1999年7月12日(月曜日)

第七回「名付け」



 肝心なことを忘れていた。タイトルだ。
 現世においては何事も名前を付けてやらねば確たる存在たり得ない。「名付け」は奥深い儀式であろう。
 当ホームページの名前は「KON’S TONE」というのが正式名称であったが、現在は「KON’STONE」と間のスペースは無いのが正しいものとしている。
 いずれにしろあまり良い名前でなかったとちょびっと後悔している。実はタイトルがなかなか決まらなくて、あれこれ悩んでいたのだがネットに早くアップしたいばかりに、最初に思いついたこのタイトルにしてしまったのだ。出来れば、もっとこう、何というか、深遠な感じのするタイトルにしたかったな。
 多少後悔があるとは言え「名付け」の儀式を通過した以上、そうおいそれと変えるわけにもいかないし、ころころタイトルを変えたりするのは潔くない態度である。何よりせっかく宿った「魂」が散逸してしまうので当面このままにしておく。宿れ言霊。
 ホームページに限らず、どんな作品でもタイトルは一度悩み出すと最後まで決まらなくなるもので、困ったときは最初の思いつきを大事にする方なのだが、あまりネーミングのセンスは無いな、私。
 さてただの思いつきとは言っても、それなりに込められた意味はあった。
 「KON’STONE」。まず何と読むのが正しいかと言えば「コンズトーン」となろう。響きが宜しくないな、全く。
 「TONE」には「調子, 音色 ,口調, 語調, 語気, 論調, 傾向, 風潮, 気風, 色合い, 濃淡, 明暗, 音の高低, 抑揚,」などという意味があるそうな。
 まぁ「今の口調」といった感じで、前にも書いたように自分なりの文章表現を試みようという意味合いによるものだ。
 内容的に偏ったタイトル、例えば「漫画新世紀」「電脳アニメ館」「マシなシネマ」といった具体的なものにしてしまうと、それ一筋で運営して行くつもりならともかく、心変わりがあったときに他のことを扱いにくくなるであろう。かような懸念もあって、私の場合はより自分に近いタイトルにしておこうと考えたわけである。
 それと「コンストーン」。一部のトミノな人のために断っておくが「コンスコン」じゃないぞ。「サイド6」だの「リックドム」だのという単語は思い浮かべるな。「コンストーン」、「今の石」ね。
 そうそう、そうであった。当初は私の唯一の趣味とも言える化石を主に扱うことを趣旨としようとも思っていたのだ。また日本語的には「石」と「意志」もかけてあったりして、「石のように固い意志」を持てますように、という乙女の祈りも込められている。
 HP開設当初の表紙は、所有しているアンモナイトの化石の画像だったから、まだその意味合いも成立していたが、現在はただのお絵描き画像になり果て、さっぱり意味が分からないことになっている。「STONE」というコーナーに所有している化石の画像があるので、一応はその片鱗があるのだが、開設以来全く更新していないのでは無かろうか。第一新しい化石を買っていないのだ。高いよ、化石は。
 かように当初の目的などはすぐさまに変更されていったりするわけだ。初志貫徹という言葉も大事だが、臨機応変はもっとキミの役に立つかもしれないぞ。
 それと不思議なもので、私は基本的に「お金にならないお絵描き」はしなかったし、ネット上で娑婆と同じことをするのも芸がないので、ことさらに自分の絵を紹介する気などなかったのだ。それがどうだ。ウェプに上げるために「お金にならないお絵描き」はするは、「GALLERY」まで作るは……変われば変わるものだ。
 自分の創作物からのフィードバックを享受できることはたくさんあるわけだ。

 「KONTONE」という候補もあったかと思われる。「混沌」という意味を込められるし、良いかと思ったのだが「コントね」とか思われるのも何なので「アポストロフィS」を入れてみました。
 そう言えば。大学生の頃、夜、友達から電話がかかってきて、いきなりこんな事を言われた。
 「おい今、すぐに○○○の家に電話してみろよ!外人が出るから面白いっけな!」
 後で聞いたところによるとその○○○という友達の家にイタリア人の女の子が居候していたらしいのだが、その時はよく事態も飲み込めぬまま、言われるままにダイヤルを回してみた。
 「モシモシ」
 確かに出た。外国人女性が。
 「あのぉ、今と言いますが、○○○さんいらっしゃいますか?」
 彼女、応えて曰く。

 「コントさんですかぁ?」

 おい。
 そんな切ない思い出もあって、「KONTONE」は却下したのであった。

 末永くお付き合いしていくものだから、皆の衆もタイトルを付けるときはよくよく考えた方が宜しかろう。
 自分が扱うネタをタイトルの一部にすると、訪れる人に内容が分かりやすくて良い、などとマニュアル本に書かれたりしているようだが、別にいいじゃあないか、そんなにまでして客引きをしなくても。名前くらいは好きに付けたれ。節操を忘れぬ程度にな。

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