1999年7月12日(月曜日)

第三回



 「インターネットが今面白い!!」などという、ある時期の電車広告に踊った文字に更に踊らされて多くの人々が電子の海に漕ぎ出し、今も尚多くの人がインターネットへの接続に頭を悩めながらもこの海へ船出を続けているであろう。通信事業は大儲けだな。
 ある者はインターネットを有益なデータベースとして活用し、ある者は友達を探し、ある者はモロ見え画像を探して奔走しているわけだ。楽しきかなインターネット!素晴らしきかなグローバルビレッジ!!
 そして更に更に「ホームページであなたも情報発信者!!」という安直な吊り広告にあおられて、見るだけでは物足りないような気にさせられちゃった者たちが、こぞって自分の島を浮かべることになる。
 高度経済成長もかくやといった建設ラッシュだ。その証拠に見てみたまえ、何と「工事中」の多いことか。

 見るとやるでは大違い、この周知の事実。
 実際に作り始めて、私自身その運営の困難さに思い至った。鮮度を保つための更新は勿論のことだが、当初の一大目標であった「パーブル戦記」が完結してからは、「ネタ」の確保という問題の浮上してきた。

 概ねHPを作るに当たっては、何某かの核となる主題を持っていよう。
 車・バイク好きは愛車自慢や憧れのマシン、お絵描きが好きなら趣味のお絵描き、可愛いペットや子供の自慢や成長記録、旅人なら誰も読みたくならないような紀行文、溢れるスケベ心の持ち主は彼女自慢wihtFLMASK…
 作ろうとする人は好きなモノや、自分が得意だと思い込んでいるモノを題材にしたHPを計画するであろうし、アップした暁には同好の士が集まり楽しくメール交換、の夢も広がっているに違いない。そんな格好の題材を持っている人はさして困ることもないだろうが、だからといって趣味のモノがなければHPを作れないかと言えばそれもまた違うであろう。
 身の回りのことでも好きなものでも、表現してみたいことがあれば何でもいいのではないかと思う。気に入った「リンク集」というのもあるだろうし、「日記」でも「お気に入り」でも「ポエム(笑)」でも「評論(大爆笑)」でも何でも良い。ただしそれを他人が見たがるか、どうかは別だぞ。ここでは基本的に「自分がまず楽しむ」ことを主眼に置いている人を対象に考えている。何を偉そうに書いているんだか。

 それにしても世間の「打ち込めるモノが無いといけない」といった風潮は一体どうにかならんのか。無いからといって、うつむいて過ごすばかりの人生になるわけでもなかろうに。
 私自身長くはない実人生の中で、取りたてて何をしたいのか明確でない時期もあったが、ぷらぷらと色々なことに時間を過ごして、それはそれで楽しかったぞ。ケケケ。
 何事も「あった方が望ましい」くらいに考えた方が気楽に生きられると思うのだがなぁ。
 この「無いといけない」という文部省の悪魔の刷り込みが、現代社会の自称ナイーブな若者たちをして「やりたいことを見つけられない」症候群に追い込み、そこにつけ込んだ商売上手な音楽屋が「きっと大丈夫」「夢はいつか叶う」「分かり合える」などと一片の根拠もない歌詞を垂れ流しやがり、CDの売り上げだけは景気の良い数字が聞かれるわけだ。あ、じゃいいのか、それでも。
 ケ。
 未来がきっと大丈夫なわけもなく惨憺たる現実が待っているはずだし、そうそう夢が叶うわけなど無いのだ。何の積み重ねもなく叶う夢など、それこそ夢の世界の山の彼方のあな遠くのことで、現に世間には夢の残骸が累々と積まれているではないか。掃いて捨てやがれ。
 まったくいたずらに人の心を煽るのは好かん。ましてや人間同士が完全にワカリアエルなど笑止千万。だから世の中がダメになるのだ。人同士は「まず分かり合えるわけもない」というところから始めるべき…いや、もとい、始めるのが望ましいのではないか。
 それにしてももっと現実を見つめた歌があってもいいだろうに。「よろしくアトピー」とか「モラトリアムナイト」とか。
 いいか、そんなことはどうでも。

 私の場合、先に記したように当初HPの主眼となったのは「作品制作中のよもやま話」であった。しかしこれは現在既に完了してしまっている。
 やることが無くなったらHPを閉鎖するというのも一つの手なのだろうが、何分どうにも楽しいと来ている。
 何故楽しいのだろうか?
 もちろんこの「パーブル戦記」連載中には多くの方からのメールもいただき、楽しい思いをさせてもらった。しかし本当に楽しかったのは「書くことそれ自体」であったような気がする。この、一人上手。
 とかなんとか言いながら、実はHP開設に当たっては別な目論見も忍ばせてあった。

 当時、まぁ現在もそう変わりはないのだが、私は文章を書くことを苦手にしており、かなりのコンプレックスすら持ち合わせていた。
 仕事柄「企画書」だの「脚本」だのに関わることも多くなってきて、「文章を書く」ことからこの先逃げられそうにない、という危惧も浮上して来ていた頃でもあった。
 「逃げちゃダメだ」が座右の銘だ。ウソつけ。
 そこで、だ。ホームページを作り文章を無理矢理にも書くことで、上手になるのは無理でも何とか苦手意識くらいは克服できないものか、と考えたのだ。
 そのお陰か。現在では絵を描くよりもこうしてキーボードを叩いて愚にも付かないことを垂れ流す方が楽しくなってきたほどだ。この気持ちの変化は意外であった。苦手の権化ともいうべき文章書きがこれ程楽しいことに反転するとは。
 この楽しみを持続させるためにもネタを探させばならない。と意識も変わってきた。
 かように当初の目的などすぐに一変するのだ。常に臨機応変な対処がキミのホームページの行く末を救う、ということも頭の片隅にメモしておくことをお薦めする。

トラックバック・ピンバックはありません

ご自分のサイトからトラックバックを送ることができます。

現在コメントは受け付けていません。