」と言われると、どうも言葉が滑らかに出てこない。
喋り始めれば、自分のその言葉に喚起されて次の言葉が見つかり、それを繰り返すうちに結果的に自分の言いたかったことが発見され、それが作品に対する批評にもなるのだが、どうもそのとっかかりがよく分からない。
たまにそういう作品に遭遇することがある。
だいたい私のセレクションは「アートアニメーション」というカテゴリーになっているようだが、今 敏はアートに無縁である。
私は歴とした「商業アニメーション監督」なのである。
アートアニメーションなんて作ったこともなければ、ろくに見たことさえない。
なのに、何か言わなくてはならない。
本当はけっこう困っている(笑)
とはいえ、要請には全力で応えるのをモットーにしているので、他ならぬ「デジスタ」応募作を見ることによって、アートアニメーションの見方を自分なりにこしらえてきたのである(かなりいい加減で、ちゃんとしたアートに詳しい人が聞いたら怒られるかもしれないような見方だろうが)。
「それはそれはそれは」に関しては、あれこれ考えをめぐらせたものの、多分最初に感じたであろう印象に従って、「世界の手触り」というキーワードでその魅力を紹介させてもらった。
夕陽の赤色がとても印象に残る不思議な映像(音も面白い)である。

一々話が回り道しているが、回り道自体が目的の文章だったりもするのでお許しいただきたい。
その「それはそれはそれは」の作者はノンキーココさん。
「デジスタ」収録の際にもお会いした彼が、「十年の土産」にお越しくださった。
足のケガのリハビリ中とのこと。呉々もお大事に。
後日そのノンキーココさんから、「十年の土産」への素敵な感想をもらった。
ウェブ管理人宛のメールでいただいたものだが、素晴らしい内容なので一部紹介させてもらいたい。
彼は展示された絵の「色と色の組み合わせ」に感動したとのこと。
そして。
「特にパブリカの朱色の髪の毛と顔の肌色、そして胸元の金色を含む色々な色の組み合わせが、私にはイコン(東欧キリスト教会の絵画)のように見えました。でも近づくと、人形やガラクタなどの固まりで、キリストで無くパブリカさんでした。パブリカの映画は見てはいませんが、パブリカさんはキリストのような救世主なのだろうと想像しました。」
過分なお言葉ですが、しかし、すぐれた鑑賞眼ですね。
映画を見ていないにもかかわらず、「だいたい合ってる」(笑)
もちろん私はパプリカを特に救世主のように描いたつもりはありませんが、結果的にはそういうことにもなっている。
そしてもう一つの面白い感想が、これ。
「絵を見てから周りを見渡すと、個展を見に来ている人達が絵の中の登場人物に似ているのです。」
共感される方が多い感想なのか、そうではないのか分からないが、自分と自分を取り巻く状況を「そう見る」というセンスが面白い。
作品に独特の世界観をあらわしている方だけに、やはり見る目が違うのだなと思える。
勝手に紹介してしまい、すいません、ノンキーココさん。不都合があればお知らせください。

「デジスタ」翌日、世間は「バレンタインデー」とやらだ。
朝起きると、前夜の打ち上げの酒が残っているのか、どうも身体がだるい。藤谷文子さんとの話が楽しくて喋りすぎたのか、喉も少々痛い。
吉祥寺ヨドバシカメラによってプリントアウト用のインクと紙を購入してから会社に向かうが、いよいよもって身体がだるい。
「これはまずい」
薬局で風邪薬を買って出社し、熱を測ると37.8度。
あらま、不覚。何とした失態。

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