Re: 好きなことをしているから安くてもいい

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なし Re: 好きなことをしているから安くてもいい

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2009/6/19 14:20
s-kon  管理人 居住地: 東京  投稿数: 100
>「既得権益者が利権を手放さない」
>ということでしょうか。

そうですね、日本の社会一般の話と変わりはありません。
どこの世界にも「木っ端役人」が溢れているものです。
基本的には、こういうことです。
「もらえる額が一緒なら誰がよけいに働くもんか」
その利権がわずかにでも減ることを承諾するわけがありません。

そういう構図はアニメーターや演出、その他アニメーションに関わるスタッフにも言えることですけどね。
単価では食えないとはいっても、じゃあ数が上がる内容にすればいいという考え方だってあって然るべきなんですよ。
でも基本的には「やりたいことを減らすのは嫌だ」という絵描き側の言い分も大きく、これはある意味「既得権を手放さない」という言い方だって出来る。
もちろん、そこを手放すスタッフが多くなるとアニメーションの質は劇的に低下するかもしれませんが。

単価に比べると、報酬は悪くない「月額拘束」にだって問題はあります。
月拘束になった途端に数を上げなくなる、なんて話は枚挙にいとまがない。
たとえば単価が¥5000、月に40カット描いて20万円稼いでいる人が、月拘束で20万円になると、どうしてもペースが落ちやすい。もし月に25しか上がらないと、単価換算で¥8000になる。
同じ仕事を単価で仕事をしている人にすれば不公平ですよね。
ただ、これは先の「もらえる額が一緒なら誰がよけいに働くもんか」とはちょっと違うケースが多い。ここが少々難しいところ。
というのは、一所懸命に働いていることには変わらないんです。けれど「数は上がらないが内容は凝っている」という方向に向かいやすいからなんです。
作業量が同じでもそれがどこに向かうのかというと、量ではなく質に向かう。

その在り方は、本人にとっては技術向上や能力のデモンストレーションにもなるし、お客にとってもその方が見る価値のあるものにつながりやすい。
その人に対する業界での評価だって、完成画面で見られる質に対してなされるから、敬意も得られやすい。「スケジュールをきちんと守る」ことが絵描きの仲間内で評価されることなんてありませんからね。
だから量ではなく質を確保するための仕事も、見かけ上では「一所懸命に仕事はしている」ことに変わりはないんだけど、実は見方を変えれば「さぼっている」面だってあるんです。
もちろん、量ばかり確保して質の低下を他へ押し付けることになるなら、それもまた「さぼっている」ということにもなりますが。
ただ、質向上への傾斜は、本人の満足だけでなく作品の質的向上という錦の御旗を掲げられるので、誰もそれは悪くは言いづらい。けれども、スケジュールや予算という枠組み対しては大きく逸脱しやすくもなるわけです。
あちらを立てればこちらがたたず。世の常です。

仕事は一所懸命でありながら実は根本的なことの一つをネグレクトしている。
こういうスタッフは多いはずです。
私だってそういう後ろ指を指されても仕方ない面はある。しかし私個人としては、世間に対して個人の名前で看板を出している以上、守らなければならないことは多いし、フリーランスは程度の差はあってもその在り方に変わりはない。
このあたりの問題はどの立場に立脚するかで考え方は大きく揺れるところでしょうし、どこかにだけ立脚できるわけでもありません。
制作職の立場、アニメーターや演出の立場それぞれに言い分や事情はあるし、そこにお客という立場だって考えないといけない。
低いレベルの技術に溢れたアニメ、見たい人は多くないでしょ?
だからといって、お客がびっくりするくらいの技術で画面を埋めたら、もっとびっくりするくらいの赤字が出る。

>韓国の単価が大して安くないというところには驚きでした。

安いから使うなんて、随分昔の話でしょう。
それに質的にも、動画仕上げに関してなら国内とそんなに変わらないんじゃないでしょうかね。
上手いのもいれば上手くないのもいる。それはどこも一緒です。
仕事が早く大量にこなすということになると、国内の比ではないでしょう。
だから、制作職の多くは、時間的な余裕があるときだって国内よりは海外を使いたがる。面倒くさくないからです。そして国内は手空きになってしまったりもする。
事態はもっとすごいことにもなっています。
韓国は質的にも安定しているけれど、せめて「中一日」は必要とする。しかし、中国を使うともっと速い。質は下がるけど。
質が下がったところで困りはしない方々は当然楽な方に流れるので、面倒になると韓国すら飛ばして大陸まで送る。よく耳にする話ですよ。
原画をスキャナーで取り込んでネット経由で送ると、プリントアウトされて動画にされ、仕上げまでされて再びネット経由で戻ってくる。いま一番速いのがこの「スキャン便」とか「電送」ってやつでしょう。
まるで大がかりなプリントショップみたい。スロットに原画を入れると色のついた絵になって出てくる(笑)
笑い事じゃありません。
そういう事態にならないように制作を管理しなくてはいけないんです。
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