2009年3月11日(水曜日)

VS.データ



少々肘が痛いのは確定申告のせいである。
いまだにアナログな方法をとっているため、ボールペンで文字を書かねばならず、普段手書きの文字など仕事上のメモ以外に書かない私の右腕にはたいへんな負荷になる。
だからといって必ずしも嫌なわけでもなく(申告書の作成自体は面倒くさいことこの上ないが)、年に一回の儀式の様なつもりで身体的な負担を甘受している。
一年間の仕事を振り返るちょうどいい機会である。
「や。収入が……(泣)……これはきっと、世間の不景気と関係して……ないな」
年ごとの収入が乱高下するのはいまに始まったことではないし、それが当たり前の生活である。好きな仕事をして好きな酒と食べ物を口にして好きな師匠の音楽や落語を楽しめているのだから幸福だ。
「えーと……まずは所得の内訳……と」
お足をいただいた先の名称、住所などを書かねばならない。それも控えと提出用の2枚。さらに収支の内訳という収入金額と経費などを書き込む書類も同様である。
「ああ肘が痛い」
しかし、たまには丁寧な文字を書こうとする機会がないと、どんどん悪筆が促進されてしまう。以前は少しはましな字を書いていたのだが、長年のアニメーション業界暮らしの影響か、気ばかりが焦った文字に変容してしまった。
そんな理由もあって、一文字一文字「税務署の人が読みやすいように」と、真心を込めて「所得の内訳書」や「収支内訳書」を書くのである。
先日の日曜日、一日がかりでようやく申告書の作成が終了。ホッとした。

個人的な志ん生ブームは相変わらずである。
購入した全集やもらいもののデータなどによって、iTunes上のライブラリはなかなか充実してきた。
ただ、少々厄介なのは同じ演目の重複が多くなってくることと、同じ演目でもテイクが違うものが混在してくることである。
最初のうちはデータの数も少なかったので、たとえばどのタイプの「火焔太鼓」がどのアルバムに入っているかを覚えていられたが、重複が多くなってくると私の頭など全然当てにはならないのである。
しかし、世の中には便利な本があるものだ。
『志ん生全席落語事典―CD&DVD691』保田 武宏 (大和書房)
この本にはCD・DVD化された志ん生の落語すべてが記されており、ネタ別にテイクの種類も詳細に記されている。
特に巻末の「古今亭志ん生〈音源別〉落語CD&DVD総覧」がたいへん重宝する。あいうえお順に演目が記されており、音源の種類とそれがどのCDやDVDに収録されているのかが一目で分かるように、メーカーとアルバムや全集のタイトル、商品番号などが記載されている。
しかも音源を判別しやすいように、そのテイクの「しゃべり出し」が二行ほど記されているので、持っているデータを耳で聞いてもそれがどの音源であるかが特定できるようになっている。
お誂え向きとはこういうことをいうのであろう。
この「総覧」ページをコピーして、ライブラリのデータと突き合わせ、各データにこの総覧で付されている音源の番号をつけることにした。
まずは「総覧」に持っているデータを蛍光マーカーでラインを引く。
「おお、高校生みたいだ(笑)」
そのためにわざわざ水色とオレンジリオの蛍光マーカーをヨーカ堂で買ったのだ。
さらに音源の下に並んでいるCD、DVDの種類にアンダーラインを引く。定規を使うのはなれたものだ。
さて、このデータを元にiTunes上で演目の後にタイプをつけるのである。
たとえばこのように。
「火焔太鼓(8-東京落語会1961.11.17、NHKラジオ12.7)」
「総覧」上の演目は151、音源にして308種類。
対して、私のライブラリは現在のところ重複分もすべて入れて320。
これらを一々データの修正を行うのだ。
確定申告よりよっぽど面倒な作業だが、楽しいことこの上ない。なにしろ入手できる音源は限られているのだから、楽しみ方は自分で工夫するのである。
ある書籍の中にこんな見出しがあった。
「楽しい仕事っていうのは、どこかに用意されているんじゃなくて、自分で楽しくするものなんだ」
なるほど。
これはこれから発売になるという、NHK番組「トップランナー」を書籍かしたものから引用した。
発言者は「世界中も大注目!」とされる「1963年生まれ、アニメーション監督」だそうだ。

とりあえずは音源が複数あるものについてはすべてデータを修正したので、これからはどのタイプを聞くかをすぐに選べるし、同じ演目を聞き比べるのにもたいへん便利である。
「「芝浜」を聞き比べよう」
と、思い立ったらこんな具合。
芝浜(1-NHKラジオ1957.9.25)
芝浜(2-ニッポン放送1958.12.25)
芝浜(3-東横落語会1961.1.31)
芝浜(4-ニッポン放送1962.11.7)
もちろん「総覧」上のデータをすべて入手しているわけではないので、こんな状態になっているものもある。
火焔太鼓(1-)
火焔太鼓(2-)
火焔太鼓(3-ニッポン放送1956.9.3)
火焔太鼓(4-ラジオ京都1957.3.29)
火焔太鼓(5-ニッポン放送1958.1.1)
火焔太鼓(6-NHKラジオ1958.11.2)
火焔太鼓(7-)
火焔太鼓(8-東京落語会1961.11.17、NHKラジオ12.7)
火焔太鼓(9-文化放送1966.1.1)
火焔太鼓(10-SP盤1951.2発売)
火焔太鼓(11-)
データを整理してみた結果、現在のところ、151の演目(落語と人情噺に限る)のうち入手したものは141、音源は248。それぞれ達成率は93%、80%というところである。
音源のコンプリートは無理にしても、すべての演目を手に入れたいものである。現在では入手困難なものも多いようで、今後の再発売に期待したい。
しかし私も気に入ったことについちゃまめだね、まったく。

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