2009年2月25日(水曜日)

千代子讃江・その20(最終回)



昨日、仕事仲間からこんなページを教えてもらった。
どうやら去年の11月に北欧を回ったときの、ヘルシンキでのイベントの模様をレポートしたものである。
これがなかなか味のある絵で微笑ましい。
今 敏がなんだかとても「いい人」に描かれているのが嬉しいぞ。
http://aimel.sarjakuvablogit.c……toshi-kon/
もう一つ、こんなのも。
http://www.premiere.fr/Bandes-……Kon-dessin
これは、多分『パプリカ』のプロモーションでパリに行ったとき、2006年のものと思われる。
自分で見る気はしないが、興味のある方は御覧ください。

さてさてさて。
長々と記してきた「千代子讃江」も、書き漏らしたことは多々あれど、そろそろ送り出さねばならない。

1月18日、日曜の夜、舞台版『千年女優』公演はすべて終了する。
舞台は解体され撤収が始まる。
さよならロヲタス。
邪魔していてはいけないので、22時からの「打ち上げ」まで東京組4人(アニメーターの鈴木さん、マッドハウス・プロデューサーH氏、そして家内と私)は鉄板焼き屋でしばし歓談する。
飛び込みで入った割には悪くないが、しかし冷えてないシャンパンを平気で出すのはまったくもっていただけない。

この度の大阪行でヒットだった食べ物といえば、「揚子江」のラーメンである。
ウェブで画像を見つけたので紹介しておこう。
http://kamora.sblo.jp/article/……08966.html
鈴木さん御推薦の店で、お世辞にもきれいとはいえない外観の、カウンターばかりのたいへん庶民フレンドリーな店だが、ここのラーメンは実に美味しかった。
不思議な塩味である。平べったい皿に、うす味のスープに細めん。食べ飽きしない感じの味がたいへん嬉しい。何よりこの店、「ラーメン!」の「ラー」といったら「はい」てなもんで、もう目の前にラーメンが差し出されているくらい素早い反応である。
あんまり気に入ったので、土曜日曜と二日も続けて通ってしまった。
小さめの餃子を前菜にして昼間からビールを飲み、締めにさっぱりした塩ラーメン、てのはなかなか乙であった。

居酒屋「ぽんと」の大広間で、盛大な打ち上げである。
多くのテーブルを囲む関係者の顔はいずれも晴れ晴れとしている。
「乾杯!」
何と甘美な言葉か。決してチンピラ歌手の歌なんか思い出さないでいただきたい。
「お疲れさまでした!」
ジョッキのふれあう音とともに交わされるその言葉には、日常的な儀礼ではない実感が込められている。
心の底から自然と浮かび上がる「お疲れさま」の響きは実に気分がいい。

宴も賑やかとなりかけると、演出の末満さんが前に出て、各人に素敵な贈り物を一人ずつ手渡してくれた。
「大入袋」である。
これが実に素敵な心遣いで、演劇界一般の伝統なのか、彼ら周辺の習慣なのか分からないが、是非真似をしたいと思うような習わしである。
私がいただいた物をお目にかける。

ooiri.jpg

大入り袋は原作者だけでなく、マッドハウスとして窓口になってくれたH氏、それに仕事としては関係のない鈴木さんや家内にも手渡される。つまりは打ち上げの場にいた人みんなに渡されるものなのであろう。

しかも、一人ずつ職種や立場が紹介されて名前を呼ばれ、さらには一言ずつ末満さんからの「寸評」というか「感想」が告げられる。
たとえばこんな。
「何でここまで協力してくれるのか(笑)というほど良くしていただいた原作者」
といったような。
呼ばれたものは前に出て皆に顔を見せることになるので、宴会の場における知らぬ顔同士をつなぐ人物紹介にもなっている。
大入り袋の画像を御覧いただけばお分かりになるだろうが、「祝 動員800超」とあるように当日の情報が記されている。いうことは、公演終了後にプリントアウトされたものである。一人ずつ名前を書くだけでも手間がかかるだろうに、わずかな間に小型のプリンタでせっせと出力したのであろう。小型のプリンタは、トークショウでの抽選番号をプリントするのにも活躍していたさまを目にしている。
何てまめなんだろう。
関わる個々人の心配りも大きいとは思うが、印象としては「場」に伝えられてきている伝統のようなものが感じられる。
うちの業界や身の回りを振り返って考えてしまう。
「……やれやれ」
大入り袋の中味は5円(御縁)が入っているだけだが、けっこうな人数分の5円玉をあらかじめ用意する手間もあろうし、何より大入り袋そのものが嬉しい贈り物ではないか。

宴会はたいへんな盛り上がりととも打ち上がった。
有志は二次会へ、ということで、我々も仲間に混ぜらもらい、確か「酔虎伝」というチェーン系の居酒屋に落ち着く。この時でもまだテーブルにして4〜5つ分くらいの人間が残っていたと記憶している。
ここでもあれこれと舞台版『千年女優』にまつわる話題がお酒とともに深まったのだが、酔った私の目の前になぜかパプリカの顔が差し出された。
「?なぜここに『パプリカ』のブルーレイが?」
この居酒屋の店員さんが、今 敏監督アニメーションをご贔屓にしてくれている方だったようで、監督と認識してサインをしてもらいたいとのこと。
しかも、わざわざこの深夜に近所までブルーレイを買いに行ったとか。
なんて、ありがたくも礼儀正しい人なんだろう。
酔った頭なりに千代子からパプリカにモードをシフトしてサインさせていただく。
本当にどうもありがとう、店員さん。

この店には結局、朝方4時過ぎまでいたろうか。
当日の日誌から引用する。
「舞台を支えたすべてのスタッフ、演出の末満さん、そして痣をたくさん作って最後まで走り抜いた女優さんたちに心から「お疲れさまでした」。
ぐだぐだになってホテルに引き上げて、勢いよく寝る。ああ、深い満足感。」

「勢いよく」寝るという表現がアルコールと満足度の深さを表しているではないか。
明けて1月19日、月曜日。
11時に起きると、今朝方まで飲んでいた酒がしっかりと残っているので、入浴して残留アルコールの排出に努める。
12時を20分ほど回ったところでチェックアウトすると、フロントに蓬莱の「豚まん20個」が届けられている。アートカレッジ神戸広報課長からのお土産である。
どうもありがとう。私の大好物である。
しかし、重いな。豚まん20個。
新幹線の中で睡魔に出会い、気がつけば東京。
出社して、さて仕事。
と、思ったのだがさして手に付かず、仕事仲間と近所の店で美味しいものを食べながら舞台版『千年女優』談義となる。さらに仕事場に引き上げて、さらにロヲタスの話題に花を咲かせ笑いを浮かべ、結局、終電過ぎまで話し込んでタクシーで帰宅する。
舞台版『千年女優』の勢いはまだ止まらない。
何せ、これだけの勢いである。
酔った頭の考えることは怖ろしいものである。
「あれだけ面白かった舞台の原作だからきっと面白いに違いない」
いまとなってはよしゃあいいのにと思うのだが、こんな暴挙に出た。
プレイヤーに『千年女優』DVDを押し込む。ひえぇ。
そして、一時間半の後。
「うん!やっぱり楽しめないや」

残念ながら「娘の千代子」と穏やかに対面することは叶わなかったが、「孫の千代子」にはきっとまた楽しく再会できることであろう。
では、この長きに渡る「千代子讃江」の締めくくりに、千代子の台詞を借りてこう記しておこう。
「必ず逢いに行きます!愛知まで」

とりあえず、私はチケットを確保したぞ。

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TAKE IT EASY!× 末満健一「千年女優」

愛知公演 2009年5月2日(土)〜4日(月・祝)
演劇博覧会「カラフル3」参加
公演会場:長久手文化の家
詳細はコチラ→「カラフル3」ホームページ   http://colorful3.jp/index.php

※ 「カラフル」とは、ショーケーススタイルによる演劇フェスティバルです。全国より25カンパニーが愛知に結集します。この公演はTAKE IT EASY!の単独公演ではなくショーケースイベントですので、上演時間に「1 時間以内」という時間的な制限があります。大阪の公演を短縮してダイジェストでお送りする予定です。

TAKE IT EASY!さんのウェブサイトはこちらです。
http://www.tekuiji.com/index.html

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