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去る1月の23日の初号をもって、「千年女優」は無事完成を迎えました。制作に携わっていただいたスタッフの皆様は勿論のこと、当HPにおいでいただいている方々、制作中様々な形で応援を下さった皆様のお陰であります。 改めてお礼を申し上げます。 「千年女優」の原初の形は私のパソコンのテキストエディタに記した、たったの2行のアイディアでした。 「かつて大女優と謳われた老女が自分の一代記を語っているはずが、記憶は錯綜し、昔演じた様々な役柄が混じりはじめ、波瀾万丈の物語となっていく。」 たった2行のこのメモ書きが、86分のアニメーション映画に成長するまでにおよそ2年と数ヶ月を要しました。誰もそんなに時間をかけて良いとは決して言わなかったのですが。 当初の完成予定は2000年の9月を想定しておりました。それが2001年の1月下旬まで伸びたのですから赤い数字もさぞや膨らんだことでしょう。制作会社マッドハウスさんにはお詫びしようもない負担をかけてしまいました。 また、たった2行のこの心ないメモ書きが多くのスタッフの手を煩わせることになりました。作品内容はシナリオ・コンテ作業、作画・背景作業、そしてまた 音響作業に至るまで決して易しいものではありませんでした。むしろ普通に考えてもアニメーションとして難しい内容だったと思いますし、また予算に比してあ まりに労力を必要とすることになってしまいました。 しかし実際にフィルムが大変良い状態で出来上がったのは、「千年女優」に関わっていただいたスタッフの力のお陰に他なりません。この中にもちろん監督である私も含まれます。私も「千年」にとってスタッフの一人に過ぎません。 「千年女優」という作品の原案やタイトルを考え出したのは確かに私です。ですが、制作している途中から作品というのは勝手に一人歩きを始めるものです。生み出したのは私かもしれませんが、それはやはり別な人格を兼ね備え、様々な要求をしてくるのです。 現場においてスタッフに指示を出し決定をするのは監督です。その監督に要求してくるのは「千年女優」なのです。時には監督よりも脚本、作画監督や美術監 督、演出や音響監督、音楽、あるいは実際にシーンやカットを担当するスタッフの方や声優さんが、よりよく「千年女優」の要求を理解することもありました。 監督はまとめ役に過ぎませんし、制作開始早々にして生みの親はあっという間に作品に追い越され、そして数々の難題をふっかけられていたのです。 「千年女優」は決して贅沢を言ったりしませんでしたが、難しいこと厄介なことばかりを要求しました。 「千年女優」は一休さんの将軍様みたいなものでしょうか。となると私が一休ということになるのですが、私ごときの頓知ではまかないきれないことばかりだったような気がします。足りない部分は優秀な他の制作スタッフが補ってくれました。 作品に関わる多くの人が「千年」の声を聞き、そしてアイディアと労力を積み重ねた結果が「千年女優」という形であり、そしてそれはアイディアと労力の足し算以上の魅力に溢れていると思います。 「千年女優」は歴とした一つの人格を備えた作品として、制作した我々の元を離れて行きました。 あとは「千年女優」を御覧いただくお客さんそれぞれのものになるはずです。 願わくは好意を持って受け入れられますように。 千年はまだ始まったばかりです。(2001.2.15) |
千年机 -03- お台場を駆け抜けるカモシカ |
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