iPodも買いました。
先にも触れましたが、渡米する前日、この日予定されていた打ち合わせがキャンセルという連絡が入り、迷うことなく電器屋へ。
iPodシリーズが居並ぶコーナーを眺めてみて、一つ気がついたのは、私はiPodについてまるで知識がないということでした。Windowsを購入する時と同様です。
知らないことは店員に聞いてみるのが賢い消費者の態度というものしょう。
しかし、平日昼間のAVコーナーなんて客もあまり来ないせいか、店員そのものを見つけるのが難しいほどです。しかもその絶滅危惧種に指定されそうなほど数少ない店員は、脳の働きが不活発な中年女性のお相手でたいへんビジーなご様子。
なあに、iPodはパソコンほど高価なものではありませんし、選択の幅がさほど広いわけでもない。
何より振り上げた物欲の拳とゲンナマはすぐに振り下ろしてこそ吉。
というわけで、もっとも基本的な原則に従って早速iPodを選ぶことにしました。
「一番高いやつにしておけば無難であろう」
さてそれに合致するのは……と。
80GBのiPod。
じゃ、これ。
色はもちろん黒。
商品が決まったら、後は絶滅危惧種を捕まえるだけです。
労働意欲に乏しい店員さんを何とか捕獲して…いや確保して注文し、実際に商品を持ってきてもらい、さて明朗会計、と相成ったのですが、不吉なことを言い出すのです、この店員さんが。
「はい、商品はこちらになります。で…お客様のお使いのパソコンは？」
「WindowsのVISTAです」
「あ……VISTAはiTunesが対応してないんですよねぇ」

ご存知の方も多いと思いますが、パソコンにiTunesが入っていないとiPodはただの四角いでくの坊になってしまいます。
しかし、私はVISTAのマシンでiPodを使おうと思っていたし、それに現にVISTAでiTunesをすでに使用していたのです。
後になって、VISTAは正式なサポートの対象になっておらず、不具合が出る場合があることを知りました。最近になってようやく正式にサポートされることも知りましたが。
ともかく、VISTAでiTunesは使えているし、問題があったとしてもパソコンは一台限りじゃありません。
「いいです。OSXも使ってますから」
「ああ！それなら大丈夫ですね」
いいから早く売ってくれ。
「ではこちらiPod80GBの…ブラック。○○、○○○円になります」
しかし、いざ私が財布から福沢諭吉を取り出そうという段になって、急に労働意欲に目覚めたのか、この店員さんがさらにあれこれ言い出すのです。
「ご一緒にポテトもいかがですか？」
いや、ハンバーガーじゃありません。
「メーカーの保証は一年限りですが、当店だけの5年の保証が○千円で…」
「要りません」
「iPodはけっこう落下による故障など多いようですし…」
「落としませんから」
「メーカー保証だけの場合、故障があっても、当店では受け付けられないのでアップルストアにお持ちいただくことに…」
「いいです、それで」
「では、ケースはいかがでしょう？」
「要りません」
「でも、iPodはやはり落下や接触などで角なんかを破損することも多いので…」
いいから早く本体だけ売れってんだよ！

しかし後に、ケースくらい買っておくべきだった、と渡米する飛行機の中で思いましたけどね。だって、光沢のある表面はすぐに手垢にまみれるし、ガラスの十代のように傷つきやすそうなんですもの。
ち。悔しいがこれじゃ店員さんの思う壺じゃないか。
しかし天の配剤か、ニューヨークに着いてすぐ、ホテルの近くを散策中、フィフスアヴェニューでアップルストアを発見。
ふはは、思い知るがいい、店員さんめ。
iPodのケースはここで買ってくれるわい。
なかなか80GB対応のケースの種類が少なくて、しばし悩んでやっと選んだ透明なケースを持ってレジに並んで、さあ会計。
レジの娘さんはけっこう太めの若い白人さんでした。
「ご一緒にポテトもいかがですか？」
言わないっちゅうの。