1999年12月9日(木曜日)

違うらしい/その1



 今回は変則的な連載、というよりは分載という形で載せて行くつもりだ。多分。


 もうすっかり慣れっこになっている。
 だいたいの人が後で聞くと、そういう言葉を口にするのだ。
 「恐そう」
 私のことである。いやぁ、照れるなぁ、そんなに褒められ……褒めてないか。
 「恐そう」とか「怖そう」、「強そう」あるいは「壊そう」、違うか。いや、存外「壊そう」があたっているかもしれない。
 ともかく、どうにも私は恐そうな人らしい。
 別にそう言われることを気に病んでいるわけでも嬉しがっているわけでもないし、勘違いを正すべくこの稿において「本当の私」だの「虚像の私」を分かってもらおうなどとたわけたことを記すつもりはない。ただ、「本当」かどうかはともかく、本人が思う当人像と他者が認識している当人像の「ズレ」について考える一サンプルとして、ちょっと自分を例に考えてみたい。
 これを御覧になっている皆さんにも、多少なりとも経験がお有りの筈だ。HPやメール、チャット・掲示板、パソコン通信の会議室などで、オンラインで知り合いになり、オフラインで実際にその人と対面したことがある人などはよくお分かりになろう。
 「○○さんって意外と……」
 「××さんってそういう人だったんですか」
 などという言葉に苦笑したことのある人も多いのではなかろうか。
 また、長年付き合いのある異性から冷たい視線と共に、
 「……そういう人だったのね」
 などという胸の痛くなるような言葉を……これはちょっと主旨と外れるか。
 ともかく当人が「イメージと違う」という経験は読者諸兄にもよくお有りの筈だ。
 何やら「パーフェクトなんとか」というアニメのテーマみたいなことを今更掘り返すようだが、何かと実感することも多いので改めて考えている。考えてもなにがしかの結論も有益な教訓を導き出せるとも思っていないが、現実逃避の一環として……いや、そんなことをネタにしてまたもや愚にもつかないことを垂れ流そうというだけのことだ。
 あるいはまた「ホームページを作ろう(笑)」の番外編たりうるかもしれない。

 いきなり余談である。
 漫画業界にしろアニメーション業界にしろ決してその世間は広いものではない。特に漫画業界などは若くして売れっ子にでもなろうものなら、その世間がおよそ編集者とアシスタントが形成するささやかなものになるのは致し方のないところであろうか。世間が広ければ良いというものでもないが、その限られた世間の中で「先生」として奉られているとなると、どういう大人になるかは推して知るべし、であろう。幼い精神と億の収入のアンバランスに新興宗教の門をたたく人間が出てくるのも無理からぬことであろうし、精神が細く削られて病んだ心になるものまで現れるのも致し方ないことかもしれない。いや、別に誰かを特定して言っているわけではないので邪推しないように。実際そうした人たちがいるという噂だけは耳にしているが。噂はともかく、お金と不幸のあるところに新興宗教の手合いが嗅覚鋭く現れるのは、その本能であろう。引っかかるやつが悪い。
 漫画業界の横の繋がりというのは実に希薄なもので、漫画家同士が顔を合わせる機会といえば、出版社主催の年末のパーティくらいであろうか。
 私はあまり出席したことはないが、講談社のそれでは豪華なビンゴ大会などが催され、女性漫画家がこの機会を逃すか、といわんばかりに派手なドレスなどで大いに飾り立てた姿でうろついていたり、ミスマガジンがパーティに華を添えたりしてなかなかに盛況である。そんなパーティで今は亡き堀江しのぶという人を見かけたこともある。若くしてガンで亡くなったアイドルだったと記憶している。合掌。
 堀江を偲ぶのはこの位にして、さて。

 以前、とある編集者に聞いたことがあるが、漫画の編集者は漫画家同士をなるべく会わせないことを良しとするそうである。むべなるかな。概ね「自分が一番」だと思いこんでいる人間が漫画家になっているのだ。付き合いが始まって当初は珍しがって同業者と楽しい時間を過ごしたりもするらしいが、これが一旦ことがこじれると大変にややこしいことになるのも非常に論理的な帰結である。特に女性漫画家さんは感情量も人一倍多いのか、仲がこじれたりすると「あの子の方の(雑誌上での)扱いが良いのが許せない」などといった、噴出する感情論に編集者は痛い目に遭わされたりするのだそうな。実話だ。
 よって、漫画家同士の付き合いはごくごく気の合うもの同士の狭い付き合いになる、らしい。あるいはかつてのアシスタントであった漫画家と師匠筋との付き合いであるとか。ともかく狭いことに違いはない。
 前置き、というか余談が長くなった。

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