2009年4月22日(水曜日)

至福の三日



4/16〜18、平沢さんの第10回に当たるインタラクティブライブ「点呼する惑星」を楽しませてもらった。
荻窪の机の上には仕事が山積しているにもかかわらず、今回は「初心」に戻って三日とも新小岩に日参。
「初心」というのは、平沢さんとお仕事で関わらせてもらう以前、平沢ソロ、P-modelともに東京でのライブには日参していた時期の心持ちを指している。
『千年女優』以後も時間の調整がつく限り、近場のライブにはすべて足を運ぶようにしている。仕事の関係もあり、現在ではありがたいことにケイオスさんからご招待という形で会場に入れてもらえるようになった。
ありがとうございます、ケイオスユニオンさま。
ご招待で入場させてもらっているのに三日もお邪魔するのは申し訳なくもあるし、何より他の平沢ファンの方々はお足を払い、チケットを取る苦労だって少なくないことを思うとも申し訳なく思う。
どうもすいません。

なぜ今回「初心」なんてことを思ったのかというと、その背景には自分にも分からない無意識が活発に働いているのであろうが、新作の制作ととてもものすごくたいへん深い関係があることだけは容易に想像がつくので、映画制作のためにも三日間コンプリートにこだわってみた。
それに、妙な話だが今回のインタラクティブライブは見る前から「傑作だ」ということを「知っていた」。
別に事前情報があったわけではない。ただの予感や期待といえばそれまでだが、それよりも強い既視感みたいなものかもしれない。
まあ、アルバム『点呼する惑星』がとても充実度が高かったからそう思っただけなのかもしれないが、しかしニューアルバムが出る度に期待はずれだったことはないし、どのアルバムだって私には傑作であり、いつだって私には素晴らしい音楽であることには変わりない。インタラクティブ、ノンインタラクティブ問わずライブにしても同じようにいつでも楽しませてもらっている。
マイクの調子が悪かったこともあれば、トラブルでMCが長くなったこともあるし、マシントラブルなどは「余興」でさえあるが、そこでどう関わるのか、そのヒラサワの態度も含めていいのだから、語弊はあるが「ヒラサワならいい」のである。
「志ん生が好き」も同じ構図だ。あまり出来が良くないといわれるテイクだって、志ん生の落語なら聞きたいし好きなのである。
そういうものが「世に二つ」もあるなんてかなり幸福だ。

今回のインタラクティブライブ「点呼する惑星」はいつにも増して、やはり傑作だったと思う。三日通わせてもらったのもやはり大正解であった。
三日目にしてようやく「成功ルート」も達成され、そのとぼけたエンディングにたいへん満足させてもらった。「達人」に感謝する。
一応「成功」とされるエンディングは勿論だが、初日二日目の一応「不成功」とされるエンディングもたいへん納得の行くというか、いいエンディングだと思った。
二日目の時点では、奇妙な物体「トゥジャリット」が完全に壊れるエンディングは用意されていないのではないかと思ったくらいだ。楽屋にご挨拶に伺ったときについ御本人に聞いてしまったが。
「一応「成功」とされるエンディングはあるんです」
意外だった。
しかし、続けてこう仰る。
「まぁ、いいのか悪いのかよく分からない終わり方なんですけど」」
納得した(笑)
実際、最終日のトゥジャリット崩壊の達成感とその「内容物」が現れるシーンにはクライマックスとしての大きな充実度があった。
エンディングムービーにも『不思議惑星キン・ザ・ザ』テイストがあって、思わずにっこりしてしまった。
また、初日二日目も見ていたからこそ一応成功とされるエンディングを見られた達成感はいっそう大きかったわけで、これぞ日参の醍醐味。

終演後、平沢ライブではお馴染みとなったメンバーで飲み会があり、最終日は新小岩で一次会、新宿まで移動しての二次会で久しぶりに朝方まで酒を飲んだ。朝まで飲むのはしんどい歳になってきたが、とても楽しい宴会だった。
その宴席でFOOさんも「今回のインタラはベスト3に入る」と言っておられたが、私も同感。
FOOさんのブログはこちら。 http://kissa-p.at.webry.info/
個人的には『Sim City』のインタラクティブライブと同じくらい強く印象に残った。
とにかく色々な面でバランスのいい「ショー」だったように思える。
ライブスタッフとして参加している友人宛に、初日を見た感想をメールで送ったのだが、こんなことを書いていた。
「ストーリーのひねり具合とひねり過ぎないバランス、映像のクオリティ始め諸々の達成具合と改善の余地まで含め、それらのバランスが良くてショーとしての充実度が高かった印象」
多少複雑な設定もストーリーと仕掛けのシンプルさが緩和しているし、映像とストーリーが占める割合と音楽の配分も良かったのではないかと思われる。
ストーリーの演出としても「一旦失敗」から「一転成功」という具合に、大きな波が来るのはたいへんオーソドックスとはいえやはり心地いいものである。
逆のパターンが二日目で「一旦成功」から「一転失敗」というガッカリ具合も意外性があって良かったが。
きっと平沢さん御本人としては、ストーリー的な面でもっとあれこれ提示したかったこともあるのではないかと思われるが、作者的には物足りないくらいが見ている方にはちょうどいいことも多い。
勉強いたします。
CGも、登場する物のデザインも、とてもはまっていて良かった。作り手側としてはやれることもやりたいことももっとたくさんあるのだろうが、頃合いがいいというか、『点呼する惑星』に何か「ちょうどいい」という感触だった。
何より今回のライブは、タイランドからのゲスト効果が大きいのだろうが、平沢さん一人の時よりも過度な緊張感が緩和されるのか、「楽」な感じを受けるショーであった。
とっても正調エンターテインメント性を備えつつ、たいへんヒラサワ的な体験をさせてもらった。

今回のライブで唯一少々しんどかったのは会場の場所であろうか。無論、単にこちらが普段活動している場所が遠いせいなのだが。
新小岩は思った程遠くはなかったが、山手線を挟んだ反対側から三日続けて通うにはやっぱり遠いのであった。
ホールとしては全然悪くなかったのだが、たいへん気になったのはホールロビーの一角に設えられた喫煙所、そこの「注意書き」であった。

edogawaku.jpg

わざわざこんな注意書きを貼らないと「吐き出し」する人間がいるのか、江戸川区って。

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