2008年6月8日(日曜日)

この一週間



特に書きたいようなこともないので更新がとぎれている。

先週の日曜日はこの本で笑わせてもらった。
『「ニッポン社会」入門 英国人記者の抱腹レポート』コリン・ジョイス 著・谷岡健彦 訳(生活人新書-NHK出版/¥700+税)
日本の「当たり前」を再認識させてくれながら、大いに笑わせてくれる一冊。
帯の表には「日本で暮らすならこれだけは覚えておこう」という項目が列挙されている。
「歌舞伎は歌舞伎町ではやっていない」
「「納豆は平気ですか」と30回は聞かれる」
「電車が遅れていると思う前に、君の時計を疑え」……
帯裏には「こうなれば君は、日本で暮らしていける」として、
「電話を切るとき、思わずお辞儀をしてしまう」
「ゴミの分別に、異常に執着してしまう」
「シャツにプリントされたヘンな英語を読まなくなる」
「マスクを着けた人と笑わずに会話できるようになる」
「居酒屋で「お通し」が出てくると、ホッとする」……
日本人はそれが日本人や外国人が書いたものであろうと「日本人論」を好むそうだが、自国民について語ること語られることにそれほど熱心なのは日本人くらいだとも聞いたことがある。
「他の人からはどう見えるのか」を気にする文化は、それを気にしない文化より危険は少ないと思う。

夜は、プロデューサーから借りて、DVDで劇団☆新感線『吉原御免状』を見る。新感線のイメージからすると、笑いがほとんどなかったのは意外だったが、これは慶一郎の原作イメージを尊重したためであろうか。
たいへん豪華な舞台で面白く見る。何よりセットが素晴らしく、場面転換一つも大きな見せ物になっている。
話はたいへん原作に忠実なようで、原作終盤の決闘は割愛されているが、全体のボリュームや話の煩雑さを考えると、良い判断に思われる。

この日、入浴中に内田勝さんの訃報を知る。ちょうど、冒頭に紹介した本に笑いながら湯船に浸かっていたときに、家内から知らされた。
「笑い」のモードが突然の不幸の知らせによってキャンセルされたせいか、意識が変に「平衡状態」になってしまい、ぼんやりとした反応しか出来なくなってしまった。
悲しいのは勿論悲しいし、驚きもするのだが、かねてから肺癌だったことは知っていたので、近い将来「そういうこと」もあるかもしれないとは思っていたせいもあるだろう。
3月にお会いして、浅草で美味しい野鳥料理をいただいたときのお声や笑顔がありありと浮かぶ一方で、その内田さんがお亡くなりになったということがどうもうまく認識出来ない。

月曜日、期限切れになったパスポートを申請しに立川に行ったついでに、お通夜に来て行くYシャツを買う。「御霊前」やYシャツを準備したり、お通夜のある斎場への経路を確認しながらも、それらが内田さんとどうにも結びつかない。まるで実感がない。

火曜日、レギュラーのムサビのゼミへ。家を出るのが遅くなり、雨ということもあって、楽して国分寺からタクシーを使う。
ゼミでは主に映画ネタを中心に雑談風にあれこれ喋り、後半は卒業制作の様子を話してもらう。
ゼミ修了後、トイレで着替えてお通夜へ。ムサビの最寄り駅である西武国分寺線「鷹の台」から、西武線を乗り継いで池袋線「江古田」まで。予定より30分も早く着いたので、駅前の喫茶店で軽く腹ごしらえしておく。サンドイッチをつまみながら、携帯していた本、『いきなりはじめる仏教生活』(釈徹宗・著/basilico)を読了。お通夜の前に読み終わるには似合っていたかもしれない。
斎場前で、マッドハウスの方々、家内と合流。ソニー・ピクチャーズのプロデューサー氏に案内してもらい、受付を済ませる。
各業界から届けられた花の数は200近くにもなったそうで、内田さんの多大な業績を改めて思い知らされる。参列者の数は大変多く、中には、荒俣宏さんやちばてつや先生、藤子A不二雄先生の姿も見える。
6列になってご焼香を待ちながら、わずか半年ばかりの短いお付き合いだったものの、その間にいただいた多くのお言葉やお人柄を思い起こす。
内田さんの遺影がとても素敵である。どなたかの話をにこやかに受けて、今にも何か話し出しそうな様子。
ごゆっくりお休みください、内田さん。

水曜日。買い溜めしておいた本の一冊『別役実のコント教室』を読み始めたら、これが滅法面白い。あまりに面白いので、出社途中に本屋に寄って『別役実の演劇教室 舞台を遊ぶ』も購入。こちらもたいへん面白く、夕方には2冊とも読み終えてしまう。ちょっと勿体ない。
前者は劇作に関して、後者は主に初歩的な舞台演出に関する本、とでも言えばいいだろうか。
ゼミ生たちの参考にもなるかと思い、前者はメーリングリストで紹介しておく。以下はその文面から引用。

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『別役実のコント教室 不条理な笑いへのレッスン』
(白水社/¥1700+税)
別役実は「日本の不条理演劇を確立した第一人者」で、今年71歳になられる劇作家・演出家です。私はその舞台を見たことはないのですが、この本をとても興味深い内容でした。
2001年、7日間にわたって行われた「劇作セミナー」を単行本化したもので、参加者が提出した短い不条理劇の台本を具体的に批評しながら、アイディアの展開や会話の作り方について紹介しています。
帯にはこうあります。
「劇作家・脚本家・放送作家になりたい人はもちろん、“ウケる技術”を身につけたい人のための短期集中講座。」
その通りの内容だと思います。「不条理」「コント」「笑い」を前提にしていますが、この本で紹介されていることはそれらに限らず、広く作劇の参考になるはずです。
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もう一冊『別役実の演劇教室 舞台を遊ぶ』(白水社/¥1800+税)はメーリングリストでは紹介しなかったが、舞台演出のみならず、アニメーションの演出や、レイアウトにも応用できる考え方がたいへん分かりやすく紹介されている。これまで漠然とではあるが演出上意識していたことが、たいへん簡潔な言葉で書かれており、たいへん刺激になる。アニメーターや演出志望の人にもお薦めしたい一冊。
著者の人柄や文章も面白く、「鉱脈」を発見した気がする(いまさらかよ、と言われるだろうが)。

木曜日と金曜日、鉱脈をたどるべく本屋を渉猟し、別役実の本を数冊購入。まるごと一冊冗談で書かれた『道具づくし』に大笑いする。
本ばかりでなく、最近は映画を見たい欲求も強いので、この二日間で20枚ほどDVDを購入する。見るのが追いつかない気もするが、見たいときに選択肢が多いのは豊かであろう。

映画『キングダム−見えざる敵』を早速見てみる。
わ。これは面白い。たいへんスピーディな展開と細かいカット割りに、晩酌をしながら見ているのでは目が付いていかず(笑)、腰を据えて本格的に見始める。
この映画も以前町山智浩さんのポッドキャスト『アメリカ映画特電』で紹介されていて、「楽しめるだろう」とは期待はしていたのだが、それ以上に楽しめる傑作であった。
銃撃や爆発シーンなどの派手な場面もさることながら、話の展開も面白く見られるし、扱われるテーマも奥行きがある。コンパクトかつタイトに作られた締まりのある映画だと思う。
いい買い物をした。

昨日、土曜日は掲示板でも話題になった『DAWN OF THE DEAD』を見る。店頭には同じタイトルで「アメリカ公開版」「ディレクターズ・カット版」「ダリオ・アルジェント編集版」の3種が並んでいた。
「……いい加減にしろよな」
「アメリカ公開版」を見るのが正しい態度だと思いつつも、つい一番長尺の「ディレクターズ・カット版」を買った。
私にとっては、ほぼ初めて見るといってもいい正統なゾンビ映画かもしれない。
肉を食らうシーンなどは晩酌のお供にはちょっと不向きであったが(笑)、妙に陽気な音楽と陰惨な映像の対比も面白く、物質文明に対する風刺が効いていて楽しんで見られた。1978年に作られたそうだが、その後のゾンビ映画の基本となりそうなアイディアが出揃っているし、なるほど傑作と言われるのも頷ける。
これまでどうもゾンビものは苦手であったが、たまにはいいかもしれない。何だか土曜日の夜には似合うような気がする。
一週間の仕事で疲れた「頭を吹き飛ばして」もらえるような気がするからだろうか(笑)

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