2009年4月9日(木曜日)

アニソン、あるいは輝ける未来・その2



花粉症で少々難儀している。
多くの人が花粉症で困っている時期が終わるとこちらの番になるようなので、どうもスギではなくヒノキの花粉によるものらしい。
ここ数日、眼が痒い。軽度なので大きな支障は来さないのでさして困りはしないが、不意のくしゃみと落涙にはちょっとばかり人目を気にする。
「大股で歩きながら泣いているいい年した大人」
不気味であろう。

制作中の新作『夢みる機械』の基本的な舞台については前回記した。
もし現在から考えられる未来が廃墟になったという設定であれば、現在の世界を参考にしてイメージを膨らませ、それを廃墟にすればよい。無論それだってそんな簡単なことではないが、とはいえこれなら手持ちのイメージで補える部分が大きい。
しかし、何しろ「かつて夢見た近未来」がうち捨てられているのだから、一旦この「かつて夢見た近未来」を想定しないとならない。これが厄介だ。まぁ、厄介だから楽しいのだが。
そこで、その「かつて夢見た近未来」をイメージするための補助資料として「懐かしのテレビまんが主題歌」であり、つまり、子供の頃に夢見た未来世界がどんなだったかを思い出すための回路なのである。
私は割とこの手口を好んで使う。
「この手口」というのは、制作に必要なアイディアを得るために、「アイディアが出やすい身体を作る」ということだ。制作する漫画や映画世界にまつわる既存の作品(小説、映画、音楽その他色々)に浸ることで、意識的には思いつかない何かを生み出せる(かもしれない)コンディションに身体を持っていく。
これまでもこの方法を実践することで、多くの有用なアイディアが到来した……はずである。

今回も、その効果は小さくないと思いたい。
「輝ける未来」を高らかに歌ったアニソンを聞きながらメカなどの設定を描いていると、それまでよりもいくらからアイディアの「お通じ」が良くなったように思える。
何しろ先日描いたエアカーの名は「流星号」である。無論、ジェッター由来。
形状は思いきり本家「流星号」から借りて、そこに当時とは違う、現代のアニメーション映画に必要なディテールとリアリティを与える。これが実に楽しい。
「本家「流星号」みたいな流線型のフォルムに、50年代のキャデラックを混ぜて……色は……うん、ピンクだな」
デザインを詰めているうちに段々、「流星号」というより「マッハ号」みたいになってきてしまったが。まぁどっちだって懐かしいことに変わりはない。
この描画作業中のBGMはやはり『スーパー・ジェッター』がはまるのである。
http://www.youtube.com/watch?v……re=related
清々しい、素敵な曲である。上高田少年合唱団の歌声がいいのである。フルバージョンで聴ける間奏の口笛が気持ちよい。
http://www.youtube.com/watch?v……re=related

元々、この時期になぜアニソンにはまったのか、そのきっかけはYouTubeである。これまでほとんど利用したことがなかったのだが、最近はあれこれと検索して楽しんでいる。
仕事場で飲んで雑談をしながら、YouTubeで懐かしのテレビまんがのオープニングやエンディングを見ていて、懐かしさもさることながら曲の良さや、いまから思うと脳天気とさえ言えるほど楽天的な歌詞やその構えの大きさ、歌い手たちの素直な歌唱法に惹かれたのである。
YouTubeやにこにこ動画からダウンロードして曲を集めるという方法もあったのだが、そこはやはり商売柄「そういうことは後ろめたい」とも感じてしまうので、アマゾンでいくつかCDを注文してみた。
「テレビまんが主題歌のあゆみ」
「続・テレビまんが主題歌のあゆみ」
「アニソン100」
「決定盤!テレビ・アニメ主題歌オリジナル・サントラ集」
いずれも2枚組もしくは3枚組で十分たっぷり楽しめるのだが、必ずしも聞きたかったバージョンが収録されているわけではないのが残念だ。そのあたりは致し方ないので、少々後ろめたい行為に頼るしかなかったりもする。

集めた曲から作成したのが、プレイリスト120曲「輝ける未来」である。
120曲といっても重複やバージョン違いなどを含んでいるが、この中から私が特に好ましいと思う曲をあげてみる。
まずは、ある意味この曲がきっかけとなって個人的アニソンブームの到来となった。
「ロビンの宇宙旅行」
レインボーハーモニー(作詞:小川敬一/作曲:服部公一)
『レインボー戦隊ロビン』のエンディングである。新作『夢みる機械』の主人公たちはロビン、リリコというが、これはレインボー戦隊のロビンやリリと無関係ではない。というか、名前の由来はこのアニメ。内容やキャラクター性には全然関係はないが。
そういう背景もあって『レインボー戦隊ロビン』には格別思い入れがある。当時から好きだったし。
この「ロビンの宇宙旅行」は戸川 純がアルバム『好き好き大好き』の中で「恋のコリーダ」として、怖ろしい歌詞でリメイクしている名曲。
『ロビン』は主題歌もいいし、挿入歌なのか「すてきなリリ」という曲もチャーミングで前川陽子(『ひょっこりひょうたん島』『リボンの騎士』の主題歌でお馴染み)の歌声が実にいい。リリ、萌え。
主題歌もエンディングも複数のバージョンがあるのが悩ましくも楽しいが、やはりテレビで使用されたバージョンの方が馴染みもあるし、テンポも速くて好ましい。
http://www.youtube.com/watch?v……WubCcljoCc
OpやEd、「すてきなリリ」など4曲がパックになったこちらもいい。
http://www.youtube.com/watch?v……re=related

「レオのうた」
弘田三枝子(作詞:辻 真先/作曲:冨田 勲)
何ていい唄なんだ。子供の頃から大好きな曲だった。
これも歌い手、サイズに加え歌詞も複数のバージョンがあるが、やはりテレビ版が気に入っている。
一番好ましいのはこれ。
http://www.youtube.com/watch?v……re=related
弘田三枝子の歌声が素晴らしく、ポピュラーを歌ったCDも欲しくなった。
『ジャングル大帝』といえばオープニングの曲も、映像も素晴らしかった。テレビアニメで最も印象に残るオープニングといえば『ジャングル大帝』である。何といっても作品の持つスケール、というか手塚治虫の構えの大きさに改めて驚かされる。
http://www.youtube.com/watch?v……_6HmHcjU3k
飛び立つフラミンゴの群れが感動的に素晴らしい。手の空いている人は是非見ていただきたい。日本のアニメ史上に残る傑作である。
ところで『ライオンキング』は『ジャングル大帝』の盗作ではないそうだが、だったら日本でも対抗して劇団四季で『ジャングル大帝』のミュージカルを作れば良かったのに。でも連中はきっというに違いない。
「それは『ライオンキング』の盗作デース!」

昨年2008年は手塚治虫生誕80周年だったそうで、それを記念して今月18日から江戸東京博物館で「生誕80周年記念特別展 手塚治虫展 未来へのメッセージ」が開かれるとのこと。行ってみたいものだ。
手塚治虫が生まれたのが1928年11月3日。『ジャングル大帝』が連載されたのは1950年から1954年にかけて。22歳から描いていたことになる。
……。
いくら時代が違うとはいえ、漫画の神様はスケールが桁違いに大きいと改めて思わされる。
アニメ版『ジャングル大帝』の放送開始は1965年だが、この時手塚治虫37歳。
先にリンクを紹介したバージョンの歌詞(辻真先による)のこのフレーズが素晴らしい。
「地の果てに灯をともす」
地の果てまで文明を届けよう、なんてスケールというか構えの大きさに改めて驚くのである。

アニソン話はまだ続く。

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