■ベルリンは燃えているか -7- ■


●2月18日/7日目 (Part.2)●

 午後1時。昼食をとる時間もなく、今度は自分たちの泊まっているホテル“エクセルシオール”のロビーでインタビュー。現れた相手は長身で利発そう な大変な美男子。モデルでも出来そうな美形で、彫刻のように美しい。相手が男とはいえちょっと触ってみたくなる気持ちをこらえる。私がベルリンで見かけた カッコイイ男No.1は君に決定。
 「Film Forum」というマイナーな映画雑誌に記事を書くというその彼は、27歳の大学生だとかで、映像関係を専攻してるらしい。何でも映画「アキラ」を十数回見て大学の研究テーマにしたこともあるというのだが、こういう輩は面倒くさいんだ、大抵。

 話し始めると案の定であった。私へのインタビューというより、彼の「パーフェクトブルー」の評論というか感想を一方的に聞かされているようなもの だった。作品を気に入ってくれたのは確からしいしそれは嬉しいのだが、君のご高説を賜っているほど暇ではないのだ、私もマダムREXも。彼が5分喋って、 マダムREXが30秒で訳し、私が20秒で答えるといった塩梅だ。こいつ友達少なそうだな。私がベルリンで見かけた友達の少なそうな男No.1は君に決 定。

 あまりに一方的に彼の話を聞いていただけなので、どんな内容だかすっかり忘れてしまったが、日本のアニメはビジュアルは素晴らしいがストーリーの 面白味に欠ける、その点「パーフェクトブルー」はとにかく脚本というかストーリーが面白かったという。ああ、そうですか。ありがとう。

 「実写でも出来る内容だが、何故アニメーションで?」

 意外と普通なことを聞くのだな。マダムREXが眉毛を八の字にして言う。「またおんなじ質問ですわぁ。さっきと同じ答えでいいですよねぇ?」
 はいはい、いいですとも。「“絵”が私の言葉、ということで。」
 彼はいたく納得した様子で、「そういう言葉を聞きたかったんだ。」と来たもんだ。「だったら聞くなよ、兄ちゃん。」日本語が分からないのをいいことに、マダムREXが心底呆れた口調で文句を言う。

 「“パーフェクトブルー”は日本でも変わった位置づけの作品ではないのか? メインストリームでは無いという意味で。」

 確かにその通りだ。

 「この作品がインディペンデント映画だとすぐに分かった。」

 ほう、そりゃまた何で?

 「舞台挨拶に出てきた監督の姿形で。」

 どういう意味だそれは。背が高くて細身でおでこが広くてメガネをかけてひげを生やしてダークな服装をしている男はインディーズだというのか。

 「反骨精神が旺盛な感じがする。」

 はいはい、どうせ天の邪鬼ですよ。

 この若造は先程のライター二人(前回に登場)とは好対照の作品の解釈らしく、「パーフェクトブルー」のサスペンスやどんでん返しがいたくお気に入 りの様子。ラストの未麻のセリフも「鏡に向かって話しかけているのだから、あれも本当ではないはずだし成長したようには見えない。」と言う。そりゃあ、そ う取れなくもないだろうけど、ストーリーを完結させるためのセリフであると同時に、彼女の「成長」が完結したわけではない事も暗示したかったので、ああい う風にしてあるのだよ。セリフと画面が一緒じゃつまらんだろ。まぁ、どう見ようが何をいようが君の勝手だし、それは私の知ったことではない。

 またどういう文脈で出てきたのか良く覚えていないのだが、彼曰く「彼女はセックスシンボルだし、セックスシンボルにパーソナリティは不要だ。そこに成長の必要はないのでは?」

 「ほんまケツの青い兄ちゃんやわぁ」とほとほと呆れた様子のマダムREX。「さっきの人たちとはエライ違いですよねぇ、すいません監督、早めに切り上げましょうねぇ。」

 いえいえ、あなたのせいではありませんし、聞くだけ聞いてみましょうよ、若造の言い分も。それに不思議と不愉快な気はしない。こざかしいあんちゃんの話は得てして笑えるものだし、酒飲み話のネタくらいにはなるでしょう。

 「セックスシンボルという解釈は正しくない。例えそうだとしても彼女は仕事として演じているのだし、彼女自身の成長という問題でして……」
 なんか空しいな。

 一言答えるとまた彼の講釈を数分拝聴することになる。彼は実に楽しそうだ。ふと「青二才」という懐かしい単語が頭に浮かぶ。私がベルリンで見かけた青二才No.1は君に決定。

 「ストーリーや演出、シーンの描写も他のアニメに比べてリアルだし、背景は特にそうだ。しかしその割にはキャラクターがそれほどリアルには見えない。不統一ではないのか?」

 ああ、私もそう思うよ。

 「私一人、あるいは少数のスタッフだけで作るのならもっとマンガ的じゃないキャラクターデザインも可能かもしれないが、商業アニメーションは大勢 のスタッフで作らざるを得ないし、あまりにリアルなキャラでは描けない人が沢山でてくる。それなら背景をキャラに合わせるべきなのかもしれないが、背景は 背景で表現したいことがたくさんあるし、それにはああいった手法しか思いつかなった。実在感のある空間演出が私の生理だということもある。」
 つい真面目に答えてしまうのは、疲れていたのかもしれないな。

 「この作品でのカツヒロ・オオトモの仕事は?」
 「実写をとることに興味はないのか?」

 どっちも特に無い。

 1時間半にも渡って続いた取材は、「パーフェクトブルー」の最後の上映時間が迫ったことを理由に切り上げることになった。

 「時間が無くて残念だ。もっと聞きたいことがあったのに。」

 “喋りたいこと”の間違いだろ?

 ホテルに事務局が用意した迎えの車が来る。日本車TOYOTA LEXUSだ。気を利かせているのか知らないが、私はベンツに乗りたいのに。LEXUSの乗り心地はすこぶるよろしいが、帰るまでに一度は乗りたいのに、ベンツ。

arsenal

最後の上映が行われた“Arsenal”前。開演前から多くのお客さんが並んでくれたというのは嘘ではない。チケットを求める金髪ロン毛やカメラを向け返して来た若者の姿も。左の写真の車がお迎えのTOYOTA LEXUS。

 15:00からの上映を前に、映画館「Arsenal(アルセナール)」には既に人が並んでいる。ここに集まるお客さんは、「パーフェクトブ ルー」の3回の上映の中でも、特に「好き者」が集まるという小屋らしい。大雑把にいえば、1回目の「Kino 7」はプレス中心、2回目の「Delphi」はいわゆる普通の一般客、そしてこの「Arsenal」はマニア、ということだ。中には「チケットを売ってく れ」というメッセージを出してる若者や、“日本経済新聞”を読んでいる日本人もいる。客層はやはり20代の若者中心、女性も4割程か。平日の昼間だという のに、君たちは何者だ。
 この映画館がベルリン映画祭・フォーラム部門のオリジナルの劇場とのこと。180席ほどの小さめな小屋。一緒に上映を見る予定ではあったのだが、立ち見 も含めてギリギリの満席で、入れずに帰る人も出ていると言うことなので私はこれ幸いとお客さんに席を譲ることにして、妻と二人近くのカフェで遅い昼食と ビールにする。昨日の苦痛ちゃんを味合わなくて済むのが何より嬉しい。たまには逃げてよし。

 映画関係のポスターが沢山貼られた小さなカフェの店内。上映に溢れた人や、次の映画を待っているらしい若者でいっぱいである。何やら映画のことを話しているのであろうか、そんなムードはどこの国でも一緒だ。

 やっぱりどこで飲んでもビールがうまい。感心するのはどんな店でもビールを注ぐのが丁寧なことで、時間はややかかるがどのビールも細かくきれいな泡でふたがされている。ここで食べたカルボナーラもなかなかの味で、ドイツ料理に飽きていた舌には実に美味しい。

 しばらくすると、マダムREXが通訳をお願いしている福沢先生を伴ってやってくる。上映後には最後のおつとめのティーチインが待っているのだ。よしよし、ビールを、もういっぱい。

 と、今度はもう一人の日本映画担当の通訳の方が現れる。ケーニヒ・レグラさんという日本のスイス大使館につとめる女性だ。フランス語、日本語、ド イツ語、そしてスイスドイツ語が堪能とか。ドイツ語とスイスドイツ語というのは別な言葉と言えるほどの違いらしく、ドイツ語に堪能な福沢先生も、スイスド イツ語は分からないという。複数の言語を操る能力が羨ましいことこの上ない。ケーニヒさんは全くのボランティアでベルリン映画祭に参加しているとのこと。 見た目も中身も優しく、大変上品な女性である。

 連絡の行き違いか、通訳の方が二人も揃ってしまったが、ティーチインでは福沢先生にお願いすることになり、ケーニヒさんにもとりあえずお付き合い いただくことになった。カフェで待つ間しばし映画の話で盛り上がる。お二人とも映画祭の通訳をなさるくらいで、大変な映画好きらしい。

 ヨーロッパでは最近今村昌平監督の「うなぎ」や北野 武監督の「HANA-BI」の影響か、日本映画に対する興味が盛り上がっているという。各地 の映画祭で上映される日本映画も増え、他ならぬこのベルリン映画祭に参加している邦画も、アメリカ映画に次ぐ数の多さだとか。小津や黒沢や溝口だけでな く、現代の日本の監督が注目されるのは非常に喜ばしいし、実際の評判も高いという。私もその末席を汚しているというわけか。

 北欧の映画祭に招待された北野 武監督が、迎えに来た車に文句を付け「こんな汚ねぇ車に乗れるか!」と言ったとかいう話を聞いたときには、言動には注意せねばと心を改め、きれいなウェイトレスさんに丁寧に注文をする。ビールを、もういっぱいくださいな。

 お二人は「HANA-BI」に関しては対照的な感想で、福沢先生は非常に評価しており、方やケーニヒさんは北野監督の映画の中で一番あざとく説明 過多で嫌いだったという。私は見ていないので話に加われず残念な思いをしたが、何となくケーニヒさん側の意見が耳に馴染んだかもしれない。ビデオになった ら見てみようかな。

 これも私は見ておらず不勉強なことこの上ないのだが「うなぎ」に関しては、お二人とも同意見のようで、昔の今村昌平の映画を良くご存知のお二人に は物足りなかったということ。私もそれほど今村昌平監督の映画を沢山見ているわけではないのだが、確かに「赤い殺意」や「豚と軍艦」「にっぽん昆虫記」等 は非常に面白かったし、エネルギッシュな作品だった。あまりにリアルで生臭いほどの描写は笑いさえ誘う、と思った記憶がある。

 ベルリンの小さなカフェでビールをあおり、自作の上映終了を待ちながらスイス人の女性を交えて今村昌平の昔の映画の話題で盛り上がる貴重なひと時。ああ、国際映画祭。

 さてティーチイン。

 何と熱い会場だ。それに何だか、鼻を刺激する甘酸っぱい匂い。どなたか脇の下に悩みをお持ちの方がいるようだ。立ち見まで出た満席の中、81分も拙作を見てくれたお客さんに感謝。

 ここでの質問は、今までのティーチインや取材で聞かれた内容ばかりで、特筆するようなことはなかったと思う。来ている客層からしてディープな質問 になるかも、と少々身構えていたのだが、肩すかし。というより日本での取材も含めて相当な回数をこなしてきているのだ。驚くことなどそうあるものではな い。

 「タイトルの意味」「実写でも出来る内容」「よく分からなかった」等々。そんなことより私は3列目に座っていたえらく可愛い女の子が気になっていたりして。

 「パーフェクトブルーのようなマンガ的ではないアニメは日本で一般的か?」という、やはり前にも聞かれたような質問に、

 「いや、決して一般的ではない。鬼子のような作品で…」

 と答えて、しまったと思う。「鬼子」なんてドイツ語にあるとは思えない。が、福沢先生は何事もなく通訳してくれたようで、応えて客席からの質問。先生が耳打ちしてくれる。

 「さっき‘鬼子’というのを‘難しい子供’と訳したが、どういう風に難しく生まれたのか?、と聞いている。」

 ‘難しい子供’か。言い得て妙だな。

 「ロボットや美少女も登場せずSFでもないこの作品は、日本のアニメファンが喜びそうにもない内容だし、商売として成立しそうにもなかった。また 描写のスタイルは自分の生理に従ったのだが、一般的なアニメよりは客観的な捉え方だったようで、現場スタッフにもかなりの戸惑いがあった。」

 う〜ん、それにしても、なるほど‘難しい子供’かぁ、と先生の通訳に感心する。ベルリンに来てからは、訳しやすい言葉を探して話していたつもりだ が、それでもつい日本語独特の表現が出てしまうことはある。通訳を介して話す場合、言い回しによるニュアンスや冗談が通じにくいので発言内容そのものを大 切しなければならず、かなり気を使う。いつもより言葉を絞るというのは、自分の考えの再確認にもなるし、よい訓練だと思ったが。

 先生曰わく、通訳にも2種類の人がいるそうで、発言内容をストレートに伝えるタイプと、発言内容をその人なりにまとめて伝えるタイプ。好みが分かれるところらしいが、福沢先生は後者だという。日本語も拙い私には打ってつけですよ。

 数人の方からサインを求められ、大変よい気分で最後の上映を無事に終えることが出来た。見てくれた人たちに心より感謝を申し上げる。ありがとう。

 この期に及んで、また取材が入ったという。福沢先生の車でホテルに送ってもらい、後ほど夕食をご一緒するという約束を交わし我々はロビーへ。マダムREXと私、そして相手がスイスのライターらしいということで、ケーニヒさんにも同席してもらうことになった。

 現れた相手は女性二人。30前後とおぼしきおでこの広いメガネさん、と年齢不詳の派手な化粧と独自のファッションに身を包んだおばさま、であろうか。このおばさまが現れたときに私はぎょっとした。

 「げ、ピーター!?」

 なぜピーターがベルリンに!? 冗談ではない。そっくりだ。

 この二人、特に“ピーター”(アメリカ人らしい)は「パーフェクトブルー」を大変評価してくれていたようだ。発言の端々には女性の権利や人権に関 してうるさそうな雰囲気を漂わせていたが、「パーフェクトブルー」は女性の成長や社会での確立が描かれており、大変素晴らしいのだそうだ。もっとも、ここ での質問も今までのものと似たり寄ったりで、答えも同じだったと思う。

 一つだけ印象に残っているのは、「監督の孤独」について聞かれたことだろうか。

 前出の質問にあった‘鬼子’のことにも関連するのだが、「パーフェクトブルー」は企画、プロット、脚本の段階から理解されにくい内容だったし、制 作中においても原画スタッフからも何をすればよい作品なのかよく分からないと言われてはいた。それまでのアニメに比べればやはり“変なアニメ”であったの だろう。実際のところ初号を見た作監・濱洲氏が「面白かったです。こんな話だったんですね。」と言ったときには、少々肝をつぶした。「エ!? だって、コンテも全部読んで、全カット見たでしょう!?」

 制作中この作品の出来上がりやおもしろさ、というかどんな作品なのかを分かっていたのは、おそらく私と脚本の村井氏、そして演出の松尾氏あたりの ごく一部ではなかったろうか。プロデューサーにしろスポンサーにしろ、どういう魅力の作品なのか知らなかったように見受けられた。そういった制作現場で監 督はさぞ孤独であったろう、ピーターは言うのだ。

 「周りの理解を得られぬ中で、制作中の一年半の間、どうやって監督はそのテンションを維持するのか?」

 どうやって、って、そんなこと意識したこと無いんだけど。毎日楽しかったし。思案しているとそばにいた妻を引き合いに出される。

 「かわいい奥様のおかげでしょう?」

 そ、それは無論ある。が、照れる。制作期間中には特に世話をかけた。家での平穏は何よりの薬、感謝している。妻よ本当にありがとう。

 「作品が完成したときのことを思い描いて自分を励ましたこともある。出来上がればみんな分かるはずだ、と。そうは言っても、特に意識しなくても毎 日机の上の仕事は楽しいものだったし、テンションが下がることはなかったと思う。それに理解の種類はともかく作品を面白がってくれたスタッフや、拙い監督 を信用してくれる人も沢山いたと思う。私は人をうまく使うことは出来ないし、出来ることといえば率先して多くの絵を描くくらいのことで、まず自分がやる、 それが身上だ。」

 段々偉そうになってきているのが自分でもよく分かるよ、ホントに。この映画祭に参加させてもらって特に感じたのは、やはり「監督」が作品の代表者ということだった。言い訳もできない代わりに、少しは自信を持って喋らせてもらっても罰は当たるまい。
 最後に握手を交わし取材終了。ありがとうピーター。

 福沢先生の紹介で、日本料理店「ふか川」で夕食となる。裏通りに面した大きなガラス張りの外観は、およそ東洋風ではなくお洒落なレストランバーといった感じで、店内も白を基調にした大変清潔なイメージの店だ。メニューは“Sushi-Bar Tenpura-Bar Teppanyaki”という何でも有りなのだが、支配人は日本人で、味の方はすこぶるよろしかった。

 エビ新庄、つくね、刺身の盛り合わせ、なすのみそ田楽、天ぷらの盛り合わせ等々、ドイツの食事に飽きていた我々には何よりのご馳走であったし、日本で出されても美味しいと感じるレベルだったと思う。幸せ。

 メンバーは福沢先生、ケーニヒさん、マダムREX、そして妻と私の5人。ビールに始まり、支配人お勧めのイタリアワイン(白)が1本、2本と空い ていき座も盛り上がる。カフェでの話題はここでも続き、今村昌平監督の話題に始まり、古今東西名称巨匠の映画の話に花が咲く。何と楽しいひとときか。「ベ ルリン国際映画祭」に参加し多くの人と出会い話が出来た喜びをかみしめ、この機会を与えてくれた「パーフェクトブルー」に感謝し、その監督に敬服してみた りする。さすが、俺。

 途中よほど疲れていたのかマダムREXが、コックリコックリと船をこぎ始める。彼女はここで退場、先にホテルに帰る。本当にご苦労さまでした。支払いだけはよろしくね。

 残る4人は更にワインを空け、尚のことよい心持ちになって店を出る。酔い冷ましをかねて4人連れだってホテル方面に向かってふらふらと夜のベルリ ンを歩いていると、ふと、この街にまた来ることがあるのかなぁ、などとちょっとした感傷が酔った頭の片隅に浮かび、来るならやっぱり作品につれてきてもら うのが良いなぁ、と私の思い上がりも頂点に達する。

 ホテルに戻り明日の帰り支度をする。来るときは余裕だったはずのトランクも、無理に押し込まねばならぬ程に中身がいっぱいになっている。取りたて て人におみやげを買ったわけでもないと言うのに何がそんなに増えたのか? ベルリンの想い出と私の思い上がりか。いや、妻の荷物かな。
 よく考えたら私はこの地で何一つ買い物をしなかったな。まぁ良い、金では買えぬものが山ほど手に入ったのだから。



●2月19日/8日目●

 8時起床。最後の朝食を簡単に済ませ、荷物を確認してロビーでマダムREXと待ち合わせ。彼女はもう少しベルリンでの仕事が残っており、ドイツの 大手のバイヤーとの交渉もあるという。健闘を祈る。彼女の帰りを待つお子さんに用意しておいたメイドインジャーマンのパステルセットと、忘れちゃいけない 夕べのレストランの領収書も渡す。本当にお世話になりました。日本でまた会える日を楽しみにしています、と別れの挨拶を交わし、空港へ向かおうとしたのだ が迎えの車が来ない。エ?

 最後の最後で事務局の手違いか、用意すると言っていた車が待てど暮らせど来やしない。仕方がないのでマダムREXがタクシーを手配してくれて事なきを得る。ベルリンで初めて乗るベンツであった。本望。けど、このベンツ、ディーゼル? ま、いいやベンツなんだから。

 11:35発のルフトハンザでフランクフルトへ向かい、乗り換えて遙か日本へ。さよならベルリン、さよならドイツ、ヨーロッパ。
 また来る日まで。

 さて、我が家は無事かな。

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