JAniCAによるアンケート調査結果の続き。
概要報告は「老後への備え」「担当職種」「主収入職種」「担当放送形態」「主収入放送形態」と、それぞれ調査の意義がある項目が続くが、調査結果は近いうちに「白書」という形で刊行されるというし、新書などの形で出版という予定もあるそうなので、ここでは省略する。
一応、簡単にまとめると、「老後への備え」は国民年金に加入しているのが385人と半数以上を占めるが、「備えをする経済的余裕がない(294人)」も顕著で、中には「まったく考えていない」という強者も58人いる。
「担当職種」「主収入職種」では原画が圧倒的多数を占める。
「担当放送形態」ではTVが主流で、「主収入放送形態」に至っては77.6%がTVとなっている。
金銭の具体的数字を知りたい方が多いと思われるので、「作業単価」は数字をそのまま紹介しよう。
放送形態 職種 単価 平均
・TV 絵コンテ 話 211,668
・TV 演出 話 210,909
・TV 総作画監督 月 314,000
・TV 作画監督 月 315,294
・TV 作画監督 話 300,118
・TV 原画 カット 3,942
・TV 動画チェック 話 69,684
・TV 動画 枚 203
・劇場 原画 カット 13,886
・劇場 動画 枚 311
TVの話数作監が意外にもらっている感じがする他は、ほぼ実感と重なる数字である。
もし当ブログで初めてこの数字を目にする業界人がおられたら、この平均を基準にすると自分が置かれた状況を客観的に把握できることと思う。
「ぬぅ!私は騙されていた!」
であるとか、
「ああ、私は恵まれている方なんだな」
とかね。
しかし、いまどきTVの動画単価が200円とは恐れ入る。
マッドハウスだと元請けということもあり、平均してももう少し単価は良いはずだ。
TVの原画単価に比べて、劇場は約3.5倍の14,000円弱で、業界外の人には一見ましな数字に見えるかもしれないが、おそらくいまどきの劇場をこの単価で引き受けたらTVより食えないのではないか。よくいわれる話だ。
単価が3.5倍でも、作画する内容はTVの5倍大変なんてことはざらだろうから、劇場の単価仕事はおよそ食えないことが多い。
「お前みたいに予算が大きくないのに、パースやデッサンが面倒で芝居の手間がかかるカットばかりを作る演出がいるからだろう!!」
と言われたら「その通りです」としか返す言葉はない。
申し訳ない。
確か『千年女優』の時の原画単価は上記の数字程度だったと記憶している。
対して、月拘束の原画マンの場合、人や作品規模、内容にもよるが仮に月10カット上げたとして、拘束料をカット数で割ると、1カットあたり¥30,000前後になるのではなかろうか。
中にはもっと安くなる人もいるが、ギャラ泥棒としか思えない額になる人だっている。
しかしこれらは単に数字で弾き出せる評価ではなく、いくら単価あたりのギャラが高くても必要な人もいるし、それに見合う内容の場合だってある。
アップ間際に他人がこぼした仕事を拾ったり、使えない原画の直しまでお願いしたりするようなスタッフの場合、必ずしも単価計算で折り合いがつくわけでもない。
まことにケースバイケースだ。
劇場の原画を単価受けできるのは、よその仕事で月拘束をもらっている人の「バイト」とか、制作側や監督・作監による泣き落としであるとか本人の熱意や向上心に負うところが大きいように思う。
しかし「バイト」が横行することで、その本来の仕事に支障を来す場合も多いし、スケジュールは本業とバイト先それぞれに崩れていく……という悪循環に陥ることも多々あるのではないか。
以下、次号。