2007年11月22日(木曜日)

「21世紀を夢見た日々」



昨日、出社すると机の上に一枚のDVD。
私も出演させてもらったNHK教育「21世紀を夢見た日々〜日本のSF50年〜」である。
オンエアを楽しみにしていたのに見逃していた。別に自分の映像をチェックするためではない。珍しく番組そのものを楽しみにしていたのである。
内容は、以前インフォメーションでも紹介した通り。
小松左京、筒井康隆、星新一ら後の巨匠たちが1963年に日本SF作家クラブを結成。当時、異端視されたSFが文化と認知されるまでの道のりを紹介するという番組。
夕べ、早速見たところまったくその通りの内容で、最後まで楽しめる90分だった。
当時のSFに対する偏見に抗して「SF作家クラブ」を創立したメンバーたちの意気が熱意が感じられる一方で、同時にそれがユーモアに富んでいるのが実にいい。
何だか、皆さん「大人」に感じられる。
創立メンバーでは年長の星新一でも当時30代後半だったというのに。
それに引き替え、私は44歳にもなるというのに……。やれやれ。自分にガッカリ。

以前、BBSにFOOさんがこんな感想を書いてくれている。

>話の多くは大昔に活字で読んで知ってましたが、こんなビジュアルだったんだあ、と
>感心しきりでありました。原子力研究所見学のくだりとか。

原子力研究所見学で「入れろ」「入れない」のくだりは愉快でしたね。
「所長は知り合いなんだ。所長を出せ、所長」
「名前なんだっけ?」
「“はらこ”だろ。はらこつとむ研究所って書いてある」
はらこ・つとむ(原子力)(笑)

>取材中の面白いネタはほとんどカットされてたみたいじゃないですか(千明様とのツーショットも含め)。

そう、裏事情を多少知っている身としては、もっともっと濃い内容をつい期待してしまっておりましたが、さすがにTV、それもNHKですしね(笑)
「千明様とのツーショット」というのは、私が番組出演時ではなく、ロケの見学に行った際の収穫物。番組でも大きく紹介されていた大伴昌司邸でロケがあるということで、スタッフの方のご好意で見学させてもらったのである。
SF作家クラブのメンバーでもあった編集者、故・大伴昌司の、生前のままに保存されている仕事場にも感激したが、直筆の怪獣図解の数々に圧倒された次第である。すごいエネルギーだ。
当時はまだまだ珍しかったゼロックスで作られたという「傑作」も見せてもらったが、それが何であったかは内緒。
このロケ見学のお土産として、栗山千明嬢とのツーショット以外に、数枚の怪獣図解のスケッチ、そのカラーコピーをいただいてきた。『ウルトラQ』の「カネゴン」や「ナメゴン」、『ウルトラマン』や「レッドキング」、『ウルトラセブン』に登場した「エレキング」や「ビラ星人」たちの設定や内部が生き生きと描かれている。
また大伴昌司が編集を担当した昭和44年に出された「キネマ旬報・世界SF映画大鑑」、これは実物をもらってしまった。
うう、感激。
ありがとうございました。

FOOさん言うところの「面白いネタ」の一つには、収録の際こっそり見せてもらった『宇宙戦艦ヤマト』の初期スケッチがある。まだタイトルも別な頃(『アステロイドシックス』とか何とか)に描かれたもの数点。
この番組本編では紹介されていなかったが、番組予告用のミニ番組では岩に包まれたまま宇宙に浮かぶヤマトの絵が紹介されていた。
その絵は随分以前にも見た覚えがあったが、度肝を抜かれたのはキャラクターの初期イメージである。一説によると某有名漫画家が描いたという説もあるらしいが、定かではない。
「古代」「島」「森雪」と思しきキャラクターがモノクロで描かれているのだが、これらを見た途端、収録をご一緒した折原さん、澤本さんともども思わず声を上げてしまった。
「すげぇ」
これらの絵には腰が抜けるほどに驚き、一同一斉に携帯のカメラに収めたほどである。存分に笑わせてもらった。
とにかく「ダサい」のである。
時代を割り引いても十分にお釣りが来るほど時代が遅れているように思える。
随分とあごの大きな「島(と思しき人)」もいいが、やはり「古代(と思しき人)」がずば抜けた傑作である。
画像を紹介できないのが残念至極だが、そのインパクトを伝えるために文章で再現を試みる。

バストショットの絵である。
ヘルメットを被った「古代(と思しき人)」は何かに驚いた表情をして、画面向かってやや左を向いて立っている。釣り上がった眉毛は目の玉ほどに太く黒々としていてさながらスポ魂モノの主人公のようだが、顔の造作そのものは概ね「古代進」といっても差し支えはないほどだ。
ヘルメットのフェース部分はハート型にくりぬかれて顔が覗いている。ハート上部の窪みが額のあたりに来るわけだ。前髪がギザギザと4つの山が見えている。
耳の辺りにはレシーバーにもなるのであろう、丸いふくらみがある。そしてヘルメット頭頂部には角のような突起がある。サメの背びれを想像してくれるとよい。海面に現れたジョーズの背びれ。それがサメの先頭側を奥へ向ける形で付いている。
全体としてはヘルメットというには少々ヘルメットに申し訳ない気もしてくる。
そうだ、これは頭巾だ! 頭巾と呼ぶにふさわしい。
吉田戦車の『ぷりぷり県』に出てくる「県ずきん」だ。県ずきんに突起が付いていると思って欲しい。
これだけでもかなり「いかがなものか」という気がしてくるが、何よりコスチュームがいかしている。その特徴は大きな大きな大きな襟にある。見たこともない襟の形だ。およそ実用や美観にも縁がないのではないか。
大きな三角定規を二枚、ぶっちがいに組み合わせたような形だ。二等辺三角形ではなく「60°・30°」の三角定規を直角の方を下にして、鶴が羽を広げたように組み合わせる。その鶴の羽が古代(と思しき人)の首を取り囲むようにして左右に大きく広がっているのだ。それぞれの羽の先端は肩幅を優に越えている。
三角定規の直角の部分が、普通のシャツの襟のようになって見えるのもポイントだ。
手が切れそうなほどシャープな襟の下には、当然衣服本体があるのだが、襟と本体部分はまるで他人同士のようにまったく繋がりが感じられない。
「オレは単に襟としての襟だもんね」
「け、襟なんて浮ついたものなんか願い下げだ! こちとら生粋の服でぃ!」
そういう感じだ。
その生粋を誇る服は単に時代遅れの「未来イメージ」で、それほど驚くべきではない。
服は一枚なのだろうが、鉛筆のタッチで塗り分けされているため、黒いシャツの上に白っぽい上着を着ているようにも見える。襟の無い上着だ。
二つボタンの背広のジャケットをまず想像して欲しい。その襟を削除し、上着のボタンを閉める(実際の絵にはボタンはない)。そうすると胸元に大きな「V」字が生まれるだろう。そのV字の面積が黒く見える部分だ。
V字の黒い面積には謎の「丸い窓」が開いている。その機能は想像力の外にあるようだ。
人物との対比から考えると、直径は10センチほどだろうか。位置は、三角定規の直角が形作る襟の下、普通のシャツで言えば第2ボタンの辺りだ。V字の黒い面積の中に浮かんだ満月のようである。

描写はこれで終わり。
拙い文章だが、なるべく丁寧に描写したつもりなので、きっとこれをお読みの方々の脳裏にはくっきりと「古代(と思しき人)」のイメージが浮かんでいることだろう。
今度はそれを絵に描いてみようじゃないか。
描いたら、それをメールに添付して私に送りたまえ。
もっとも「実物」に近かった方にはプレゼントを差し上げよう。
何がいいだろう?
「栗山千明嬢と私のツーショット」
要らねぇっての(笑)

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