2009年2月10日(火曜日)

千代子讃江・その15



昨日はソニーさんのご招待で、浅草へ。
知る人ぞ知る、野鳥料理の「鷹匠 寿」で鴨料理をいただいた。
何でもこの店は紹介でしか予約を取らないらしく、一見さんお断りの老舗なのだそうだ。しかも、たいへん人気のある店のようで、予約解禁となる日から2〜3日後に予約を入れたというのに、取れたのは昨日の2月9日。4ヶ月待ち。
たいへんな店である。
予約するだけでもたいへんな店だが、お値段もたいへんな店らしい。無論、その分美味いのである。
そんな贅沢な店にもかかわらず、二度目の「寿」体験である。
やはりスポンサー様のおかげで、去年3月末に初めてこの店で鴨を楽しませてもらった。
当時の日誌から引用する。

「雨がひどくなる中、浅草「鷹匠 寿」へ。内田(勝)さん始め、ソニーさん一行がお待ちである。シャンパンで乾杯し、料理を楽しむ。
何を食べても美味い。
シャモの鳥わさ、びっくりするほど柔らかい砂肝、絶品のレバー、雀の姿焼き、素揚げのような唐揚げ、そして鴨(合鴨ではなく青首)のすき焼き。すき焼きと言っても牛のすき焼きのような汁があるわけではなく、関西でいうところの「すき」(関東だと鍬)の上で焼いてもらうのである。職人技のような焼き方である。
ほどよく焼いてもらった鴨肉を大根おろしでいただく。これが絶品。
これまでに食べたことのないような肉。合鴨とは全然違う味と食感。
さらに鴨のぞうすい。これがまた美味い。
話も忘れて食べるほどに美味しいコースであった。」

この時は、日誌中にもあるとおりソニーピクチャーズさんの顧問であり、かつて週刊「少年マガジン」の黄金時代を築いた名編集長、内田勝さんに案内してもらっての「寿」であった。
ニコニコとお話しされていた内田さん。その二月後の6月1日、訃報に接するとは夢にも思わなかった。

昨日は、ソニーさんチームとマッドさんチームで、新年の挨拶と内田さんを偲ぶ会を兼ねた「寿」であった。
この店は、お酒の持ち込みが可能で、ソニーさんが用意してくれたモエ・エ・シャンドンのロゼとカリフォルニアのシルバーオークで鴨料理をいただきつつ、内田さんの話から、プロデューサーと芸能、志ん生から芸談、それに舞台版『千年女優』と話題を転じて花を咲かせる。
きっと内田さんもお座敷に来ておられて、ニコニコと話を聞かれていたに違いない。
合掌。

さて、いつまで続けられるのか「千代子讃江」第15回。
昨日のブログでネタだけ振った、トークショウ。
トークショウ全5回は、ありがたいことに多くのお客さんに残って見ていただいたおかげで、出演者としてもたいへん気分良くお話しすることが出来た。いずれの回も8割以上、席が埋まっていたのではないかと思われる。
各回には、それぞれ「お題」が設定されていた。
確か、
「アニメから見た演劇、演劇から見たアニメ」
「私の好きな『千年女優』の1シーン」
「和田俊輔さんを迎えて音楽のこと」
「私の好きな『千年女優』のキャラクター」
「舞台版『千年女優』総括」
であったろうか。
話した内容は、概ねこの「千代子讃江」シリーズで記してきたようなことである。
「好きな1シーン」といえば、何回か前に記したとおり結婚後の千代子が掃除機をかけているシーンなのだが、舞台版との関連に話を展開しづらいので、ここでは戦後の焼け跡で蔵に残された絵を発見するシーンを上げておいた。

「好きなキャラクター」と言われても、末満さん同様、私も別に千代子が好き、というわけではないし、キャラクターよりも人物が置かれたシチュエーションに感情移入してしまう方なので、特に思い入れが強いキャラクターがいるわけではないが、強いて言えば立花ということになろうか。
まあ、立花にしろ千代子にしろ、好きなものを追いかけることに対する情熱は同じように強いものだ。
ただ、世間知という「常識」がブレーキとして働いてしまうかどうかが、仕事における実績の大小を分けたのであろうと私は想像している。
千代子のようなブレーキが故障している人間に憧れつつも、非常識なまでには仕事に徹しきれない(ことが多かったであろう)立花のような人間には共感する。

トークショウは各回TAKE IT EASY!メンバー二人によってナビゲートされたが、約90分の本番を役者として務めた後、5分おいて司会をする。肉体的にも、精神的にもモードを変更するのはさぞや負担であったと推察される。実際、ナビゲートについては「グダグダ」になっていたとは、ご本人たちの弁だが、人使いの荒い劇団であることだよ(笑)
最終回のトークショウは、全メンバー総出演で賑やかな舞台となる。
これが最後の出番であり、舞台版『千年女優』大阪公演が満員のうちに無事終了したという高揚感が大いに手伝って、私は「余計な真似」をしてみたくなった。舞台裏の通路に、舞台で使われていた「井田のメガネ」が数本置かれていたので、その一つをかけて登壇してみた。悪ふざけのようで申し訳ない。
さらには末満さんが「立花の帽子」をかぶって、冗談にお付き合いしてもらい、よけいにお世話をかけてしまった。
私がかけた「井田メガネ」はツルの部分が破損したらしく、本体と同じ白色のビニールテープで補強され、ツルをたたむことは不可能になっていた。
こんなところにも舞台の過酷さを見たような気がする。
女優さんたちはさらに過酷であったろうし、本番3日間の間にも次々と増えていく「痣」に驚いたものである。
「いつ(痣が)出来たのか分からない」
役者さんたちはそう仰っていたし、
「本番になると痛みを忘れる」
とも口にされていた。
泣けそうになった。

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