妄想の十三「終わり無き最終回。」
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プロデューサーの回 馬庭が電波塔の上で「係長が帰ってきた!」というカットまでがAパートで、アイキャッチを挟んでBパートに入る。が、その前にAパートの原画マンの顔ぶれを担当シーン順(複数の場合は先の担当シーン)に記してみる。 また会話 4/24
(土) 結局13時過ぎまでかかってコンテ完成。しかし44秒ほど尺が足りない。ウソ〜ッ。編集で対応するしかあるまい。14時過ぎ、ひとまず眠る。17
時起床。伸ばす箇所の試案。20時オールラッシュ、編集開始。主に月子の回想シーンを尺伸ばし。一通り編集して、19秒オーバー。ホッと一安心。編集後の
通し見。いい感じと思う。 |
苦労の末に何とか完成したBパートコンテを振り返りながら駄文を連ねてみる。
アイキャッチ開け、Bパート開巻は現実に戻ってきた猪狩が呆然と立っているカットから始まる。猪狩の目の前には破壊された街並みがあり、背後には無数の マロミの山。このマロミたちは「記号の町」を形作っていたもので、猪狩がぶち壊した結果散乱している。しかし一体マロミたちはいかにして「記号の町」を形 作っていたのだろうか。そこには実は重大な秘密はない。全然ない。私も知らない。 いくら考えてもそんなことは分からないので、「たくさんのマロミたちが記号の町を作っていました」という実に記号的な描写にとどめている。というよりとどめる以外になかったのだが。 月子の前にレーダーマンが立ちはだかり、レーダーマンが月子に十年前の事実を突きつける。Aパートに続いて、またもや会話による対決である(笑) 最終回としては前半でも後半でもこうした動きの少ない会話による対決があるのは私の好むところではないのだが、どちらのシーンも退屈しないように変化に富んだ工夫は施せたと思っている。もちろんシナリオから工夫されていたものだ。 |
Aパートでの猪狩と美佐江の会話は回想のインサートと花火で、Bパートのレーダーマンによる真相解説では集結してくるストレスボンドがインサートされる
ことで、このシーンが盛り上げられたような気がする。後者は特に平坦になりがちな一方的な語りを、それに並行する形でストレスボンドを描くことで、それが
どうなるのか?という期待を持続させられたと思う。
ただ普通に考えるとAパートで猪狩を現実に帰らせるために手の込んだ真似をしたのだから、それを受けて「さぁ、猪狩の活躍!」となるのがパターンなのだ ろうが、猪狩は何もしない(笑)。戻ってきて終わり。猪狩の物語としては「現実に戻ってくる」というところで完結しているといってもいいし、ストレスボン ドは猪狩が活躍して何とかなるような相手ではない。 集結したストレスボンドはマロミの抵抗によって、両者が融合し、そして猪狩と月子を呑み込む。このあたりの素晴らしいエフェクト作画は完成画面で堪能いただきたい。これもまた井上俊之氏の素晴らしい原画によるシーンだ。 ここで荒れ狂うストレスボンドやマロミと融合したボンドは「天災」をイメージしていた。それはもう「どうしようもない」ような相手である。いいやつであ ろうがそうでなかろうが、相手が誰であれ等しく呑み込む。モブであれ主要な登場人物であれおかまいなし。いくら猪狩が全力で走ろうと容赦なく呑み込む。 世の中にはそういう「どうしようもない」ものはたくさんある。農家の人がどんなに一所懸命に丹精込めて育てた稲だって、台風が来てすべてを無に返すこと がある。一所懸命な努力が必ず結実するわけではないことや正しい行いが天に報いられるとは限らないことは、多くのニュースが伝えている。車に轢かれて死ん だ人が天の罰だったわけもなかろうし、轢いた人も轢きたくて轢いたわけでは無かろう。そういう場合も稀にあるだろうけど。保険金のためとか。 阪神大震災で被災した人が悪人だったわけがないし、テロの巻き添えになった人、アメリカ軍の誤爆で流れた血が天罰の結果であるわけがない。 「どうしようもない」「仕方のない」ことなどこの世には溢れている。しかしそれはそれとして受け止めて生きて行くしかないじゃないか。だって仕方ないんだから。 猪狩は理不尽にもボンドに呑み込まれる。呑み込まれたが死にはせず、後に荒廃した地上に姿を現す。地上には累々と死体が転がっている。ボンドの猛威に呑 まれて多くの人が死んだことになるが、猪狩や月子や川津がそうであるように生き残った人も沢山いるだろう、と私は解釈している。その生死を分けた理由が必 ずしも本人の意志の力であるとは思わない。言えるとしたらこういうことじゃないか。 「そりゃあ運が良かったんだ」 世の中はそういうもののような気がする。 持っていた運の良し悪しを嘆いてみても、これもまた「仕方のない」ことだと私は思うし、自分に与えられた運を元手にして自分なりに生きてみるしかないよ うに思える。エピローグで登場する猪狩にはそんな思いを込めている。足早に行き来する人々の中で、猪狩は警備員姿で立っている。
好きな言い方ではないが、猪狩は「自分の居場所」を見つけたという絵のつもりだ。猪狩の両側と手前には建物の影が落ちており、小さく日が当たった場所に猪
狩は立っている。この狭い場所がいわば猪狩の居場所というつもりであった。そこには警備員という仕事であるといったことも含まれるだろう。現在与えられた
条件の中で楽しく暮らし生き甲斐を持つことを見つけたのだろう。猪狩の服、警備員の衣装に付いた反射板の光は、猪狩のささやかな勲章のつもりであった。 |
マロミと融合して荒れ狂うボンド。井上俊之氏の原画による完成映像を堪能いただきたい。 |
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