2010年1月10日(日曜日)

去年観た映画・その1



土曜日で概ね仕事場のセッティングは終了。
一週間もかかってしまったが、何も自分の机周りにそんなに時間を要したわけではなく、共有スペースまで合わせて、私がなるべく好ましいようにしていたからである。
早く絵を描けよ、という気もするが、それらを片付けないことには絵も描けない。そういうもんだ。
スタッフルーム内に出来るだけ「不審なスペース」や「中味不明の荷物」がないように、なおかつスチール棚とカラーボックスと原画机で構成された風景とはいえなるべく見栄えが貧乏くさくならないように、さらには居心地を快適であるようにするためには、アイディアと時間が必要なのであった。何より重要な前提は「金をかけずに」だし。
ああ、疲れた。
明日から本来業務に戻ろう。

去年の8月から、結果的に一旦ブログをお休みしていたので、月ごとに書いてみようかと思っていた「雑食」の雑感が頓挫してしまった。
私は毎年「雑食日誌」という覚え書きを付けている。
読んだ本、観た映画などのタイトルを記すだけのもので、感想など特には記していないが、こうしたメモを付けておかないと何を読んで何を観たのかさっぱり思い出せないことになる。別に思い出さなくてはならない理由もないが、タイトルを眺めていると自分の最近の傾向を俯瞰できる気もするし、年にどのくらいの数、本や映画を消化しているのかが分かり、ちょっとした励みにもなる。
何しろ私は若い頃に読書にあまり親しまなかったので、今になってその「空白」(と感じられる)を少しでも埋めようと思っているらしい。
「雑食日誌」は読み終える度、見終える度に記しているのだが、新年早々「雑食日誌2009」のデータをうっかり上書きしてすべて消してしまった。嫌な年明けだ。
悔しいので、記憶と断片的に残されたデータを元に99%は回復したものの、いつ消化したものかは分からないままになってしまったのは少々残念であった。

観た映画は確か63〜4本だったと思うが、回復した記録は61本。月に5本程度観ていたことになるので、近年としては割と数を観た方かもしれない。
映画館で観たものは一本もない。試写の招待や鑑賞券をいただくことはあるが、出かけるのが億劫で、ついついDVDで観ることになる。もっともそのDVD鑑賞も旧作がほとんどで、新作にはあまり縁がない。
去年観たうちで、近作と言えるようなものは13本。それも、いただきものや借りてみたものが大半である。
近作の中で、色々な意味で印象に残ったもの雑感を記してみる。

『ノーカントリー』 何が面白いんだろう?この映画。上手くないなぁ……という印象で、殺し屋も冷酷無比として描いているはずが、時折あまりにちゃちな演出がなされてどうにも興ざめするのだが、「アカデミー賞」なんだしそれでいいのか。

『スラムドッグ・ミリオネア』 あの面白い原作はどこに消えたのでしょうか? インドの人が描いたすこぶる面白い原作「ぼくと1ルピーの神様(原題「Q&A」)」が旧宗主国であるイギリスの人たちによってチンピラ映画みたいになって、それがアカデミー賞始め白い国々で多数受賞する。劇中の格差よりも悪質な構図が鮮明に浮かび上がって気がするのだが、いいんでしょうか。

『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』 数奇な運命を背負ったつまらぬ男だっているわな。

『崖の上のポニョ』 目が痛くなる配色はテレビが壊れたわけではなくて良かったが。

『ウォーリー』 子供向けだからってあまりのインチキはいけないんじゃないのか。

『戦場でワルツを』 本当にいい映画を見せてもらった。アニメーションによるドキュメンタリー映画。アニメーションの技術的な面では特筆することはないと思うが、取材対象である人物の実写映像から、どの部分をアニメーションの芝居として抽出するのか、そのエッセンスが興味深く、特に視線や手の芝居に目を引かれた。

『ザ・バンク 堕ちた巨像』 話はともかく、切れそうなほどシャープな画面は心地よかった。グッゲンハイム美術館での銃撃戦には萌え。

『トロピック・サンダー』 ロバート・ダウニー・Jrの「黒人」芝居だけでも○(笑)

『その土曜日、7時58分』 失礼ながらシドニー・ルメットが健在だとは思わなかった。1924年生まれで2007年にこういうある種「若者風の構成」の映画を撮っているとは驚き。フィリップ・シーモア・ホフマンの芝居もいいが、イーサン・ホークが「ダメな男」にはまり役で印象的。

『選挙』 想田和弘監督による笑えるドキュメンタリー映画の傑作。絶妙なカメラポジションだけで雄弁なメッセージとなっているし、日本の風景が正しく映し出されているのもいい。同監督の新作『精神』のDVD化が期待される。想田監督が『精神』制作から公開までの紆余曲折を記した単行本『精神病とモザイク−タブーの世界にカメラを向ける (シリーズCura)』(中央法規)もたいへん興味深い内容だった。

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