2008年11月15日(土曜日)

七日目ストックホルムからオスロへ



現在はすでに九日目。明日には日本に向かって出発する。
今日は、オスロでのメインの仕事が詰まっている。今日のミッションを終えれば、北欧でのすべての仕事が終了。正しい日本食が恋しい。
現地での体験と、ブログの更新の時期が乖離してきたが、私も遊びに来ているわけではなくもない。
少しは時間のギャップを埋めるべく、今回は長めのレポート。

さて、ここはまだストックホルムのホテル。
8時半、大使館の方が素晴らしい贈り物を届けてくださった。
おにぎり!!
この方の奥さまがお握りになってくれたおにぎりである。由緒正しい日本のおにぎり。
ああ、おにぎり。
これ以上に嬉しいものがあるだろうか。
前日、おにぎりを差し入れてくれるということで、心の底から楽しみにしていたのだが、いざ目の前にしてみると思わず笑みがこぼれるほどうれしい。
さっそくホテルのレストランで、おにぎりをいただく。

おにぎりのお供には、前日日本食素材の店で購入したインスタントみそ汁である。
レストランに用意されていたスープ用のカップに、ネリネリと味噌を絞り出し、豆腐の具材をパラパラと振りかける。
後はお湯を注ぐだけだ……と思ったら、お湯のボトルが空っぽになっている。
正直、ムカッとした(笑)
通りかかったウェイトレスを捕まえてどなりつけてやった。
「ホットウォータープリーズ」
口から出たのは気弱なカタカナ英語だったがちゃんと通じたらしい。
早く持ってこいよ、お湯をさ。早くだよ早くさ!
じれる気持ちを抑えてお湯を待つ。
味噌汁を飲む前におにぎりを食べるわけにはいかないんだよチクショウめ。
あ!ちょっとテーブルに戻ってる間に、お湯が持ってこられたじゃねえか。
小走りにお湯のもとに急いで味噌汁に命を与える。
「美味い!」
何て美味しいんだ、味噌汁。でもちょっと濃かったな。もう少しお湯を足してくる。
さて、まずは味噌汁で気分を高揚させて、いざおにぎりだ。
「うっまーい!」
あ、まだ食べてないや。
由緒正しいおにぎりはやはり由緒正しくアルミホイルにくるまれている。
包みを開くと、梅が混じったおにぎりとおかかが入っているというおにぎりは、それぞれラップにくるまれて仲良く並んでいる。
幸福な風景だ。
さっそくいただく。
「美味い……なんて美味しいんだ!」
笑みと感動がわき上がる。
ともすると一気に食べつくしてしまいそうになるところを、味噌汁を挟みながらよく味わっていただく。
もぐもぐ。
おかかに至る頃には感涙がこぼれ落ちそうになる。
「うう、カツオ節ってどうしてこんなにおいしいのだ!」
出汁の味に飢えていたのだね、きっと。
正統な日本の味が体中に広がる。
こんなにおいしい朝食は滅多にないだろう。
スウェーデンで食べるおにぎり、それは感動の味。
そして、しみじみと思うのである。
「日本人で良かった。絶対」

大使館のWさん、そして奥様、本当に本当にありがとうございました。
おかげで累積疲労も回復しました。

もっとも。同行プロデューサー氏は、おにぎり定食を私同様に感動しながらいただいたにもかかわらず、昨夜、酒と音楽と老人相手にテンションが上がり過ぎたせいか、記憶と元気の一部を失くしていたようだが。
飛行場へ行く前に、スウェーデン国王の宮殿に寄ってもらったのだが、宮殿の前に同行プロデューサー氏のSOSにより、ガソリンスタンドに止めてもらう。
私が煙草を一服してストックホルムの美しい街並みに名残を惜しんでいる間に、氏はトイレを借りて二日酔いによる気分の悪さを調伏した様子。
王宮の美しい敷地と幾何学図形のように配置された庭を見学する頃には、プロデューサー氏もずいぶん回復したようである。

空港に到着し、チェックイン。
Wさん、ドライバーさん、どうもお世話になりました。
いつかまたどこかでお会いできるのを楽しみにしています。

さて、次はいよいよ最終訪問地オスロ。
ストックホルムからオスロへは、ヘルシンキ→ストックホルム同様わずか一時間のフライト。
スウェーデンとノルウェーでは時差もない。日本との時差は−8時間。

オスロの空港では在ノルウェー大使館のIさんが出迎えてくれる。
まずは外で煙草を一服。
空気がひんやりとして、気持ちいい。
しかも太陽が出ている!
快晴だ。今回の旅行で初めての晴天。
こんなにも太陽の光がありがたいと思えるなんて。
もっとも、太陽の位置はひどく低い。午後の14時半だというのに、さすが北欧。
気温は2℃。これまでの訪問地は予想よりはるかに温かかったが、ここオスロは旅行前に想像していた北欧のイメージにぴったりである。

市内から郊外に向かう下り車線は妙に車が多い。
「通勤ラッシュ、というか家に帰る人たちです」
ええ!?まだ午後の3時なのに!? もっとも、陽はすでに低く日没が近いが。
ノルウェーでは、仕事の終わりは16時が一般的だとか。
仕事が終わると家にまっすぐに帰り、食事をした後、クロス・カントリースキーに出かける、というのがティピカルなノルウェー人らしい。
残業もあるだろうに、と考えるのはティピカルな日本人だからであって、この国においてはこういうことになっているという。
「残業するのは無能だから」
なるほど。
この国でもアニメーションを作ることなどできまい、絶対(笑)

車窓を流れる風景は何だかひどく懐かしい気がする。ヘルシンキでもストックホルムでも、空港から市内へ向かう風景が北海道を思い出させたが、ここオスロでは気温と相まって一段と北海道と似た雰囲気を感じる。
うっすらと霜が降りた景色をずっと眺めていると、つい北海道に帰ってきたような気分にさえなる。
美しい。たいへん美しい景色だ。
いきなりポイントが高いぞ、ノルウェー。
だが。
問題は、飯だな。

ホテルにチェックインして、しばし休憩。
大使館のI氏に迎えに来てもらい、夕食へ向かう。
その前に、ホテルの部屋が冗談じゃなくあまりに悲しいほど全然まったく狭いので、広い部屋に代えてもらう交渉をお願いする。
夕食後に引っ越しすることになった。

車でオスロ市内の中心街を軽く一回りしてもらう。一回りといっても、わずか数分。
今回の訪問地では最も小ぶりの街だ。華やかな通りはわずかに一本しかない。
夕食をとるレストランは、いわゆる「ウォーターフロント」で、新しく開発されている繁華街。繁華街というには、日本人がイメージするそれよりよほどさびしいが、港を臨む通りは風情があって感じのいいレストランが並んでいる。
どのレストランにも屋外にもテーブルが用意されている。気温が−2℃にもかかわらず、天井に備えられた赤外線ヒーターと膝かけの支援を受けて、愛煙者たちが談笑している。
ここノルウェーでは屋内での喫煙は禁止されたようだが、スモーカーは少なくない様子。

造船所の跡地を利用して作られたというレストランの店内は、船の部品やミニチュアの舟が至る所に飾られている。ノルウェーという国全体がシックな色合いを好むようで、この店も落ち着いたトーンでまとめられ、眼に優しい雰囲気。客でいっぱいだが、ノルウェー人は話声が小さいのか居心地はいい。
シャンパンをいただいて、この地でのミッション成功を願う。
フィッシュスープとサラダ、それとメインにサーモン……と思ったら、この日サーモンは切れているという。
なんだ。
がっかりというか、拍子抜けだな。
食材にはあまり恵まれないと思われる北欧、特にノルウェーではきっとサーモン、サーモン、またサーモンという事態を予測していたし、だからこれまでサーモンはなるべく避けてきたというのに。
ないものは仕方ない。代わりに「オヒョウ」を注文してもらう。
フィッシュスープは美味しかったのだが、オヒョウは妙なソースがどうも口に合わなかったので、「あれ」に御出馬いただく。
キッコーマン特選丸大豆醤油。
醤油をたらすとあら不思議!
白いご飯が欲しくなる(笑)
奇妙な、形容しがたいソースの淡白な白身が一気に旨味のある海の幸に変身した。
パクパクと口に運んで満腹する。

食後、腹ごなしを兼ねて、寒い中を少しばかり散歩する。
空気は切れるように寒いが、その分景色の輪郭がシャープで心地よい。

oslo01.JPG oslo02.JPG oslo03.JPG
見るからに寒そうであろう。
右端の建物は市庁舎。

ホテルに戻って引っ越し。新しい部屋は、倍以上の空間があって快適。
最初の部屋はまるで日本の狭いビジネスホテル並みだったので、ソファセットやテーブルまで用意された新しい部屋がより大きく見え、心理的な圧迫感もない。ようやく落ち着く。
ヘルシンキのホテル同様、バスタブがないのは残念だが、それよりベッドが狭いのに驚いた。
日本で一般的なシングルサイズのベッドより、さらに幅が狭い。幅の狭いベッドというより、「ゆったりした棺桶」とでも言いたくなるような幅だ。
北欧、特にノルウェーは総じて長身なのにもかかわらず、どうしてこうもベッドが小さいのか、はなはだ疑問だ。
もっとも、寝心地は悪くないので、安眠できそうだ。
ベッドに入って活字を追っているうちに眠気がスルスルと到来してくる。
グー。

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