1999年7月12日(月曜日)

第十一回「伸びゆく新技術」



 日進月歩でネット上の技術も進んでいるらしい。

 毎月発行されるインターネット関連の雑誌には新しいHP作成ソフトやプラグイン、ウェブ向けのグラフィック・音楽ソフト、あるいはまた全く新しい新技術が数多に紹介されている。私なんぞにはとんと分からないことばかりだ。
 最近のお若い衆はこういうものに付いていけてるのだろうか。

 とかく新しい技術というのは注目されやすいし、技術そのものに興味のある方もおられるようだが、先端技術ばかりを追い回すと大方がろくでもない結果を招くようなので、キミにおいては程々にされたいものである。
 キミ自身を楽しませるという態度ではあっても、何と言ってもお客を大切にしているキミのことだ。よもやHPを、借りてきた技術の博覧会場にしてお客に様々なプラグインを要求するような真似はしないであろう。勿論ネット上の新技術を紹介することが目的であるというなら別かもしれないが。

 娑婆における映像や音楽フォーマットを例に考えてみよう。恐らくキミの部屋にはコンパクトディスクプレイヤーという機械があろう。今ではすっかりお馴染みになった銀色な円盤をかけて音楽を鳴らしめる優れものだ。今ではこのCDが音楽を伝えるメディアの中心になっているが、その前には塩化ビニールの黒い板、レコード盤が主であった。今でもなじみ深いカセットで販売されることもあったし、カセットでも8トラといわれるトラック野郎御用達のメディアもあったが、現在ではこうした耐久性の低いメディアはCDに取って代わられている。更にはMDという録音再生が手軽で高音質のメディアが、自宅録音の主流を占めていたカセットの市場を席巻しているであろう。その陰で消えていった確かDCCというデジタルカセットの方式をご存知の方は少ないかもしれないし、生き残っているDATも業務用やマニア向けの細々とした普及率だろう。
 映像のフォーマットにしても然り。Hi-8の定着も待たないうちにDVが投入され、更には巻き返しを図ろうと、8ミリビデオテープにデジタル録画する、などといういかにも過渡期的かつ陳腐なフォーマットまで出現するとか。録画可能なDVDもじきに登場するであろう。しかしベータやVHDはどこに行った? 私の家の棚を占領している数多のベータのテープの行く末はどうなるのだ? デッキを新たに購入するにはEDベータしか買えないという有様。選択の余地無し。
 開発当時は消費者にさらなる利便性をもたらし、来るべき明るい未来を予感させた筈の新技術ではあるが、一般に定着するものはかくも少ない。
 キミが画質にこだわって購入したS-VHSだって、キミの実家や彼女の家ではきっと再生できないであろう? S-VHSですら決して一般的には普及なんかしちゃいないのだ。標準モードでテレビ録画する人間だって一般的に言えば少数派の筈だ。
 結局はメーカー側の勝手な資本主義の都合で次々に排出される新製品に踊らされてばかりなのである。消費者として高らかな惹句に惑わされず、冷静に見極めることが肝要である。

 その伝で考えればネットの上の技術の在り方も明白であろう。あくまで一般のお客さんを相手にHPの運営を考えるのであれば、煩わしいプラグインのダウンロードなどをいくつも求めるものでない方がいいに決まっている。
 勿論映像や音楽を紹介したい向きには是非とも必要なものであろうし、やむを得ないケースも多々あろう。そういう節もなるべくならお客さんが、アプリケーションにデフォルトで付属しているプラグインで賄えるように押さえた方が良かろうし、新技術を使う場合にはごく最低限に押さえた方がお客のためであろう。プラグインをダウンロードしてまで見たり聞いたりしたくなるほど魅力のあるものを提示している場合でない限りは、相手にされないと思って間違いあるまい。

 さらに新技術を追い回すと内容が疎かになる法則、というのが存在するらしく、これはウェブであれ娑婆であれ、メディアを問わずに適用されているようだ。筆者の周りの事情で申し訳ないが、例えば雑誌などで良く取り上げられた、「新世代デジタルアニメーションの地平!!」がもたらしたものといえば、現在のところ虚ろな内容の隠蔽のそのまた隠蔽という構造に他ならない。新技術や過度な装飾で飾り立てたところで、伝えるべき内容を伴わないものなどに存在価値は無かろう。HPも同じことである。決して踊らされる事なかれ。

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以下近日予定かもしれないが、いい加減飽きてきた。
リクエストでもあればお聞かせ下さい。

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