JAniCAによるアニメーター・演出の「2008年度 実態調査」、この「概要報告」から具体的な数字を紹介してみる。
この資料は、先日5月22日に行われたシンポジウムで配付されたものだ。
まず調査対象は、JAniCAの会員に限定されたものではなく、また業界での経験が1年以上のアニメーター・演出で、アンケートは無記名式による。
回答数は700ほど。
アニメ業界の実態調査の母数としては十分であろう。
順を追って見て行く。
まず男女比。
全体では男422:女286。
基本はやはり男社会なのだが、これが年代別に見ると面白い傾向が浮かび上がる。
−−−−−−男 女 構成比
10代 0 1
20代 146 186 44:56
30代 130 61 68:32
40代 117 28 81:19
50代 27 9 75:25
60代 2 1
20代では男女比が逆転しており、30代で女性の占める割合がグッと下がり、その後も大きく減少傾向にある。
20代の女性が多いのは個人的な実感とも重なる。
「経験年数満1年以上」が対象なので、10代はほとんど数のうちには入らないが、おそらく1年未満を含めると10代でも女性率がかなり高いのではないか。
30代で大きく女性がその比率を下げるのは、離職による面も大きいのかもしれないが、近年になるほどアニメーション業界に入ってくる女性が増加したという、単純な理由もあるかもしれない。
お次は既婚率。
男・既婚 15.1%
男・未婚 44.7%
女・既婚 6.2%
女・未婚 34%
男女ともに未婚率が圧倒的に多い。
経済状況による面も大きいのだろうが、結婚生活に予想される煩わしさにネガティブな反応をする人が多いのかもしれない。
業界人の多く、特に作画、背景、演出は「趣味が高じた」タイプだろうから、「一般的に推奨される生活」より自分の趣味のフィールドに積極的に閉じこもりたい傾向にあるように感じられる。
既婚者のうち、子供の有無は極端な傾向にある。
子供・有 11.2%(回答数81)
子供・無 88.8%(回答数640)
かつて、もう20年ほど前のことだろうか、DINKS(ダブルインカムノーキッズ)なんて夫婦のスタイルがもてはやされたことがあるが、世間の流行に鈍感なアニメ業界なのでいまだにそのブームが続いているということだろうか。
まさかね。
意図的な選択というよりは、既婚率の低さ同様に惰性の威力が大きいのではないか。
これも経済的な理由が大きく影響しているかもしれないが、結婚しても自分の「仕事(趣味の濃度が高い)」に比重の大半を置いている人が多いのがこの業界。
調査の数字からは分からないが、既婚者の多くは「職場結婚」というか同業者同士のカップルが多いと思われる。個人的な印象では、既婚者の大半が同業者や業界人の組み合わせである。
夫婦共に原画マンというケースがすぐにいく組か思い起こされるし、原画マンと動画チェッカーあるいは動画マン、原画マンと色彩設計といった組み合わせの夫婦が思い浮かぶ。少し変わったところでは奥さんが声優さんという知り合いもいる。
同業者同士でないと、この仕事に対する理解は難しいはずだ。
一般のサラリーマンやOLにとっては、不規則で長時間、休日が少ないこの仕事はほとんど信じがたい労働状況に見えることだろう。
あまり家に帰らない亭主にこう思う妻がいても全然不思議ではない。
「ねぇ、本当に仕事で帰れないの? もしかして……(怒)」
そうじゃないんですよ、奥さん。
むしろ、逆のパターンの方が多いかもしれない。
こんな彼氏彼女が想像される。
女「ごめんね、カッティングが迫っているから週末もちょっと会えない」
男「本当に仕事なのかよ(妬)」
男の嫉妬は厄介だぞ、娘さん。
異業種の人との交際、ましてや結婚は難しいはずだ。
だいたい、知り合う機会がほとんどないし。
「生活満足度」はこのような結果になっている。
十分に満足している 1.9%
満足している 10.3%
普通 25.5%
多少の不満がある 43.7%
大変不満がある 18.5%
これだけ見ると、「一般的にそんなもんじゃないの?」という気もするが、国民全体との比較をするとそのギャップが歴然としている。
(※国民全体の数字は、平成20年度の内閣府による世論調査報告書による)
−−−−−−−−−満足 普通 不満
国民全体 60.4 1.2 38.4
アニメーター 12.2 25.5 62.2
満足と不満の率が見事に逆転している。
あなたならどこに入りますか?
ちなみに私ならこんなところ。
「申し訳ないほど満足している」
ま、いまのうちだけかもしれないけど。
以下、次号。