2009年5月30日(土曜日)

お困りですか?



今度は「仕事の満足度」である。

十分に満足している 3.5%
満足している    15.2%
普通        27.7%
多少の不満がある  37.0%
大変不満がある   16.6%

満足しているのが計18.7%、5人に一人。
不満が計53.6%で半数以上。
数字からは分からないが、仕事の内容よりは報酬、待遇面での不満が多いのではないか。

「仕事上の悩み」は文章形式による回答のようだが、回収された調査票の大半になにがしかの記述が見られたそうだ。
いかに短いとはいえ、わざわざ文章を書く人が多いのは、それだけ切実な背景があると推測される。
実際、身につまされる回答ばかりなので、サンプルとして資料に上げられたものをすべて引用する。

発注
「仕事発注時に単価を教えてもらえない」

契約書
「契約書がなく口約束のため、作業発注日や支払日が守られない」

雇用形態
「契約書がないため、会社での自分の雇用形態がわからない」

ロイヤリティ
「監督、キャラデ、作監くらいにはロイヤリティーがあってもいいのではないか」

産業空洞化
「スケジュールがないからと動画の仕事を海外へ出し、国内動画の仕事がない」

単価
「非常に上手い人も、まったく描けない新人も、誰でもどんな難易度のカットでもすべて同じ単価というのは納得できない」

クオリティと対価
「演出、作監からの単価に見合わない過度の要求で、必ず誰かが貧困に陥る」

収入
「作業時間に対して収入がぜんぜん見合っていない。好きなのでこの仕事をしているが……」
「単価上がりませんか? ……ダメですか。いままでずっと上がってきてないのがおかしいです……」
「単価が安いのでひもじい。せめて食費くらいは保障して!」

スケジュール
「業界全体でスケジュール管理ができてないため、原撮など無駄な作業に時間と予算が使われている」

プロ意識希薄
「約束が守れないアニメーターや演出は、制作が首切りできるようにならないと、スケジュールも職業倫理もよくならない」

かけもち
「生活を維持するためには仕事をかけ持ちし、それを理由に作業を遅らせる人が増えた」

力量不足
「アニメーター不足から、原画を描く才能のない人まで原画を描くためクオリティの維持がむずかしい」

セクシャル・ハラスメント
「作品世界を把握するためと称して、男性アニメーターといっしょに露骨な性暴力のエピソードを見せられた」

技術向上
「絵の勉強をもっとしたいが、出来高なので仕事時間を減らす経済的余裕がない」

現在のアニメーター、演出にまつわる問題点の多くをすくい取っているように思われるが、私などには最も肝心と思われる問題点がまったく抜け落ちている。
不思議だ。
その手の回答がなかった? まさかね。
だとしたら、サンプルを取り上げる側の意図によるものだろうか。ま、意図的だとしても、その意図は理解するが。
個々の回答や言い落とされているであろう問題について記したいことはあるが、機を改めたい。

その代わりに、言い落とされているであろう問題を象徴するこんなエピソードを紹介しよう。
業界の知り合いからのメールに記されていた。
腎臓機能の障害による重体で入院していたあるアニメーターの話。
「作画監督をしている最中、入院したら入院先までもカット袋を持ってこられたりもしました。もう苦笑いするしかありませんでした。」
どう思うね?
血も涙もない?
違うね。
頭が悪いだけだよ。

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