2008年11月14日(金曜日)

六日目ストックホルム



現在は現地時間14日、夕方。
すでにストックホルムから第三の訪問地であるノルウェーの首都、オスロに到着。ホテルにチェックインを済ませた。
ホテルの部屋が狭いのが悲しい。とはいえ、喫煙可能なのだから文句は言うまい。
このホテルもネットの接続が遅い。ヤフーのニュース動画が「紙芝居」状態。
これで有料(100クローネ=約1360円/12時間……アメリカより高いぞ!)というのだから、この地もネット後進地帯なのだろうか。

さて、時間と空間をさかのぼり、ストックホルムでのこと。

7時半に起床。昨夜は疲れて風呂に入らなかったのでゆっくりと湯船につかる。
お風呂のお供は『正義で地球は救えない』(池田清彦・養老孟司著/新潮社)。
前作、『ほんとうの環境問題』も面白かったが、巷を覆う商売目当ての「エセカンキョー問題」ブームの胡散臭さ、というより真っ赤なウソを辛らつに批判しておられ、たいへん納得が行く。
持参した本は計5冊。9泊11日にはやや心許ない数である。
『できそこないの男たち』(福岡伸一著/光文社新書)、『ぼんくら(上)』(宮部みゆき著/講談社新書)の2冊はすでに読み終わってしまった。『ぼんくら』下巻も残り少ない。
宮部みゆきの名前はよく聞くが、読んだことがなく、これが初めて。
「海外出張には時代劇が望ましいのだが、お勧めは何かない?」
というリクエストに応えてくれた友達の素早いリアクションが『ぼんくら』だった。
海外出張のお供には最適である。ありがとう。

10時に車を回してもらい、市内観光に出かける。
まずは「ヴァーサ号博物館」へ。
博物館の日本語案内から引用する。
「1628年8月10日、ヴァーサ号は処女航海に出発し、ストックホルム港に沈みました。
この難破船は1961年に引き上げられるまで、333年間海中に沈んだままでした。95パーセント原型を留めたままに、復元されたこの船には数百の彫刻が見事に施されています。
今日、ヴァーサ号は世界有数の観光の名所の1つであり、この船から17世紀のスウェーデンの独自の文化をうかがうことができます。」
その通り、ここは観光の名所であろう。
屋内にまるごと展示された17世紀の難破船は圧巻である。
館内に入って私が最初に発した言葉はこうだ。
「わ!すげえ」
感動の表現がすこぶる知性に欠けるが、正直なところそれ以外に言えない。
当時、相当な予算と期待をかけて作られたこの巨体が、大勢が見守る中、処女航海に出発した途端、港を出ることもなく呆気なく沈んだ、というエピソードが奮っている。
滑稽と悲劇の戦艦ヴァーサ号。
その「テヘヘ(笑)」な運命をまとった船体、その実物が目の前にある、というだけで素晴らしい。

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あーあ、こんなに彫刻を施しちゃって。
どうせ沈んじゃう運命だってのに(笑)

車で高台に移動し、ストックホルムの街を一望する。
たいへん眺めが良く、美しい色合いの街が目の前に広がっている。
あいにくの曇り空だが、これもまた風情があってよろしい。夏場に来れば、全然違った表情を見せてくれるのであろう。
さらに車で移動し、ガムラ・スタン(旧市街)を歩いてみる。
絵になる風景ばかりで、シャッターを押す回数も自然と増える。

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昼食は日本食「六本木・清香園」。
生ビールとビジネスランチというセットをオーダー。
前菜に寿司3カン(ボイルのエビ、サーモン、マグロ)、メインは焼肉で、これに味噌汁と御飯が付く。
「うう、美味い」
何が美味いって、味噌汁が(笑)
比較的正しい日本の味に満足、満腹する。

ストックホルム大学での仕事に行く前に、日本食材のお店に立ち寄る。
日本食に刺激されたせいか、さらに日本のものを食べたくなる。
ホテルでも簡単に作れて、すぐれて美味い食べ物といえばこれしかない。
カップ麺、そしてインスタントみそ汁。
異国で買う馴染みの商品は少々値が張るがかまうもんか。背に腹は代えられない、とはこういうことか。

ストックホルム大学日本学科、アニメ・マンガコース3年の学生さんたちを相手に懇談会。
日本のマンガやアニメについて幅広い討論を行った……というと聞こえは良いが、日本の学生同様控えめなスウェーデン学生さんだから、もっぱらこちらが喋ることになる。
自己紹介がてらそれぞれが好きなアニメやマンガのタイトルを挙げてもらう。
色々なタイトルが上がるが、『となりのトトロ』の人気が高い。
『パプリカ』のタイトルが上がるのは心優しいスウェーデン人の気遣いであろう。
時間経過とともに、学生からの質問も増えてきて、コーヒーを飲みながら楽しく時間を過ごす。
新作についても少し内容を紹介し、最後にはミニ「サイン+撮影会」。
授業中の日本学科1年生のクラスにもお邪魔してちょっとだけご挨拶。
彼らの使用するテキストをのぞかせてもらったところ、この日の題材は「笠地蔵」であった。
近頃は、おそらく日本の子供たちもあまり聞かされることもないであろう昔話が、スウェーデンの学生に読まれるとは不思議な気持ちになる。

外に出ると、16時過ぎなのにすでに夜空になっている。
冷たくて清々しい空気の中で気持ちよく肺に毒を吸い込む。
ああ、煙草が美味い。
これで第二の訪問地スウェーデンでのミッションはすべて終了。
ふう、疲れた。

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