2009年5月24日(日曜日)

時給298円



金曜日、東京大学の一室で開かれた「JAniCAシンポジウム2009」のに参加してきた。
JAniCAとは無限責任中間法人・日本アニメーター・演出協会のことで、アニメーターと演出、その応援者による団体である。私も会員の一人。
http://www.janica.jp/index.html

業界の至宝、井上俊之氏経由で、運営の中心となっている方から「閉会の挨拶」をお願いしたいという依頼があった。断るわけにも行くまい。
挨拶くらいなら気楽なものだが、しかし諸先輩をさしおいて何で今 敏?
ネームバリューを当てにするには役者が足りないだろうに。

「天下の東大」の構内に足を踏み入れたのは初めてのこと。
「おお!あれがかつて放水を浴びた建物か」
シンポジウムに使われる会場があるのはその隣の建物だった。
会場は、JAniCAの会員や業界関係者、マスコミや行政関係の方で盛況である。何よりまずJAniCAの存在感とその活動内容や意義をアピールするのが大事であろうから、盛況はそれだけでシンポジウムの成功といえるのではなかろうか。

シンポジウムの主な内容は、JAniCAが実施した大規模なアニメーター・演出のアンケート調査の結果発表、それを受けてのパネルディスカッションである。
アンケートはアニメーター・演出がどのような暮らし向きで、いかなる労働環境にあり、またそれらに対してどの程度の満足度なのか、といった内容である。
生憎、配付された資料を仕事場に忘れてきて手元にない。後日、当ブログでもその結果の一部をご紹介したいと思う。
記憶している範囲で、特に印象に残った数字が表題「時給298円」である。
これが、今回の調査結果から割り出された日本のアニメ業界における「動画職の時給」だそうだ。
豪快な数字だ。
いま、東京の街角にこんな貼り紙があったとしよう。
「アルバイト急募 時給298円」
誰も行かないよ、普通。
平成の日本、それも「注目されるコンテンツ産業!」などと称されるアニメ、その土台を支える人々の現実かと思うと、悲しいのやら滑稽なのやら。
当の動画職の人たちにとっては滑稽どころじゃないだろうが。
もっとも、そんなことは数字にされなくても分かっていたことではある。
ただ、その実態を具体的な数字で示された意義は大きい。
何しろ、しばらくは飲み屋の席の話題に重宝しそうだ。
冗談はともかく、客観性は大事である。

今回のアンケート調査の結果は、現場で働いている人間の実感とほぼ重なっており、むしろ「思ったほどひどくはない」というのが正直な感想だが、これまで漠然としていた仕事の環境や条件が具体的な数値によって裏打ちされたことで、業界人にとっても業界外に対しても環境改善のための説得力を持つことを期待したい。

アンケート調査の準備や回収、シンポジウムの運営にあたられた方々には感謝したいと思います。
本当にお疲れさまでした。

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