2008年5月30日(金曜日)

1勝2敗



火曜日はレギュラーのムサビ映像学科ゼミ。
毎度雑談が長くなるが、学生たちには雑談からこそ「考え方」の断片を拾い集めて欲しいものである。どの断片を拾って組み立てるかは人それぞれ。
学問としては少々無責任な伝え方だとも思うし、もう少し体系立てて準備をした方がいいとは思いつつも、私もそうやって学んできたし、それはそれでたいへんけっこうなことだったと思っている。
私にとってもっとも勉強になった雑談の場所は飲み屋である。飲み屋でなくても酒とともに必要なことは摂取してきた。ということで、ゼミ生たちとそういう「場」を作ってみることにした。
つまりは一緒に飲む、と。
課外ゼミは鷹の台駅前商店街にある「風神亭」。17時半の開店早々陣取って10名ほどで歓談。
映画からアニメから学校や業界話まで交えてたいへん楽しい時間を過ごさせてもらう。
ゼミが毎度飲み屋でだったらいいのに(笑)

最近、ゼミ生たちや制作スタッフと映画の話をする機会が多いせいか、映画を見るのがやけに楽しい。たいへんいい刺激になっている。
とても面白い映画とガッカリした映画とものすごく腹立たしい映画を見た。
見た順で書くと不愉快になるので、腹立たしいほうから。
先日買ったDVD『STOMPの愛しの掃除機』を見たら、あまりに何もなくて腹が立った。うちのテレビじゃなければ破壊したくなるほどだった。
どう間違って作ったところでそれなりの見世物になるはずのものが何にもなっていない。ウソだろ?
「STOMP」はイギリスのストリート生まれのパフォーマンスで、ゴミバケツやデッキブラシ、新聞紙や掃除機など、身の回りのものでリズムを作り出す。そのパフォーマンスは時に強烈で時にユーモアに溢れている。
日本のCMでも使われていたし、長編アニメーション『ベルヴィル・ランデブー』でも「まんま」取り入れられていたのでご存知の方も多かろう。
私は5年ほど前にニューヨークのオフ・ブロードウェイで公演を「体験」した。セリフは一切ないので100パーセント楽しめた。打ち鳴らされる「打楽器」の震動が場内を震わせ、痺れるほどの体験であった。客席の子どもたちが異様にテンションが上がっていたのも印象的だった。子どもでも、というより子どもの方がなおのこと楽しめるのかもしれない。
そんな「誰が見ても楽しい」パフォーマンスを大々的に取り入れていながら、映画『STOMPの愛しの掃除機』は「誰が見ても面白くない」といってもいいほど面白くない。こうしてキーボードを叩いていても怒りが甦ってくる。
どんなにつまらない映画だって私はそんなことを書いたりしない。しかし、さすがにこれには腹が立った。折角のいいものがなぜこんなことになってしまうのか。義憤に近い思いだ。
一体、この映画は何を見せようとしているのだろう。
「つまらないストーリーなんかどうでもいいんだよ、STOMPのパフォーマンスをもっと見せなさい!」
感想はそれだけだ。
金銭もさることながら時間がもったいなかった。何より素晴らしいものをダメにしか出来ない「作り」に腹が立った。

『バタフライ・エフェクト2』も見る。これは貰ったDVDである。晩酌のお供にしてみた。
一作目の『バタフライ・エフェクト』は、制作者の才気溢れる映画だった。見ている最中、素直にこう思った。
「これ、どうやって終わるんだ?」
お話がどう転がっていくのか予想がつかないと、ドキドキする。スリルやサスペンスによって「ハラハラドキドキ」することはあるが、しかしたいていは先の読める「ハラハラドキドキ」である。
「どうせ主人公が死ぬことはない」
そう思って見ているから、安心しながら「ハラハラドキドキ」するものだが、『バタフライ・エフェクト』は安心できない「ハラハラドキドキ」であり、その分、先の展開が気になるし最後まで「どうなるのか」が楽しめる映画だった。
そして『2』だが、これはある意味「昔ながらの『2』らしい」映画といえようか。ガッカリした、というより「多分そうなんじゃないか」と思っていたが、それ以上に一作目の遺伝子が薄くなっている。この映画こそ、企画や脚本の時点に立ち戻って、「あったかもしれない別の可能性を選択」して欲しかった。

とても面白かった映画は『ショーン・オブ・ザ・デッド』。プロデューサーのMくんからDVDを借りた。
これは面白い。大笑い。実に愉快なゾンビ映画だった。
これも町山智浩さんのポッドキャスト『アメリカ映画特電』、「第30回 『ホット・ファズ』は田舎の駐在さん版ダイ・ハード! 」で紹介されていて、以来是非見たいと思っていた。
Amazonの商品説明によると、「英国産のホラー・ロマコメ。ゾンビのようにドンヨリとした表情で通勤する人々を描くなど、英国らしいシニカルな風刺がタップリ詰まった作品」
ユーモア溢れるゾンビやゾンビ撃退の描写が何より笑えるが、主人公の成長物語という体裁がきちんと整っているところが気持ちよい。西洋の成長物語はやはり何と言っても「父殺し」が必要であろうし(象徴的な意味での「父殺し」だが、この映画においては必ずしも象徴的ではないし(笑)、「母殺し」まで盛り込まれている)、神話には定番の「ドラゴン(=ゾンビ)退治」がなければ「美女の獲得」はないのである。
ゾンビ映画のパロディであっても、基本的な構造が抑えられているのでパロディに終わらない、独立した一本の映画になっている。
監督のエドガー・ライト 、主演のサイモン・ペグのコンビによる新作『ホット・ファズ』がいよいよもって楽しみである。

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