2010年1月19日(火曜日)

去年観た映画・その3



昨日はユザワヤに寄って窓を半分塞ぐためのボードを物色して出社。
監督部屋は喫煙スペースでもあるので、周囲から隔絶されたいわば金魚鉢みたいな状態になっている。仕切りの上側がガラス窓になっているのはいいのだが、あまりに周囲が見えると仕事中に落ち着かないので、窓の下側をボードで塞ぐことにした。
何だかんだと、いまだに仕事場の設定は終了せず工作したり物を移動したり、新しいアイテムなどを追加している。

先週はほとんど毎日、¥100ショップに寄ってはちょっと気の利いたものなどを買い込み、新しい仕事場の足しにしていた。
灰皿に使う焼き物、金槌、ドライバーセット、ドアストッパー、ツールボックス、ブックエンド、缶切り、スプーンやフォークを立てるためのマグカップ、電卓、ファイル収納ケース、麻紐、コーヒーの粉の計量スプーン、とんがりコーンなどなど。
たいへん重宝する。
「こんなものまで¥100で!?」
そう素直に感心したりもするし、物色していると実に楽しかったりももするのだが、作り手のことを思うと少々複雑な気持ちにもなる。
というのも、こんなことをつい想像してしまうからだ。
「¥100で買えるアニメ」
そういうものを作るのは……ちょっとな。

金曜日、吉祥寺ヨドバシカメラでコーヒーメーカーを買って出社。溜まっていたヨドバシのポイントで交換する。
得をしたような、単に売る側の思惑に乗せられているだけのような……多分後者。
私はあまり得をするのは好きじゃない。
ポイントカードとかは面倒なだけに感じる。
だいたい、巷間声高にアピールされる得なんてろくなもんじゃないに決まっておる。
私なりの処世訓の一つはこう。
「得をしようとさえしなければひどい目に遭うことも少なかろう」
これなら詐欺にも詐欺まがいのやり口にも被害に遭いにくい。
たとえば振り込め詐欺。大枚をだまし取られる被害者は気の毒ではあるが、得をしようとした結果だとも言える。最近の手口は知らないが、表沙汰になれば犯罪になるかもしれない身内の不祥事などを、金で解決して得をしようとするから詐欺の被害にも遭うのではなかろうか(あてはまらないケースもあるだろうけど)。

ヨドバシから駅に行こうと新星堂の中を通ると、DVDのワゴンセールが目に付く。
「3枚で¥3000」
ありゃま。在庫整理なんだろうけど、随分安いじゃないか。
得しちゃうぞ。
このところ続けて観ているイーストウッド監督の映画を手にとって、他に何を合わせようかと思って物色していると、
「あ、『アフリカの女王』」
つい先日、イーストウッド監督の『ホワイトハンター・ブラックハート』を見たばかりで、『アフリカの女王』を見返したいと思っていた。まさに渡りに「船」(「アフリカの女王」とはこの映画に登場する船の名前である)。
なぜその両映画が関係するかというと、『ホワイトハンター・ブラックハート』の主人公は、映画監督ジョン・ヒューストンをモデルにした人物で、劇中で制作されている映画が先の『アフリカの女王』なのである。
得しちゃった気分。
しかしね。名作映画がCDよりも安い¥1000で買えるなんて。正規の値札には¥3,990と記されているし(でも、確か『アフリカの女王』って¥500の廉価版も見かけたこともあるが)。
レーザーディスクが1枚¥7800とか安くても¥4800した頃が遠い過去のようだ……って、20年以上前のことだから実際遠い昔なんだけど。
ソフトが安く手に入るのは実に嬉しいのだが、なんだか少しばかり後ろめたい気にもなる。

さて、去年観た映画のこと。
不勉強なことに、これまでポール・マザースキー監督映画をほとんど観たことがなかったが、去年『ハリーとトント』を見返して、その会話の上手さに感動。続けて、『結婚しない女』『グリニッチ・ビレッジの青春』を観た。ああ、面白い。

『結婚しない女』 家内曰く「『セックス・アンド・ザ・シティ』ってほとんどこれだ!」。あいにく私は『セックス・アンド・ザ・シティ』は見たことはないが、なるほど、都会に暮らす中年女性たち4人の関係や、下ネタ含有度の高い赤裸々な会話シーンはその手のドラマの嚆矢なのかもしれない。
冒頭、亭主と娘が出かけた後で、ジル・クレイバーグがリビングで一人踊るシーンだけで「この映画は面白いに違いない」と思った。この映画の主題を予感させるたいへん象徴的な意味合いと同時に、滑稽さも合わせて表されている。映画冒頭、夫婦二人でジョギングするエピソードも、二人の関係を簡潔に切り取っており、上手い導入部を見ると映画への期待が膨らむものだ。
ランチの後で亭主に泣きながら浮気を告白された主人公が、街角で不意に吐き気を催すシーンを見たら「もう傑作!」。最後まで観たらやはり傑作だった。
が、DVDジャケット裏の惹句は別の意味で笑わせてくれる。
「自由に生きるか、抱かれるか。今、寂しさを乗り越えて、女が一人旅立っていく。」
……って、そりゃそうだろうけど(笑)、これじゃ観たくなくなるよ、私ゃ。
主人公の恋人役アラン・ベイツって、どこかで聞いた名前だと思ったらフィリップ・ド・ブロカ監督の傑作『まぼろしの市街戦』の主役だった。

『グリニッチ・ビレッジの青春』 青春映画にはとんと縁がないが、多分この映画には青春映画に必要な要素はすべて揃っているんじゃないかと思われる。親からの自立とか恋愛にまつわるいざこざだの貧乏だの挫折だの希望だのその他色々、若い時期について回るようなあれやこれやの事々。
俳優にして映画監督ポール・マザースキーの自伝的要素が強いそうで、エピソードにリアリティが貼り付いている感じがする。
主人公が通う演劇教室での芝居を巡るやりとりも興味深いし、若き日のクリストファー・ウォーケン、ジェフ・ゴールドブラムの顔や芝居もいいのだが、「ユダヤ人の母」を演じるシェリー・ウィンタースの芝居がとにかく強烈。主人公が見る悪夢のような幻想シーンは爆笑する。

『ハリーとトント』 笑えて泣ける大傑作。でも随分昔に(確かTVで)見たときはそんなに笑えなかったと思う。多分『結婚しない女』も若い時分に見てもあまり面白がれなかっただろう。
歳を食うのは楽しいものである。
DVDジャケット裏の惹句は、
「老人と猫の旅を通して人生の哀歓が情緒豊かに描出される名匠ポール・マザースキー監督の傑作ロード・ムービー」
確かにその通りだが、だからといって情緒に流されすぎることはなく上質のユーモアに裏打ちされている。とにかく会話の上手さは絶品。アメリカの一般の人がどういう会話をしているのか知らないが、この映画を観ていてつい思ってしまった。
「こんな上等な会話をしている人がそんなにいるのか?(笑)」
そんなわきゃないだろうけど。
老人性痴呆ににかかった、かつて憧れた女性とダンスするシーンが白眉だが、旅の途中で訪れる娘や息子、知り合う人物もそれぞれ個性的で印象に残る。家出娘やヒッチハイクで車に乗せてくれる娼婦、牢屋で一緒になるネイティブアメリカンなどなどユーモア溢れるエピソードを提供してくれる。実に素敵なロードムービーなのである。

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