2008年11月16日(日曜日)

八日目オスロ



現在はすでに十日目、現地時間16日、朝9時過ぎ。
これからオスロの空港から、デンマークのコペンハーゲンを経由して東京へ戻る。
これが現地からの最後の更新。
以下、話は一昨日に戻る。

7時起床。
当然、夜明けはまだ遠い。
シャワーを浴びて身体を起動。
部屋には小さなキッチンが付いており、コーヒーメーカーも用意されている。
コーヒー豆は、スウェーデンで買っておいた。渡りに船である。
はて。しかし、コーヒーフィルターがない。
うちの者が得意の「工夫癖」を発揮し、ティッシュペーパーを重ね、フィルター代わりにしてドリップする。
たいへん美味い。ノープロブレム。
カフェインで脳も次第に起動する。
血糖値はホテルの朝食で上げることにする。
午前中に取材が一つ入っているのだ。

ホテルから歩いて2分もかからないところに、日本大使館があり、取材はここで行われる。
やあ、大使館の建物の中央には菊の御紋が輝いている。
大使館の中に入るなんて、初めてのことだ。
一歩踏み入れるとここは「日本」ということになるのであろう。
応接室で待つことしばし。しかし、取材者が取材場所を「大使館」と「大使公邸」を取り違えていたらしく30分ほど遅れてくるとのこと。喫煙所で煙草を美味しく肺に吸い込みながら、通訳を担当してくれるノルウェー人男性と雑談。奥さまは関西出身の日本人女性だそうで、彼はそのせいもあって標準語より関西弁の方が得意なのだそうだ。
ノルウェーで聞く関西弁も悪くない。

取材は「アフテンポステン紙」というノルウェーでは大手の新聞とのこと。
事前に質問をもらっていたので、答えるのも楽。しかも質問内容も「お馴染み」さんが多いので、通訳の負担にならないよう、言葉を選んで話す。
「なぜ実写ではなくアニメーションを選んだのか」
ああ、はいはい。
「なぜ夢と現実世界が混じり合うという題材を好むのか」
ああ、はいはい。
その他、日本において大人向けのシリアスなアニメが多いのは何故かといった質問や、監督作については主に『東京ゴッドファーザーズ』に関していくつか答える。
どの質問も初対面ではないので、特に返事に詰まることもなく、40分ほどで取材終了。外に出て、写真撮影。
これで今日の仕事は終わり。
ささやかな観光に出かける。

まずは車で「ヴィーゲラン公園(別名フログネル公園)」へ。
「るるぶ」によると、「彫刻家グスタフ・ヴィーゲランの彫刻200点を展示したフログネル公園。1921年、噴水と彫刻を制作したいと考えていたヴィーゲランに市が必要な敷地と材料を提供し、完成させた」のだそうだ。
公園へ向かう途中、段々と霧が濃くなってきた。
到着すると、公園は半ば霧に包まれており、ひどく幻想的な風景である。
おお、生憎の天気でよかった!
勇んでシャッターを切る。

濃い霧が覆い、幻想的なムードを漂わせる公園

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この「おこりんぼう」の像は有名らしい。
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121人の老若男女が絡み合う「モノリス」。なんだか「セントマッスル」を思い出すぞ。

車で市の中心部に戻って昼食。
イタリアン・レストランでパスタをいただく。
喫茶店で食べるパスタみたいだが、久しぶりのパスタなので美味しくいただく。
ただ、少々残念なことに、この国にはまだアルデンテという概念は輸入されていない様子。

市庁舎を見学する。
ヨーロッパ最大の油絵が展示されている1Fホールは、ノーベル平和賞の授賞式が行われるそうだ。
ノーベル賞はスウェーデンのものだが、平和賞だけはノルウェーで授賞式が開かれるらしい。
ノーベル平和賞って、アメリカのゴア元副大統領が『好都合なインチキ』だとかでもらったんだっけ?

国立美術館でノルウェーの画家ムンクの「叫び」を見る。
おお、叫んでる叫んでる。
他にも有名な「春」や「マドンナ」が展示されていたが、「思春期」に目を惹かれた。
太陽の恵みが少なく、寒さ厳しいノルウェーの気候の中では、不安や抑うつが描かれるのも納得できる気がする。
聞くところによると、ノルウェーも自殺や鬱病が多いという。
もっとも、ノルウェーにおける日本のイメージは「自殺が多い国」ということだそうだ。

美術館からオスロ唯一の繁華街といわれるカール・ヨハンス通りを歩き、高台にある王宮へ。
高台から見るオスロの街は実に小ぶりだ。
時間は15時半。すでに日没。
スーパーでビールを買って、一旦ホテルに引き上げて休憩。

夕食は日本料理の「味覚」。
キリンのラガービールで乾杯。
ノルウェーで飲むキリンビールはもちろん「輸入物」なので、随分値段が張るが、気にしない。
店内には石川さゆりの歌声がのびやかに流れている。
北国ノルウェーの、過度に日本のムードをたたえた店内に石川さゆりは似合いだ。
過度な日本のムードとは店内に下げられた、「侍」と書かれた提灯や、「情」の文字がくっきりと浮かび上がるスタンドのことだが、これも海外においては必要な「演出」なのであろう。
前菜に「焼き鳥」「揚げ出し豆腐」といった居酒屋メニューをオーダーし、それにノルウェーらしく「鯨のステーキ」をいただく。
ちょっと甘いが、生姜のきいたソースは懐かしい味だ。
日本同様、ノルウェーも捕鯨国。インチキなIWCに対して共闘しようじゃないか。
ま、多勢に無勢なので勝算はなかろうが。
よその文化を平気で踏みにじるような勢力には(かつての日本もそうだっただろうが)、せめて抵抗くらいはするべきであろう。
ビールばかりでは腹がいっぱいになるので、ワインに乗り換える。では、無難にシャブリをいただこう。
なす味噌を食べて、鳥の唐揚げをいただき、締めには肉うどん……のはずが、登場した肉うどんはそれまでの料理の量から予測されるイメージを覆す巨漢。うう、見ただけでげんなりするボリューム。
普通の日本人なら、これいっぱいだけで過剰に満腹しそうな量だ。
申し訳ないが麺だけをいただく。
うう、満腹。

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