「千年女優」舞台版

演劇は数回程度しか見たことがなく、
正直、それほど興味のないジャンルでした。
ですから「千年女優」の舞台化も
ニュースは知っていても
情報を積極的に集めることはしませんでした。
きっとあの複雑な映像構成の「千年女優」が舞台になって
面白くなるわけがないと
上から目線な気分で疑っていからだと思います。

ですが今日、今敏さんのブログを読みましたところ、
>武蔵野市から大阪市北区角田町5-15へ。
とあり、
グーグルMAPで検索すると
劇場が近くの場所にあると判明し、
エイヤーと当日券を買いました。

たぶん
>武蔵野市から大阪市北区角田町5-15へ。
という書き方をしていただいていなければ、
「千年女優」の舞台を見ることもなく
普通の金曜日を過ごしていました。

>武蔵野市から大阪市北区角田町5-15へ。
という書き方をしていただき
ありがとうございます。
おかげで
「千年女優」の舞台を楽しむことができました。

「千年女優」舞台版も
まさに
「千年女優」でした。

「千年女優」舞台版を
上から目線な気分で疑っていた
己が恥ずかしいです。ごめんなさい。

たった5人の女優さんで
「千年女優」再現してしまっている事に驚きつつ、
休みなく動き回り
おそろしくたくさんある台詞を
暗記されている記憶力に驚きました。
女優さんたちの演技を見ていると
映画版の光景がよみがえり、
舞台版ならではのアドリブ展開にドキドキし、
役割がシャッフルされて混沌としていく様など
とても面白く楽しめました。

演出の末満さんや女優の方、照明、音響
その他の全てのスタッフの方々
楽しい時間ありがとうございました。

また
気さくにパンフレットに
サインしていただき、
今さんありがとうございます。

あと関係ないですけど
5人の女優さんの中では
松村里美さんが好みのタイプッス。

「千年女優」舞台版、僕も初日に観てきました。

映画版の「千代子がいろいろな人を演じる」という骨格が舞台版では「いろいろな人が千代子を演じる」という正反対の演出を得たことで、見事に奪胎換骨されていてとても楽しかったです。

「千代子という女優」を「5人の女優」がそれぞれに備え持った人間性をさらけだし、身体をしならせ、感情をうねらせて演じているのを観ていると、映画版のラストシーンでチープな自己愛や現実逃避ではなく、自分を愛することの意味を知った上で、そのことに責任を持って旅だっていった千代子の「ひたむきさ」を受け継いだ女優さん達による、「メビウスの輪の先にある映画版の続編」のようでもあり、「鑑賞者としてのそれぞれのAnswer」のようにも思えました。

開演前には頭の中がハテナマークでいっぱいだったのですが、「女性5人で千年女優」という無理難題がさまざまな知恵や工夫、そしてひたむきな思いによって再構築されていく様子を見ていると、終わる頃には「千年女優は女優5人だからこそ舞台化できた」と強く思ったほどでした。


頭の中でぼんやりと像を結ぶことはあれ、決して実在はしないと思っていた「千年女優」舞台版という鏡の向こうの左右反転した世界が、役者さんや演出家、舞台美術、照明、音響、衣装（衣装！）、素晴らしいスタッフワークにおいて眼前に立ち現れ、映画版と舞台版という合わせ鏡の中で、とめどなく心を揺さぶりかけてくる千代子にふたたび出会えたことが本当に嬉しかったです。

奇しくも阪神淡路大震災から15年目を迎える今日という日に神戸で立ち上げられた劇団によって地震が核となるストーリーが演じられるというのは、なにかとても奇妙な、それでいて強い縁を感じましたし、あの女優さん達の生きる様を見るにつけ、それが阪神間に住むものにとっては励ましのメッセージのようにも思えました。


終演後、本当に不義理でぶしつけながら監督に声をかけさせていただき、お話できたことに感謝しています。

平清盛の溲瓶や岩見重太郎の草鞋を買いあさるような間の抜けた日々を送っている僕にとって、お大名様とお話できたばかりか、この太鼓を300両で買ってくださるだなんてぇ、み、みず一杯ください………ふぅ。すいません。僕まで千年女優の中にとりこまれ、少し取り乱してしまいました。反省、半鐘。


長々と書いてしまいましたが、劇場でみなさんとしあわせな時間が共有できて本当にうれしかったです。

皆様、本当に千年女優舞台版を楽しんでおられるようで、観に行けない私としては、大変うらやましい限りです。
原作者の今監督をして「見なきゃ損する」とのことで、私は残念ながら損をしてしまったようです(笑)
監督にとっても多大なインスピレーションとなった縁ある劇団での舞台とのことですので、きっと様々な運命的な感動を生んだことと思います。
是非再演があることを願うと共に、3日間の舞台の成功をお祝いしたいと思います。