2007年11月26日(月曜日)

『トゥモロー・ワールド』



昨日、久しぶりに映画を見た。といってもDVDで、だが。
映画館なんぞ、仕事以外ではもう何年も行ってない。
DVDを見るのも今月初めて。今年も全然映画を見ていない。

以前ポッドキャスト「町山智浩のアメリカ映画特電」で紹介されて以来、見たいと思っていた『トゥモロー・ワールド(Children of Men)』(アルフォンソ・キュアロン監督/2006イギリス・アメリカ映画)をやっと見た。
DVDショップで探していたのだが、たまたま入った「BOOK・OFF」で中古のDVDを手に入れた。売ってくれた人、ありがとう。
映画は非常に面白かった。というより「すごい」といった方が適切か。
ウィキペディアから引用すると、
「子供が生まれなくなった西暦2027年の英国を舞台に、シリアスでショッキングなサイエンスフィクションとして、紛争・少子化・宗教対立・テロ・人種問題などを一人の男の視点から描く」
という内容。
「興行的には苦戦したが、その映像は革新的・衝撃的で、カルト的人気」とのこと。なるほどその通りであろうと思われる。
この映画の顕著な特徴である、長回しの1カットの威力が「すごさ」に直結している。
「映画冒頭の爆破テロシーン(約51秒)」「乗用車襲撃シーン(約4分07秒)」「終盤の戦闘シーン(約6分16秒)」。
いずれも1カットという緊張感がたまらない。約4分07秒という「乗用車襲撃シーン」はシーンの情感の落差を上手く利用していて、長回しの効果が倍増している。
何よりクライマックス近くの約6分16秒という戦闘シーンが驚異的。撃たれて死ぬ人間のあっけなさや着弾の臨場感がすばらしい。カメラに血が飛び散っているのも悪くない。
1カットの長回しとは言っても、CGによる合成も多いようだが、基本的に長時間1カットで撮影したものをベースにしているようで、驚異的であることに間違いない。
長回しだけでなく、撮影は基本的な画面も素晴らしく、彩度を抑えた色調が大変美しい。画面を見ているだけで心地よい。
抑制の利いた温度の低い画面も緊張感の演出に大きく貢献している。
映画を見ていて緊張感を味わったのは久しぶりである。
いいものを見せてもらった。眼福眼福。

話も面白いと思うが、娯楽映画の過剰な親切をお好みの方には向かない作りかもしれない。そこが「興行的には苦戦」に繫がるのだろうか。現代が抱える諸問題が圧縮されて提示されるので、目を背けたい人も多いであろう。
だからいい映画だと思うのだが。
これといった強い意志を感じない主人公もまた娯楽をお好みの方には頼りなく見えるのだろう。だからいいんだけど。
ハリウッド的予定調和的展開が少なく、くどい説明がないので展開が読めないのもまたいい。重要な人物はあっけなく消えるし、脇役の一人もあっさり消えてしまってフォローはない。そこがまた妙に現実的な感じもする。非常時において人が消えて行くのはそんな呆気ないことなのかもしれない。
ラストシーンについて書くとネタバレになるかもしれないので控えておくが、特典映像に収録されているスラヴォイ・ジジェクのラストシーンに対するコメントがいいので、DVDで見られる方は特典映像も是非ご覧いただきたい。

しかしまぁ、売るためとはいえ、DVDパッケージ裏の文章が笑わせてくれる。
「人類の未来を変える攻防! 近未来SFアクション巨篇!!」
全然違うって(笑)
このDVDを「BOOK・OFF」に売った人は、このコピーみたいな映画を見たかったのだろうか。だったら気の毒である。

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