2009年1月10日(土曜日)

年賀状越年・その2



元旦だからといって、特にすることはなく、来客も訪問もない。
お雑煮をいただいた後、年賀状作業再開。
いきなり絵を描くなんざ、こいつは春から縁起がいいわい。
作業のお供はもちろんウィスキーのロックと志ん生である。飲みながらの作業というのは実に快適である。
正月なのでジョニーウォーカーの「青ラベル」といきたいところだが、自宅でそうした上等な酒を飲んでしまうといざという時(どんな時だそれは)に高級感や特別な気分が失われてしまうので、最近の定番である「緑」である。「黒」よりも香りの刺激が強いのがいい。

書いていたら飲みたくなってきた(笑)
とはいえ、このテキストは会社の仕事場で息抜きとして書いているのでさっさと飲むというわけにもいかないのが残念だ。背後の棚には「金」が置いてあるのに。
っちゅうか仕事しろよ仕事をよ。
はい。

絵を描く、といっても清書が終われば後はPC作業である。
スキャンしておいた画像のゴミを取って、実線及び色トレス線の補正をする。これで下準備は終わりで、さて本番。
思わず「本番」と書いたが、最近では線画を描くことよりPC上での着色や合成の方が「絵を作り出している」という気がしてしまう。
紙に線を描くなどのアナログ作業は合成素材を準備しているようなもので、それはそれとして無論楽しい作業であるし熱中も集中も出来るのだが、意識のどこかで積み重ねてきた手業に対してこう思っている節がある。
「何だこんなもん」
そりゃあ、線で描く技というのはなかなかたいしたもので、それが好きで長年技術を重ねてきたつもりではあるし、いくばくかの自信や誇りもある。特に細かいものなどを描き上げたときなどは、しげしげと眺めてこうも思う。
「よく描いたもんだね、また」
自分の描いたものに感心してちゃ世話はないが、自分の技術についてもどこか他人事みたいに思えるのは「監督」という立場の好影響かもしれない。
他人が描いたものであれ自分で描いたものであれ、「監督」という立場から見ればどちらもチェックする対象という意味では同じである。

描き上げたばかりの時にはそれなりに達成感も高揚感もあるが、そんなものはすぐに立ち消える。どうせ「たかが素材」である。
この「たかが素材」をスキャンしてデジタルデータに変換すると、ますます描いたものが他人事のように思えてくる。
この「距離感」がデジタルの効用の一つであると私は思う。
共感しない人も多いかもしれない。そういう人が「手描きのあったかみ」などといった寝言を垂れ流すのかもしれないが、私の知ったこっちゃないや。
「たかが素材」という態度同様、「たかがデジタル」である。いずれもなきゃ困るが。
モニタに収まった線画は、それがどんなに手間暇をかけて描いたものであれ、醒めた目で見られる。そこがいい。
素材の良いところも悪いところも醒めた目で見られれば、そこから「演出」やアイディアを新たに考えられるもので、良いところは活かし宜しくないところは控えめになるように絵を演出する。
素材作成時にかけた手間暇の苦労を引きずっていると、自分の描いたものに振り回されないとも限らない。情や自己愛に溺れた絵は大嫌いである。
苦労した部分だからといって良い点とは限らないのだから、時にはそうした手間暇に対して愛のない仕打ちをする必要もある。
だから、一人で絵を描く作業をしていても、アナログからデジタルに作業が移行すると別な視点で見られるという利点がありがたい。
……たかが年賀画像のことで何を真面目に描いているのだ私は。

着色作業は別にどうということもない。
キャラクターの色は正式ではないがすでにイメージが固まっているのでそれに準ずる。牛も「十牛図」に従うと黒か白かである。この図において牛が象徴するのは「自己」であろうし、つまりは「無意識」の領域が大きいので、白よりも黒いイメージである。
ということで牛のベースカラーは黒であり、牛の模様みたいな感じで部分的にパーツを白くすればそれなりに様になるだろう。

まずは全体を仮色で塗りつぶす。あとで塗り漏れが発生しないようにするためである。
その後、色分けするパーツを選択してそれぞれの色に変換する。
メタリックなパーツは後の処理を考えて最初は暗めに設定しておく。

process03.jpg

影とハイライトの色面を作って、大雑把に調整レイヤーで色を変える。キャラクターと牛が同じコントラストでは少々難があるので、調整する。

process04.jpg

これでほとんど出来たようなものだ。
後はメタリックなパーツと全体に定番の処理を加えれば格好は付く。
しかし。あまりに簡単に出来てしまうと、それはそれで寂しいものである。
だって、志ん生を聞く時間が終わってしまうのだから。
単なる塗り分けでは物足りないので、牛の方に一手間加えることにして、メタリックな質感を手作業で加えてみる。

process05.jpg

その上でメタルパーツのみに処理を加える。この面積だけコピーして、それをぼかしてレイヤーを覆い焼きモードで重ねるだけだが、以下のようになる。

process06.jpg

これ以上、加えるべき手も思いつかないので、後は定番の処理を加える。別にどうという処理でもなく、完成画像をぼかしたものを上からオーバーレイで重ねるだけである。

process07.jpg

思いのほか色が沈んだので全体にレベル補正をかけて明るくしてコントラストを調整。
キャラクターと牛の分離が宜しくないので、牛の背が少し明るくなるようにグラデーション素材を重ねてライティングを調整する。
マッハバンドも出ている(解像度が低いので上の画像ではほとんど見えないが)。
牛に質感を加える際、安直なグラデーションをかけたので階調飛びによる縞模様(マッハバンド)が出てしまったのであろう。あまりこの手の単純な塗り分けの絵には使いたくないが、一番上に、これまた定番である「錆」のテクスチャを薄めに被せてマッハバンドを追い出す。
これで完成。

process08.jpg

後は年賀画像としての体裁を整えるべく、賀詞などを配置して終了。
正月の手慰みには格好の作業であった。
気がつけば、全48巻の志ん生全集も残り一枚になってしまった。
さて、次は何を清書しようかな。って、早くコンテ描けよ。

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