2008年5月28日(水曜日)

先週の雑食



ブログの更新が滞っている。
新作のシナリオのことで余裕が失われているのであろう。
その割に、先週はわずかな時間を見つけてはまめに読書をしたり映画を見たりするようにしていた。どうやら脳が刺激と知識を求めているらしい。
先週はDVDを6枚ほど購入。
近頃は新作でなければ値段も安く気軽に買える。新作でも映画館に見に行くことを考えると高くはない。
先日見た『ロイ・ビーン』のシナリオがジョン・ミリアスだったということで、そのミリアスつながりで『若き勇者たち』(監督ジョン・ミリアス 1984)を見返したいと思っていた。
セール品で出ていた同作を発見。スクィーズ版ではないところを見ると随分古くにリリースされたものだろうか。
私はDVDも本も、どうも「一枚だけ」「一冊だけ」という買い方が出来ない。必ず複数を買わないと気が済まない。欲しいものが複数見つからないときは、欲しい一つさえ棚に戻すことがある。一体、どういう性分なんだろう。
買うべき一枚が見つかったら、「相方」を探す。この日は他に『ショートカッツ』『恐怖の報酬』『スラップショット』、未見のものでは『STOMPの愛しの掃除機』、新作も一枚くらいということで『パンズ・ラビリンス』。
ロバート・アルトマン監督の『ショートカッツ』はDVDがリリースされていたのを知らなかった。ずっと見返したいと思っていたのでたいへん嬉しい。
『サイレント・ランニング』も探していたのだが見つからず、他の店でようやく見つける。
買うばかりで見ないのでは勿体ないので、早速『若き勇者たち』を見てみる。
シナリオの都合で少々「戦争」(というか戦闘)の気分を味わいたかったのである。ソ連とキューバの共産軍がいきなりアメリカに侵略、田舎の高校生たちが山にこもってゲリラ戦を繰り広げるという「ムチャクチャ」な映画だが、懐かしさもあって楽しめる。

翌日は、先週購入しておいた『愛が微笑むとき』(1993)を見る。ひどい邦題だが、中味はたいへんよくできた映画だ。原題は『Heart and Souls』。以前、ケーブルテレビでかかっていたのをたまたま見始めたら、面白くて最後まで見てしまった。4人のゴーストが、それぞれ生前に果たせなかった思いを、一人の青年の肉体を借りて成就しようというファンタジー。
こんな言葉を使うのは恥ずかしいが、いわば「ハートフルファンタスティックコメディ」といったところ。名作『天国から来たチャンピオン』『キスミー・グッバイ』と同じ系列に属することになろうか。
オリジナルのシネスコサイズで見るのは初めて。同じ画面に、主人公の青年と彼に取り憑いている4人が入り込むことが多いが、シネスコ画面を上手く使って収めている。監督は『トレマーズ』のロン・アンダーウッド。ベタつかない演出が心地よい。たいへんいい映画であった。
『サイレント・ランニング』(監督ダグラス・トランブル・1972)は、映画としてはあまり面白いものではないが、やはりアイディアが魅力的。宇宙に浮かぶバイオスフィアみたいな空間で一体のロボットがずーっと植物を育て続ける……ラストシーンが印象的である。
一緒に見ていた家内曰く。
「これって、『天上の城ラピュタ』だ!」
「天空」だってば(笑)

ケーブルテレビでかかっていた『バベル』(監督アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ・2006)も見る。う〜ん……くどい。映像の文体が私にとってはあまりにくどい、くどすぎる。じっくり描くというよりは、キレが悪くぐずぐずと長いように思える。無駄と思えるカットも多く、途中ですっかり飽きてしまった。
個々のエピソードも、一つ一つ見ればそうでもないのだが、無理が気になる。タイトルの通り「言葉が通じない」ことによって生まれる悲劇、そのプロセスに少々無理があるのではないか。一つずつならそれほど大きな無理ではないのかもしれないが、それらの蓄積がリアリティを遠ざけてしまうように感じられる。
特に日本が舞台となるエピソードに全然リアリティが感じられなかったせいもあり、他のエピソードも同様なのではないかと思えてくる。世界各所でのエピソードが相互に少しずつ関係しているという考え方はたいへん面白いので(『ショートカッツ』を連想させる)、残念である。

先週読んだ本は『グリム童話集2−完訳版』『読書力』『鼓笛隊の襲来』『子どもの社会力』『思春期をめぐる冒険−心理療法と村上春樹の世界』『グリム童話の世界−ヨーロッパ文化の深層へ』『髑髏城の七人』『聖書の論理が地球を動かす』。
ムサビのゼミ生たちが、あまり本を読まないということだったので「読書についての本」を探していた。『部下の仕事はなぜ遅いのか』(日垣隆・著)の中で『読書力』が紹介されていたので読んでみる。ついでに火曜日のゼミでも紹介する。
『鼓笛隊の襲来』(三崎亜記・著)は私のセレクトではなく、仕事仲間からのご紹介。
「(古本屋に)売っちゃいますけど、読みます?」
ということで借りて一時間ほどで読み終わる。「不思議テイスト」の短編集。2本ほどなかなか面白いものがあるが、私にはどうも「アルコールが薄い」。

木曜からレギュラーの神戸出張があり、お供に『思春期をめぐる冒険−心理療法と村上春樹の世界』(岩宮恵子・著 新潮文庫)と『グリム童話の世界−ヨーロッパ文化の深層へ』(高橋義人・著 岩波新書)の2冊。旅の供には持ち歩くのに負担が少ない文庫や新書が望ましい。
心理療法家の著者が、実際の治療現場と村上春樹の著作を対照させながら読み解く『思春期をめぐる冒険−心理療法と村上春樹の世界』。たいへん面白い。小説の解釈も興味深いが、紹介される心理療法の実例がこれまた劇的である。
アートカレッジ神戸の生徒やムサビのゼミ生たち、思春期の若者(といっても良かろう)と接することが多いので、あれこれ考えさせられる。
アートカレッジ神戸アニメ学科1年生が提出してきた課題には、濃厚に無意識が表出していると思われるアイディアや画像も多く、ちょうどこの本を読んでいたので尚のことハッとさせられる。

先々週『ディズニーの魔法』という、ディズニー長編とその原作を対比させた読み解きが面白かったので、『グリム童話の世界−ヨーロッパ文化の深層へ』も興味深く読む。メルヘンの背後に沈んでいる神話的紀元やキリスト教によって変形させられた土着の信仰、グリムが加えたであろう改作部分の推理や検証が面白い。

帰りの新幹線で読むものがなくなってしまったので、新神戸の売店で中島かずきの『髑髏城の七人』(講談社文庫)を買う。10年程前くらいに劇団☆新感線の公演(芳本美代子がヒロインだったはず)も一度見ており、ビデオも持っている。
ストーリーはすっかり忘れていたので、物語も再度楽しめる。随所に慶一郎へのリスペクトを感じる。残念ながら見ていないが劇団☆新感線で慶一郎の名作『吉原御免状』も舞台化したと聞いているので、よほどお好きなのだろう。私も一昨年だったか一時期、慶一郎をまとめて読んだ。『吉原御免状』『かくれさと苦界行』はそれ以前に読んでいたが、改めて読み直し、他の未完の作品も含めて、すべて読んだ。『鬼麿斬人剣』がたいへん印象的であった。Wikipediaによると、この作品はテレビドラマ化、漫画化もされているとのことだが、アニメーションにも向いていると思われるので、是非どなたか上手な人がアニメ化すればかなり良いものになるのではなかろうか。

『聖書の論理が地球を動かす』(鹿嶋春平太・著 新潮選書)も面白く読む。「BOOK」データベースによると「日本はなぜ孤立するのか。西洋の行動原理の底流をなす聖書の論理体系。日本人のキリスト教理解をくつがえす驚異の書」ということだが、私は序章と帯の文句に惹かれて購入した。序章「不可解をたどれば聖書の論理」。たいへん魅力的である。帯には「ナットク出来なくても「理解」はしよう」の文句。確かにその通り。読んでいると思い当たる節が多くて興味深い。序章のタイトルの通り、どうにも不可解・理不尽に思える諸々の背景が少しだけでも分かったような気がするが、何より感じたのは次のようなこと。
「日本人で良かった」

娯楽のことより仕事の方はどうなのか。いや、上記の映画も本も別に単なる娯楽として読んでいるわけでもなく、抱えている仕事の直接的な資料というわけではないが、「側面支援」の意味がある。はず。
そのおかげかどうかはともかく、週いっぱいで新作のシナリオの一稿がほぼ終了。このテキストを週明けにシナリオ形式にして、なんとか脱稿した。
さあ、これから直しだ。

トラックバック・ピンバックはありません

トラックバック / ピンバックは現在受け付けていません。

現在コメントは受け付けていません。